※実弥視点
それは突然にもたらされた。
朝方、斗和の鴉・令和が飛んできて告げたことに衝撃を受ける。
「炎柱ト斗和、上弦ノ参ト戦闘、意識不明、重傷」
その後すぐに別の鴉が飛んできて、煉獄が重傷であることを告げた。
その日から煉獄、蓬萊、治療に専念する胡蝶は任務から離れた。
三人の任務と警備を、他の柱で担うことになった。
ただでさえ多忙な柱。
輪をかけて忙しくなり、三日経ちやっと蝶屋敷へ足を運んだ。
その前に意識が戻ると思っていた。
だが二人とも未だ目を覚まさない。
胡蝶から容態を聞けば煉獄の負った傷は相当で、凄まじい戦闘だったのだと想像できる。
蓬萊の傷は、聞いた限りでは酷くは無い。
大丈夫だ、明日には目が覚める。
そう信じていた。
だが一週間後に煉獄が目覚めたのに対し、蓬萊は変わらなかった。
驚異的な回復力で治癒していく煉獄とは反対に、目覚める気配すらない。
なぜ目覚めない…?
祈る毎日が過ぎ、三週間近く通いやっと面会許可がおりた。
本来はまだできないはずのそれを、胡蝶は許した。
三週間、毎日見ていた個室の扉。
その扉に初めて手を掛け中へ入る。
灯りのない室内には月明かりが入り、寝台に横たわる影を浮かび上がらせている。
そっと近付くと、何度か見た寝顔が天井を向いている。
左目横の縦に縫われた傷が痛々しい。
また顔に傷を負った女。
上弦と対峙し、顔の傷と打撲だけで済んだのは奇跡と言える。
だからおかしい。
なぜ目覚めない?
他に異常がないのに、なぜ目を開けない?
蓬萊は以前、下弦を二体倒した時は一週間で目覚めた。
だがもう三週間だ。
一体どうなっている?
煉獄は目覚め快復していってるのに、遥かに軽傷のお前がなぜ…?
このままなんてないよな?
このままいなくならないよな?
お前に何も伝えないままなんて、そんなこと…!
布団を捲り手を取り指を絡め、両の手で包み込み願う。
斗和…お前が好きだ。
きっと最初から、お前が俺に向ける目を見た時からずっと。
それが気になり、一緒にいるうちに惹かれていると気付いた。
だが鬼狩りをする現実と、つまらない嫉妬が邪魔をして言葉にできなかった。
あの時お前の手を掴んだままだったら、こうはならずにすんだのか?
いつでも会えると思っていた。
たった三文字を告げられず、こんなことになるなど思わなかった。
こんなにも一人の女を愛しいと思ったことはない。
まだ告げていないことがあるのに、言いたいことがあるのに。
斗和、頼むから目を開けてくれ…!