※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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夢の現実─斗和─

※斗和視点

 

 

 

 

会社のデスク、パソコンの音。

気付けば夕暮れになっていて、誰かが私に声を掛ける。

 

『斗和、もう就業時間は終わったんだから帰るぞ。これから式の打ち合わせがあるの、忘れたのか?』

 

振り返ると、スーツを着た眼鏡の男性が呆れた表情で立っていた。

 

ドクドクドク…!

 

心臓が激しく動き始める。

 

『忘れてないよ。これだけやればキリがいいの。だから少し待って…あ!』

 

男性は私の手を掴み、無理やり椅子から立たせた。

掴まれた腕が痛い。

 

『いいか、お前が残業なんてすれば同じ部署の俺の立場がないんだよ。俺はお前の先輩で婚約者なんだぞ?少しは俺を立てろ!』

 

鋭く睨まれ、萎縮した。

 

『…はい…ごめんなさい』

 

私は怖くて謝った。

高圧的な態度のその人は、誰かが入って来たのを見て掴んだ手を緩めた。

 

『あれー?二人して今帰り?あー蓬萊さんがもうすぐ結婚するなんて、俺まだ信じられないよ。いいなあ先輩!奥さんになる人が美人でスタイル良くて仕事もできるんだよ?羨ましいったら!』

 

人懐こそうな男性は、私に笑顔を向ける。

 

『どんなに羨ましがってもお前にはやらないからな。斗和は俺の奥さんになるんだから』

 

『分かってますよー!だけど蓬萊さんは上からすごく評価されてるし、気に入られてるから部長達泣いてますよ。俺トイレで聞きましたもん。蓬萊さんが辞めちゃうの、嘆いてましたよ』

 

私は作り笑いをしながら、その男性がいなくなるのを待つ。

先程からひしひしと感じる不穏な空気に、震えまで起き始める。

眼鏡の男性は急ぐからと私の手を引き、会社を出た。

 

掴んだ手を決して離そうとしない。

しばらく行き路地裏に入ると、男性は乱暴に私の手を解いた。

 

『あんな奴に笑いかけるな!俺が隣にいて他の男に笑いかけるなんて、とんでもない女だな!?』

 

『ごめんなさい、そんなつもりじゃ…』

 

『口答えするな!斗和、お前は黙って俺に従えばいいんだよ!』

 

男性が私に向ける目は、酷く冷たくて鋭い。

なぜ私は言いなりになっているのか、分からなかった。

 

───────

 

場面が変わった。

目の前には、私を組み敷いている男性の顔があった。

情事の最中だ。

私は苦痛で顔を逸らし耐えた。

嫌、嫌と内心で訴えても、当然聞き入れて貰えるわけがない。

口に出したらどうなるのか、どうなったのか"私"は知っていた。

 

つらくて悲しくて、涙が流れた。

 

 

 

─────────

また場面が変わる。

 

私は一人、静かな部屋で外を眺めている。

窓ガラスに写る私はとても悲しそうだ。

そろそろ買い物にと家を出て、なんとなく本屋に寄った。

普段は漫画は読まないのに、吸い寄せられるようにある場所へ向かう。

 

鬼を滅する刃

 

純粋にその響きに惹かれた。

目に見えるものだけじゃなく、人の内部に巣喰うものも鬼だと思っていた。

貼り付けた笑顔で、言葉巧みに恐ろしいことを言う人間はたくさんいる。

そっちの方がよっぽど鬼だと思う。

 

読みたいな…

 

手に取った一冊、同時にじわじわと思い出していく記憶。

 

私には家族がいなかった。

施設で育ち、何でも一人でやってきた。

 

あの時の私は二十八歳で、会社の先輩の強い押しで交際し結婚した。

怖いと思っていた人だったから、最初は断った。

だけど彼はしつこくて、諦めなかった。

全てはあの人の見栄だった。

そこに私の意思はなかった。

 

それでも最初は、家族ができるんだと期待していた。

 

だけど彼は異常に束縛が酷く、私は結婚後会社を辞め知り合い全て連絡先を消された。

毎日怯え逃げ出したい日々の中、あの物語に出会った。

 

一年経つ頃。

大人気となり煉獄さんの勇姿を映画でやると知って、必ず観に行こうと思った。

 

その頃彼は私を疎ましく思うようになり、まるで存在しないかのように扱われた。

何をしても否定され、認めてくれなかった。

それでも私には唯一の家族だった。

だけど…

 

『もうお前には飽きた、他の女がいい。うんざりするんだよ。別れて欲しい。早く出て行け』

 

そう言われ、あっさり捨てられた。

泣き崩れる私に、彼は離婚届を無理やり書かせた。

それでも私は、最後にたった一つでも思い出を作りたくてあの映画に誘った。

 

だけど拒否され一人で行ったら…あの人と可愛らしい女が楽しそうに笑っていた。

映画を観ずに泣いて帰宅し、本を腕に抱いたら胸がものすごく苦しくなって…

 

気付いたらこの世界にいた。

 

 

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