斗和は勢いよく飛び上がり、日輪刀をぶつかり合う二人の技の間に振り下ろした。
─土の呼吸 㭭ノ型
ズバンッ!という音と共に、土の粒子で形成された大きな壁が二人の間に出来上がる。
これは土の壁を作り、相手の攻撃を防ぐ技だ。
二人の間に放ったが、炎虎の威力が先程より弱く、乱式の威力は同じだ。
乱式は土嚢城壁により威力は削がれるも、それを破り杏寿郎を攻撃する。
「煉獄さん下がって!!」
斗和が叫ぶと同時に杏寿郎は後方に下がるも、攻撃はその体に入る。
土煙が消えると、杏寿郎はぐっと前屈みになる。
「煉獄さん!まさか肋が折れたんじゃ…」
「大丈夫だ!俺は何ともない!君も無事で良かった!」
杏寿郎は頷くも、威力の削がれた猗窩座の拳をいくつも受けた。
あちこち打撲、そして肋にひびが入っていた。
斗和は杏寿郎の左腕が真っ赤なのを見てまさかと思った。
(左肩が赤い、同じだ…)
脳裏には、杏寿郎が乱式を受け満身創痍になった姿が浮かぶ。
まだ肋と内臓は無事だが、確実に同じ流れになっている。
(次は奥義を撃つ、そしたら…だめだ!それだけは!)
「またお前か…!忌々しい女の鬼狩り。邪魔だ」
猗窩座の怒りが頂点に達する。
女に戦いの調子を狂わせられるなど、あり得ないことだった。
女が口から血を流す姿さえ、視界に入れたくない。
斗和は、先程投げ飛ばされたことで確信した。
猗窩座は女を殺せないことを。
現に腕や足で斗和を投げ飛ばさず、構えていた刀を掴み間接的に投げ飛ばした。
体に触れることも避けたのは、衝撃で傷つけ又は殺す可能性があるからだ。
つまり、斗和がどんなに攻撃しようと、猗窩座は斗和に攻撃はできない。
(二度も投げ飛ばされはしない!)
斗和は猗窩座へと突進する。
─土の呼吸 壱ノ型
土の粒子が龍を型取るように見え、その爪が猗窩座の肩から腕を斬り裂く。
双牙は応用技の二段構えだ。
斗和は間髪入れず、振り下ろした刀を振り上げる。
猗窩座の頸目掛けたそれは、寸前に迫る。
バシッ!!
(腕を盾に!)
猗窩座は咄嗟に腕を盾にし、威力を削ぎ頸を僅かに斬らせるに留まらせた。
血がブシュッと吹き出た。
斗和は、ならばと刀を引き寄せ、曲がった刃先に猗窩座の頸を引っ掛けようとした。
だが既に再生した両腕がそれを止める。
猗窩座の手は斗和の刀を掴んだ。
「くっ…!」
「女だというのに物凄い力だ」
そこへ杏寿郎の刀が真横に走る。
「!?」
猗窩座は斗和の刀を離し体を縮め、杏寿郎に蹴りを喰らわせた。
「ぐっ!」
杏寿郎は受け身を取るも、脱線した列車まで飛ばされた。
「煉獄さん!」
(だめだ、猗窩座は隙がない!こいつを引き付けても、煉獄さんは私に技が当たると思って撃てないんだ…)
斗和は焦る。
猗窩座は女には攻撃しなくとも、杏寿郎には容赦なく攻撃する。
「女、いい加減消えろ。何度言わせる?邪魔だ!」
猗窩座はいきり立ち、斗和を睨む。
「煉獄杏寿郎を殺したいなら、先に私を殺してからにすればいい。邪魔だと言う割に、お前は私を攻撃しないんだな?」
斗和は挑発するように鼻で笑う。
ビキッビキッと猗窩座の顔や体に筋が入る。
斗和は後方から走ってきた杏寿郎に声を掛けた。
「煉獄さん!私がこいつを引き付けます!だから、炎の奥義で私ごと頸を斬って下さい!」
「!」
斗和は日輪刀を真横にした。
地面に着いた両足から、斗和を囲うように土の粒子が湧き上がる。
同時に、辺りは地鳴りと地響きがし始める。
猗窩座は咄嗟に後方へ下がり、構えた。
だが術式展開ができない。
体が斗和を、女に攻撃するのを拒否している。
「地面が!」
「すげぇ!地面が揺れてるぜ!」
それは炭治郎と伊之助がいる場所まで伝わる。
─土の呼吸 拾ノ型 奥義
斗和は驚異的な速さで猗窩座へと迫り、無尽蔵に刀を振り下ろす。
(速い!この女!)
避けようとするもどんどん斬り刻まれ、猗窩座はとにかく後方に後方にと下がるしかない。
斗和は無我夢中で刀を振り下ろしており、自らの速さが目で追えない程だった。
そのため、猗窩座の頸一点を狙うことができない。
猗窩座は絶対に攻撃して来ないので、この間に杏寿郎が奥義で抉る以外、倒す方法がない。
斗和の精一杯の時間稼ぎであった。
(煉獄さん早く!早く奥義を…!)
斗和は願いながらひたすらに刀を振るい、猗窩座を追い詰める。
斗和の周囲は絶えず地響きがしている。
杏寿郎も炭治郎も伊之助もその場から動くことができず、繰り広げられる二人の戦いを見ているしかできない。
炭治郎と伊之助は目で追えず、何が起きているのか分からない。
杏寿郎は刀を構えるも、奥義が撃てないでいた。
撃てば確実に根こそぎ抉り斬る最強の技・煉獄。
だが、撃てば斗和も死ぬ。
それを分かっていて撃てはしない。
杏寿郎は少しずつ遠ざかる二人の姿を追った。