※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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実弥の想い─実弥─

※実弥視点

 

 

 

 

斗和が目覚めたと伝達があった。

俺が見舞いに行った後のことらしい。

 

安堵した。

本当に安堵した。

 

このまま目覚めないのかと、死んでしまうのではないかと思い悩んだ三週間だった。

生きた心地のしない苦痛の時を過ごしながら、必ず起きると信じ任務をこなした。

 

はっきりと気付いたこの感情を、もう隠すこともうやむやにすることもできない。

 

一度は不要だと切り捨てようとした。

 

だができなかった。

 

始めはおかしな奴で、情けなくて最悪だと思った。

下弦を二体同時に倒したのをこの目で見て期待し、手合わせを申し込んだ。

ところが柱は仮だとか、やる気のない卑屈なことばかり言われた。

挙げ句俺の打ち込みにびくびくおどおどして、泣きそうにまでなっていた。

あの時は心底呆れ果て、怒りを覚えた。

 

今思えば俺に怯えていただけなのだろうが、いつまともになるのかと思い会う度に手合わせした。

二度目から既にまともになっていたというのにだ。

 

そうして彼女といるうちに、いつの間にか好きになっていた。

きっかけは斗和が俺を見る目だった。

きっと無意識だろうが、なぜそんな目を向けるのかと思った。

 

それは酷く悲しそうで、それでいて愛おしいものを見る目だった。

それが気になり、彼女を知るうちに惹かれていった。

 

斗和は常に誰に対しても腰が低く、謙虚で義理堅い。

何かすれば必ず礼をし、しなくてもいいことまで気に掛ける。

畑で作ったという野菜を振る舞ったり、わざわざ届けたり。

柱がしそうにないことをする。

柱でなくともそんなことはしない。

だがそれを生き甲斐のようにやる。

 

どうしてそこまでできる?

なぜそこまでする?

 

目が離せなかった。

 

斗和は自分に自信がなく、卑下してばかりだ。

そして、まるで女ではないかのように振る舞っていた。

自分には不要だと思っているのか、年頃の娘なのに着飾ることは一切しない。

鍛錬と畑仕事しかしない女。

それが顔の傷のせいなのか何なのかは分からない。

なぜそこまでと思う程だ。

 

斗和は、自分が女だということを否定しているみたいだった。

 

彼女が継子を失って俺に報告し、堪えきれず泣いた時は体が勝手に動いた。

最初は慰める気は毛頭なく、そうかと一言告げるだけで済ませようと思っていた。

 

だが衰弱し、青白い顔をして膝から崩れ落ちる姿を見たら放っておけなかった。

あの時抱き締めてから、きっともう俺は元には戻れなかった。

 

それでもつまらない意地が、この感情を言葉にできずにいた。

彼女が俺をどう思っているのかも分からなかった。

考えると深みに嵌まりそうで、這い上がれなくなる。

 

斗和を意識すればする程に心は乱れ、あったはずの理性は崩れ落ちる。

俺が笑っているのを覗きこんだ彼女を咄嗟に引き寄せた時、もう止められなかった。

 

どうしようもなく愛おしくなり、彼女も同じ目で俺を見つめて気付いたら口付けしていた。

 

離れたとたん、彼女は逃げるように去った。

そこからどうしていいか分からずただ時が過ぎ、斗和は任務で意識不明になった。

 

目を覚まさない彼女を見て、どれ程後悔したか分からない。

あの時手を離さなければ、あの時ちゃんと言葉にして伝えていればと悔やんだ。

 

心配で気がおかしくなりそうな三週間を待った。

 

彼女はやっと目覚めた。

目覚めてくれた。

 

もう二度とあんな思いをするのはごめんだ。

 

目覚めたと聞いた時は、その安堵からか張り詰めていた緊張の糸が切れ、酷く気疲れしたのを覚えた。

元から退院後に行こうと思いその時を待ったが、いざ退院したと聞けば今度は自分が体調を崩してしまった。

 

煉獄達が蝶屋敷に運ばれてから、治療に専念する胡蝶を含む三人の任務や警備区域を他の柱で分担していた。

俺は斗和の警備区域を全て請け負っていた。

張り詰めた糸が切れた安堵感と、忙しく動き回っていたことが重なったのだろう。

二日程寝込んでしまった。

滅多にないことだったが、それだけ気を張っていたのかと自嘲した。

 

 

 

 

 

 

やっとのことで斗和の家に足を向けることができた。

逸る気持ちを抑え、鴉の案内の元、初めて家に向かう。

 

斗和の家は庭や道場は自分の屋敷同様あるものの、家屋がやけにこじんまりとしている。

遠慮してこうなったのだろうとは思うが、控え目な彼女らしい。

 

玄関の戸を叩くも静まり返っており、不在であることが窺える。

三日前に退院したのは確かだ。

出掛けているのかと思い、待つことにした。

 

斗和にどう伝えればいいかなど考えていない。

ただ率直に口に出せばいい。

 

 

 

 

しばらくすると、門に人影が見え顔を向けた。

 

 

そこに立っていたのは、いつぞや町で声を掛けてきた着物姿の美しい女だった。

 

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