※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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21歳②【無限列車】
いざ列車へ


野良着隊服に着替え、頭に手拭いを巻く。

 

刀は柄まで隠れるように麻袋に入れ、斗和は家を出た。

 

 

耀哉から文の返事を貰い、無限列車に乗る日時が判明した。

ついにその日が来たのだ。

 

 

 

 

◇

町へ行き目的の駅に着けば、懐かしさが込み上げる。

今は亡き継子の佳成と、夫婦を装い任務に就いた時にも列車を使った。

着物で化粧をした姿で、実弥に駅を尋ねたこともあった。

その時と同じ場所、同じ駅だ。

脳内に記憶が鮮明に蘇る。

 

斗和はまず全集中の呼吸を意識的に止め、通常の呼吸にした。

列車に寄生する鬼・魘夢に、鬼殺隊だと気付かれないようにである。

 

斗和は切符を買い、前方に【無限】と書いた汽車を確認し乗り込む。

 

前方三両のどれかにいれば、杏寿郎は来ないはずだ。

斗和は万が一に備え、ひょっとこの面も持参していた。

いざとなればそれを着ければいいと思った。

 

乗り込み、乗客に杏寿郎がいないのを確認する。

席に着かず、左右を見ながら炭治郎達が来るか確認していると、ピピーッという笛の音がし騒がしくなった。

外を見れば、猪頭と黄色い頭と耳飾りの少年達が後方に走って行く。

 

(あ!炭治郎君たちだ!じゃあ煉獄さんも既に乗っているはず)

 

 

 

 

そうこうするうちに列車は動き出した。

 

斗和は二両目前端の窓際、周りに誰もいない席に着いた。

まずは腹拵えをしようと、持参した握り飯を食べる。

今頃杏寿郎も、大量の駅弁を食べているはずだ。

 

車掌はどちらから来るのだろうと、緊張にそわそわしながら待つ。

車掌が切符を切っていけば、皆が眠らされてしまう。

斗和は、眠ったらどうなるのだろうと考えた。

 

魘夢が見せるのは、その者が幸せだと思う夢だ。

自分は一体どんな夢を見るのかと思った。

この世界で記憶を戻した斗和がこれまで見た夢は、ここでの出来事ではない。

 

おそらく前世の記憶である。

幾度もみたぼんやりとした記憶。

それは幸せな夢なのだろうかと考えた。

 

必ず気分が悪くなり、頭痛を起こし目覚める。 

いつも同じ場面、映画館の独特の証明。

白い紙、斗和を見据える嫌な目。

どう考えても、いい記憶ではないのは確かだ。

 

だとしたら、魘夢が見せる斗和にとって幸せな夢とは何なのか。

 

そこでふと脳裏をよぎるある人物の顔。

 

(…………)

 

この世界で一度たりとも見なかった、ここでの夢を見られるのだろうか。

まだ見ぬ幸せな夢を見ることができるのかもしれない。

斗和は、まやかしの幸せな夢でもみたいと一瞬思った。

すぐに一蹴するも、片隅には消えずに残る。

 

問題は、魘夢が斗和の存在に気付き、精神の核を破壊しに来るかどうかだ。 

もし夢の最中に破壊されたら死を意味する。

斗和は一人離れた車両で、完全に全集中の呼吸を止めている状態だ。

 

おそらく気付かれないと踏んでいる。

今のところ、無限列車の出来事に大きく介入していないからだ。

歪みや反動が生じなければ、斗和が知っている通りに進むはずなのだ。

 

それは過去の自身の行動で分かっている。

斗和は、物語内で描写されていた人物の会話や行動に関与したことはない。

その場にいても、何もせず黙っていた。

 

それにより、これまでは物語と全く同じ流れになっていた。

 

(大丈夫…眠らされてるだけなら問題ない。列車の横転時に必ず目覚める…)

 

斗和は幾度も考えた結果、魘夢が倒されるまでは一切何もしないことにしたのだった。

しばし考えていると、後ろの車両の扉が開き車掌がやって来た。

斗和は一気に緊張が増し、切符を取り出す手が震える。

一人一人切符を切っていく音がする。

 

「切符を拝見致します…」

 

「お願いします」

 

 

パチン…

 

 

斗和の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

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