ドゴッ!!!
ガタガタガタガタ…
「………!!っ…!?ここは!?」
斗和は突然の衝撃で目覚めた。
眠っていた他の乗客も一斉に目覚め、あちこちから悲鳴が聞こえる。
車内は魘夢の気持ちの悪い肉に包まれている。
斗和は、止めていた全集中の呼吸を復活させる。
「皆さん!どこでもいいから掴まって!衝撃が来ます!」
斗和は即座に指示を出し、自らも扉に掴まる。
その直後だった。
炎が車両から放たれ、列車が横転する。
杏寿郎がいくつも技を出し、被害を最小に留めようとしているのが見えた。
斗和は横転する前に車両から抜け出し、近くの林に飛び降りた。
素早く木の陰に隠れ、麻袋から日輪刀を取り出す。
ものすごい轟音と爆音がし、脱線した車両が目の前に広がる。
(煉獄さんはまだ後方にいるの?炭治郎君はどこ!?)
斗和は林を抜け、横転した車両の陰に隠れながら、炭治郎を探す。
(いた!)
斗和が見つけると同時、仰向けで苦しむ炭治郎の前に一瞬で杏寿郎が現れた。
無傷であることに、ひとまずほっとする。
炭治郎に呼吸で血管を止める方法を教えているのを見て、ここまでは同じだと頷く。
(時間がない、猗窩座が来る!)
そしてすぐに、伊之助を探した。
伊之助は軽傷なので、唯一自由に動ける人物だ。
どうなるか分からない戦いだが、念の為に言伝をしておこうと考えた。
(伊之助君…どこに…いた!)
急いで辺りを探していると、列車から乗客を引っ張り出す伊之助の姿があった。
斗和は素速く駆け寄り声を掛ける。
「そこの猪被った人!」
「ああっ!?なんだあお前…」
いきなり現れた斗和に、伊之助は誰だ?と首を傾げる。
「新たな敵が来ました!」
「何いっどこだあ!?」
「匂いからするに相当強い。朝日が昇るまでが勝負です。あの鬼はいつか必ず倒します!だから今は…っ!」
斗和は空気が変わったのを察知し、急いで炭治郎たちの近くまで戻る。
二人の姿を見つけた瞬間だ。
ドオン!!
「!」
(ついに来た…!)
斗和が列車の陰から覗いていると、噴煙の中から猗窩座の姿が現れた。
そこから思い出される描写に、斗和は神経を集中させる。
すると猗窩座は、腹を刺され起き上がれない炭治郎に攻撃をする。
─炎の呼吸 弍ノ型 昇り炎天
すかさず杏寿郎が割って入り、猗窩座の左腕を斬り裂いた。
即座に腕が元通りになるのを見て、斗和は動悸がし始める。
(早い!元通りになるのが思った以上に…)
「いい刀だ」
傷を舐める猗窩座は嬉しそうだ。
「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」
杏寿郎は率直な疑問を発する。
そこから二人は、斗和が知っている通りに会話し始めた。
斗和はそれを見ながら必死で考える。
どこで出ていくべきなのか、杏寿郎を守るにはどう動くべきなのか。
勿論これら一連の動きは、幾度となく脳内で考えた。
記憶を辿り、いつどう攻撃するか、どの技を繰り出すか。
朝日が昇るまでいかに猗窩座を退けられるか。
猗窩座の頸を斬れても、杏寿郎が死んでは無意味だ。
猗窩座はいずれ、無限城で義勇と炭治郎が倒す。
ここで最優先させるべきは、猗窩座を倒すのではなく"杏寿郎を死なせない"ことだ。
斗和は背中の日輪刀に手を掛けた。
「君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも、鬼にならない」
猗窩座は目を細めた。
「そうか」
空気が変化し、猗窩座は構える。
瞬時に繰り広げられる戦い、斗和は列車の陰から飛び出た。