※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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初任務

ついに準備は整った。

刀を手にし、斗和は感慨深くまじまじと見ては触りを繰り返す。

すると、鴉の令和がどこからか飛んできた。

 

「南ニアル村外レノ古井戸へ向カエ!」

 

「!?」

 

斗和は、今まで喋らなかった令和が初めて声を出したことに驚く。

しばし唖然としていると、足を突かれた。

 

「早クシロ!」

 

「痛っ!」

 

斗和は、わかったわかったと言いながら慌てて部屋に入り、野良着隊服に着替える。

特殊形状の日輪刀を背中に背負うと、家を出て南へ走った。

刀はその形状が故に鞘が無いので、頑丈な麻袋を2枚重ねその中に入れている。

 

(まずは初任務を成功させなくちゃ!)

 

耀哉に単独任務願の文を出してから、返事は無かった。

怒ったのかと思ったが、本来ならば我儘など言える立場ではない。

与えられた任務は、どんなものでも責任を持ち遂行するべきなのだ。

 

鴉の令和はかなり先を飛んでいる。

斗和は、それにしても…と

目を細める。

喋ることができたなら、最初に挨拶した時になぜ無言だったのかと訝しんだ。

何日も喋る素振りを見せないのだ。

本当は喋ることができないのではと思っていた。

しかし喋らない鎹鴉は意味がないわけで、そんなはずはないのだが。

 

(変な鴉…)

 

 

 

────────

───────

令和の案内で相当な距離を走った先に、目的地の古井戸があった。

 

既に陽は暮れ薄暗い。

村外れと言うが、周りには壊れた家が点在している。

かつてはここにも人が暮らしていたと思われる。

 

斗和は問題の古井戸らしき場所に近付くと、じっと様子を伺う。

 

(この中に鬼がいるのかな?)

 

井戸から出てくるもので、連想されるものがある。

斗和の記憶にあるのは、恐怖映画だった。

すると一瞬、映画館のざわつきが斗和の脳内に蘇り頭痛がする。

 

(ん……?)

 

気を取り直し、斗和は麻袋から一緒に持ってきた藁を一掴み取る。

懐から燐寸(マッチ)を出し、火を点け井戸に投げ離れた。

 

するとズルズルと妙な音がし、井戸から身体の長い蛇のような鬼が出てきた。

とてつもない腐敗臭を放ち、斗和は思わず鼻を摘み顔を顰める。

 

(くっさーい!こいつの体、腐ってるよね!)

 

「忌々しい鬼狩りめが。何でも腐りかけが一番美味い。お前の体も腐らせてから喰ってやる…!」

 

そう言い襲いかかる臭い鬼から、まずは逃げる。

 

(腐らせてから喰う…?空腹の鬼がそこまで待てるわけがない。血鬼術で腐らせるのかな?)

 

斗和は考えるも、とにかく一滴たりとも鬼の纏う液体に触れたくなかった。

しかし頸を斬るには一定の距離まで近付かなくてはならない。

 

こんな時に、少し離れたところから撃てる技があればいいのだろう。

だが生憎今の斗和にはそんな技は無い。

土の呼吸は参ノ型までしかあみ出しておらず、その中に中距離攻撃は無かった。

 

「逃げ回るだけしかできない哀れな鬼狩りよ…腐れ腐れ腐れてしまえ!」

 

とたんむわっと腐臭が一際濃くなり、斗和はあれこれ考えていたせいで反応が遅れてしまう。

一瞬で斗和の背後に廻った鬼が、その体を巻き付けようとした。

 

「キャーッ!!」

 

斗和は叫び、巻き付こうとした鬼を日輪刀で斬り裂くと、素速く脇に跳び上がる。

 

 

─土の呼吸 壱ノ型 土龍爪(どりゅうそう)

 

 

放った技は鬼の肩口から胴体を斬ったが、頸は斬れていない。

 

(再生する前に早くしなきゃ!)

 

今度は左側から同じ技を頸めがけて放つと、ついに頸と胴体が離れた。

ベチャッと地面に落ちる首が気持ち悪く、斗和は顔を逸らす。

間もなくボロボロと崩れ消えていく鬼を見て、安堵の息が漏れた。

 

だが、何やら頭に違和感を覚えた斗和は手をかざす。

すると手拭いが濡れており、触れた手がとんでもなく臭い。

 

「いやーっ!!」

 

思わず叫び、何事だと令和が飛んで来る。

 

「臭いー!体液が付いた!血鬼術だったら体が腐るー!どうしようどうしよう!?早く頭を洗わないと!」

 

斗和は半泣きで一目散に駆け出し、令和の案内を頼りに近くの川に最速で走った。

 

 

辿り着くと、これでもかという程に頭と足と手を洗う。

冷静に考えれば、洗ったくらいで血鬼術が消えるわけがない。

だが今の斗和は動揺が酷く、平常心ではなかった。

 

 

 

 

 

体が腐ったらどうしようかと思っていた斗和だったが、家に着くまでの間も着いてからも腐る気配はなかった。

 

結局、単に自らの身体が腐っており、腐った人間を食べるのが好きな鬼だったと結論づけた。

 

こうして、斗和の臭いだらけの初任務は無事に終わった。

しばらくの間、斗和は令和に頭の匂いを確認してもらうのだった。

 

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