退院
(久しぶりの我が家だー!)
斗和は居間に寝転がり、左右にごろごろ転がる。
三週間と三日ぶりに自宅に帰って来た。
しばし慣れ親しんだ我が家を堪能する。
昨晩、胡蝶しのぶから退院していいと言われた。
早速翌日、つまり今日の朝に蝶屋敷を後にした。
朝餉を食べてから杏寿郎に挨拶し、斗和はすぐに帰路に着いたのだった。
その時に聞いたことがある。
炭治郎、善逸、伊之助の三人組は、蝶屋敷から任務に行っているとのことだ。
斗和は、彼らが病室に来て以来姿を見ていないが、元気で頑張っていることを喜んだ。
今まで長く家を空けたことはなかったせいか、斗和は不思議だった。
長期任務はたくさんあったが、三週間も空けたことはない。
少し埃っぽいかなと床間を指で触れば、やはり汚れている。
斗和はまずは掃除だなと、雑巾を絞る。
ひとまず使う部屋だけ掃除していると、玄関から呼ぶ声がした。
足早に向かうと、隠が食材と文を携えていた。
「お館様より蓬萊様に文です。これに書かれている通りにとのことです。ご不便なことがあれば、なんなりとお申し付け下さい」
頭を下げる隠に、斗和は戸惑う。
「ありがたいことですが、私はもう柱ではありません。そのようなことを受けるのは分不相応です」
「では今日のところは帰ります。何かあれば鴉を使いお呼び下さい」
斗和は帰って行く隠をぼーっと見てから、耀哉からだと言う文を開ける。
文には杏寿郎を救ってくれた礼と、これまでの労いだと一週間休みを取るようにと書いてあった。
その間に不便なことがあれば、隠に申しつけるようにとまで書かれている。
耀哉には感謝しかななかった。
記憶のことを伝えた斗和を咎めることなく、自由にしてくれたのだ。
もし耀哉がいなければ、斗和は杏寿郎を助けられなかった。
思いがけない一週間の休みを、斗和はどうしようか考える。
眠っている間も入れると、一ヶ月も何もしないことになってしまう。
警備も任務も柱に負担させているので、心苦しかった。
(あ、そういえば私の警備区域は誰がやってくれているんだろう?)
ふと疑問に湧いたことだが、調べようがない。
とにかく早めに警備だけでも復帰しないとと思った。
(よし、午後から鍛錬しよう)
斗和がいそいそと掃除に戻ると、今度は鴉が飛んできて庭先で騒ぐ。
(どこの鴉かな?)
見れば足に文が巻かれてあり、解いて驚いた。
なんとそれは、杏寿郎の父・槇寿郎からだった。
なぜ槇寿郎から文が来るのかと、斗和はしばし唖然とし右手の文を見つめる。
そういえばと、斗和は思い出す。
無限列車に乗る前に文を書いたのだった。
今までの無礼を詫び、後悔していないと堂々書いた。
やはり怒ったのかと思った。
(炭治郎君は煉獄家に行ったのかな?)
杏寿郎がもし、自分が死ぬと思い物語と同じことを炭治郎に告げていたら、行ったのではないかと考えられる。
蝶屋敷に運ばれた時点では、杏寿郎は生死の境を彷徨っていた。
いつ息を引き取るか分からない危険な状態だった。
炭治郎はそんな杏寿郎の姿を目の当たりにし、何か伝えたくて行った可能性はある。
しかしそのあたりは聞くこともできないので、斗和には分からない。
とにかく杏寿郎は生き抜いたので、斗和の目的は果たせた。
斗和はそれで満足なので、槇寿郎についてはもう何も言うこともない。
だがわざわざこうして文が来たのを、無視するわけにもいかない。
(ああでも読むのは怖いな…)
斗和は恐る恐る文を開いた。