※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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風柱の弟

それから七日間、斗和は任務と鍛錬とを繰り返す日々だった。

 

本格的に近付くその日の為、一刻たりとも無駄にできない。

ひたすらに鍛え極限まで強くならねばと、斗和はそれだけに固執していた。

 

そして体を動かしていれば、余計なことは考えずにすむ。

今の斗和には丁度良かったのだ。

 

 

 

 

────────

───────

そして七日後。

斗和は警備区域の見廻りを終え、藤襲山へ走った。

 

今回最終選別に赴いた目的は、炭治郎たちを実際に確認することである。

そして斗和には、どうしても接触したい人物がいた。

 

不死川玄弥だ。

 

玄弥のことは気掛かりだった。

この最終選別に来るまでの経緯を知りたかった。

玄弥の過去は当然ながら知っている。

この先、斗和が何もせずとも、玄弥は決戦まで生き抜く。

 

だが、それでもどうにか関われないか、力になれないかと考えていた。

選別後はどこで暮らし、任務をこなしていたのか。

どのような経緯で、岩柱・悲鳴嶼行冥の弟子になったのか。

 

知りたいことはたくさんある。

 

 

 

 

解散した後だと困るので、見廻りも早く切り上げたせいかまたもや誰もいなかった。

と言うよりまだ夜が明けていない。

斗和は、見つからないよう木の陰に隠れ時を待った。

腹が減ったので、携帯している握り飯を一つ食べた。

 

 

 

(うーん…早すぎたかな?)

 

斗和はやはり早すぎたかと思っていると、一人転げるように集合場所に戻って来た。

伊之助である。

すると周りを見た後、さっさといなくなってしまう。

 

説明も聞いていないのに帰っていいのか。

引き止めた方がいいのかと考える。

そこで斗和は、あることを思い出した。

 

伊之助が隊士になった経緯は特殊だった。

山で暮らしていると隊士が来て、刀を奪いそこから伊之助の道は拓けた。

 

そして結局、伊之助は戻らなかった。

鴉や隊服はいつ支給されたのか、不思議である。

そのうち朝日も顔を覗かせ、輝利哉とかなたも現れた。

すると善逸、玄弥、炭治郎、カナヲの四人が戻って来た。

 

カナヲは着物も大して汚れておらず、一週間も山にいたとは思えない程に小綺麗だ。

斗和はそれを見て自らの過去を思い出す。

 

転んだり鬼の爪で裂かれたりで、三日後には野良着がボロ雑巾のようになった。

同じ女でこうも違うのかと、苦笑いするしかない。

 

(あ、あー…やっぱり殴ったか…)

 

そしてやはり、玄弥はかなたを殴った。

この喧嘩っ早いのは、兄譲りなのかもしれない。

実弥も杏寿郎に殴りかかっていた。

だが、本来の不死川兄弟は心優しいというのも斗和は知っている。

 

 

 

解散となるのを見届けた斗和は、帰って行く玄弥の後を追う。

 

「あの!そこのあなた!」

 

斗和が呼び止めると、玄弥は振り返り鋭く睨む。

面を着けているせいで、不審に思っている可能性がある。

実際玄弥は当然の反応をした。

 

「誰だよてめーは!ふざけた面着けやがって、何か用か!?」

 

玄弥は大分苛立っており、右腕を押さえていた。

おそらく先程、炭治郎に腕を折られたのだ。

 

「その腕、折れているようです。応急処置しかできませんが、腕を見せて貰えますか?それから、お腹が減っていたらこのお握りを食べて下さい」

 

斗和は握り飯の包みを差し出すが、玄弥は受け取ろうとしない。

怪訝な顔を色濃くし、益々睨みつけてきた。

 

「私は鬼殺隊の元柱です。理由があって一般隊士に戻りましたが、柱の方々とは面識があります。…あなたに似ている柱を知っているんです。もしかしたら親類かと思い声を掛けました」

