※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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杏寿郎の目覚め

その日の未明。

蝶屋敷を訪れた人物に、しのぶは声を掛けた。

 

杏寿郎と斗和、二人の部屋の前に静かに立つ男。

【殺】の字を背負う風柱・不死川実弥だ。

 

「…不死川さん?任務お疲れ様です。私の分までいろいろとご迷惑おかけしています。すみません」

 

二人が運ばれて以来、しのぶを含む三人の警備や任務は他の柱で手分けして行っている。

耀哉直々の命である。

しのぶは二人が快復するまでは、蝶屋敷からの外出もしないよう言われていた。

迅速な処置をする為だ。

 

他の柱に文は出したが、直接礼を言うのは実弥が初めてだった。

 

何も答えない実弥に、相変わらずだなと思い先を続ける。

 

「申し訳ないのですが、煉獄さんと蓬萊さんは面会謝絶です。目覚めるまで会えませんのでお帰り下さい」

 

「…状態は?」

 

振り返らずに聞く声は、普段の実弥の声とは違和感があった。

まるで本部で挨拶を述べる時のようである。

喧嘩っ早い姿がしのぶの脳内にあるせいか、今日は随分と落ち着いている印象だ。

 

「煉獄さんは重傷で予断を許さない状態です。左目は潰れ、左右の肋骨はすべてにひびが入り、左腕と右足は酷い打撲。他にも肩口やあちこちに深い裂傷と打撲があります。そして蓬萊さんは左目脇を裂傷、多数の軽い打撲。他は…無事です」

 

僅かに実弥の肩が揺れる。

しのぶは、斗和の心臓のことを口に出すのを躊躇いやめた。

 

「…邪魔したなァ」

 

しのぶの横を過ぎる実弥の表情は、薄暗くてよく見えない。

この時は、同じ柱である杏寿郎を見舞う為に来たのだと思っていた。

 

 

 

───────

──────

それから更に五日が経った。

 

二人が快復するまではと、しのぶは耀哉より任務は免除され四六時中蝶屋敷にいる。

 

斗和が担っていた警備も含め、現在七人の柱に負担を掛けている状態だ。

多忙に輪を掛けた七人だが、それをおくびにも出さず、毎日誰かしら必ず見舞いに訪れていた。

 

だが二人は、変わらず目覚める気配がない。

 

目覚めるまでは、家族であろうと面会謝絶を貫くべきと判断した。

杏寿郎の父と弟も部屋の前で断っていた。

 

ずっと酒を飲み、引き籠もっていたという元炎柱・煉獄槇寿郎。

しのぶが見る限り、そうは思えない程にしっかりとしていたので驚いた。

やはり息子が生死を彷徨っていると聞けば、さすがに立ち直るのだなと思った。

 

会えなくても、それでも様子を聞きに来る彼らにしのぶは目頭が熱くなる。

 

杏寿郎は、処置の早さと輸血が功を奏してくれればと願っていた。

だがどこもかしこも酷い傷なのだ。

あとはもうとにかく祈るしかなかった。

 

そして斗和は、ひたすらに眠り続けている。

もしかしたら頰を叩けば、体を揺らせば起きるかもしれない。

そう思い様々試すも、全く目覚めなかった。 

斗和はいつ診ようが、脈も心拍も乱れたままだ。

二度と正常には戻らない。

 

そのせいで目覚めないのかもしれない。

もしかしたらこのまま心臓が止まることも、可能性として考えられる。 

 

(せっかく助かった命…二人とも早く目覚めて、お願い…!)

 

しのぶの祈る気持ちは日々強くなる。

 

 

 

 

 

───────

──────

そして二人が蝶屋敷に運ばれ、ちょうど一週間経った正午過ぎだ。

 

様子を診に行ってからすぐのことだった。

部屋の換気をしに行ったアオイが、転がるようにしのぶを呼びに来た。

 

「しのぶ様ー!!大変です!炎柱が!早く来て下さい!!」

 

「!?」

 

行ってみれば、そこには右目をぼんやり開けた杏寿郎の姿があった。

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