 

斗和がそう言うと、玄弥はみるみる表情が変化する。

 

「元柱?…なら兄ちゃん、不死川実弥を知ってるか!?」

 

「…はい、風柱様ですね。存じております。もしかして弟様でしょうか?よく似ていらっしゃいます。…少し座りましょうか」

 

玄弥は斗和の言葉に素直に従った。

道から外れ、木の下に並んで座る。

斗和は手頃な太い枝を見つけ、玄弥の右腕に添えて手拭いで縛り固定した。

あくまでも応急処置だ。

 

その後水筒の水で濡らした手拭いで左手を拭いてやり、握り飯の包みを解き玄弥の左手に一つ乗せる。

玄弥は意外にも嫌がらず、黙っていた。

 

「このお握りは、あなたのお兄様が美味しいと言って下さったものです。食べて下さい」

 

「………」

 

玄弥は、握り飯を恐る恐る口に入れ咀嚼する。

すると勢いよく食べ始めた。

斗和が水筒を差し出せば受け取り、喉を鳴らして飲んだ。

 

斗和はそれを見てそっと微笑む。

 

「…うまかった。…ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

玄弥は恥ずかしいのか、小さな声で礼を言う。

兄の実弥もだが、不死川兄弟は常識人だ。

思春期の照れや恥ずかしさで分かり難いが、きちんと礼は言うし元来優しい。

母親に似たのだと斗和は思った。

 

「なあ、兄ちゃんに会うにはどうしたらいい?」

 

玄弥は、ぽつりと口に出した。

 

(やはり聞いてくるか)

 

この質問は斗和が予想していたことだ。

玄弥が鬼殺隊に入った理由を考えれば、すぐに分かる。

 

「隊士はおいそれと柱には会えません。柱は多忙を極めていますから、柱同士でさえたまにある会議でしか会わないんです」

 

「じゃあ柱になれば会えるのか!?」

 

玄弥は身を乗り出し、興奮しているのが見て取れる。

 

「まあそうですね。ですが柱になるには階級が一番上の甲であり、鬼を五十体以上倒すか十二鬼月を倒さなくてはなりません。…道は険しいですよ?」

 

「それでも俺は、兄ちゃんに会わなきゃならない。どうしても会って…!」

 

その表情と声から、玄弥の必死さが伝わってきた。

玄弥は呼吸が使えない。

それでも早く柱になり、実弥と会って話しをしたい…その一心で鬼喰いをしてしまう。

玄弥のこの能力により、上弦ノ肆・半天狗を倒すことができる。

そして無限城で上弦ノ壱を倒すことができる。

 

それは斗和も理解している。

 

(だけど…!)

 

玄弥には鬼殺隊を辞め、平和に暮らして欲しいのだ。

それは実弥が願っていることだ。

斗和も同じくそう思っており、和解して欲しかった。

 

だがそれは玄弥が納得しない。

 

兄・実弥に幸せになって貰いたい気持ちが強いから、ここにいるのだ。

お互いを想っているからこそなのは、痛い程分かっていた。

 

どうするのが最善なのか、斗和はずっと考えた。

だが答えは出なかった。

 

「何か事情がおありのようですね…。私は風柱様にはたくさんお世話になりました。もう柱ではないから会うこともないですが、あなたは必ず会って目的を果たして下さいね。…お名前を聞いてもいいですか?私は蓬萊斗和です」

 

「…不死川玄弥。なあ、元柱なら強いんだろ?俺に教えてくれよ!早く強くなって柱になりたいんだ!」

 

玄弥の必死な表情が、数年前に継子志願に来た佳成とだぶる。

理由は違えど、強くなりたいと教えを請う姿は同じだ。

 

斗和は、手を差し伸べたいというのが本音だった。

しかし、それはできなかった。

 

「それはできません、申し訳ございません」

 

そう告げ、斗和は去った。

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