※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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好きだ─実弥─

※前ページの実弥視点

 

 

 

 

門から現れた着物姿の女は、驚愕し俺を見つめている。

俺はというと、その女に見惚れていた。

 

若緑に椿が散りばめられた着物。

結い上げられた髪、化粧を施した目の前の女は蓬萊斗和だ。

 

それは町で会って以来、夢にまで出てきた姿だった。

綺麗だと、ただそう思った。

 

斗和は相当に驚き動揺しているんだろう。

持っていた風呂敷を落としそうになっている。

 

着物姿で、紅を付けたその口が何を紡ぎ出すのかと思い黙っていた。

すると斗和は口元に手を遣り、町で声を掛けた時のように上品に言葉を発した。

 

「…不死川さん、こんにちは。いらしてたんですね。今町まで出かけていたんです。すみません…待ちました?」

 

貼り付けた笑みを浮かべ俺を見ている。

 

「…いや」

 

そう答えれば、彼女は更ににこりと笑う。

 

「ならよかったです。多忙な柱の方をお待たせしてはいけませんから。そういえば、うちは初めてですよね?見ての通り狭いので、お客様をお通しする部屋もありません。…何か御用でしょうか?」

 

上品な言葉遣い、普段とは違う作ったような声色。

 

何だこれは…?

 

おかしいとすぐ気付いたが、敢えてそれには言及しない。

 

「…目が覚めてよかったなァ。…ずっと心配だった」

 

彼女が何を企んでいようと、俺は率直に伝えるだけだ。

僅かに表情が変化したのを見逃さない。

 

「…それはどうも。お気遣いありがとうございます。お館様より休みをいただいたんです。あと四日で任務に復帰しますので、それまでご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。お忙しいのにわざわざ足をお運びいただき、申し訳ございません」

 

まるで文章を読んでいるかのように、斗和はすらすらと言い放つ。

そのまま頭を下げると、彼女は俺と視線を交えず更に続けた。

 

「…それで、何の御用でしょうか?まさかわざわざそんなことを言いに来たんですか?多忙な柱が一般隊士の心配をするなんて、心苦しいです。私はこの通り元気ですから。用が済んだのならお帰り下さい。…二度と来ないで下さい」

 

斗和は切り捨てるようにそう言い、俺を全く見ずに玄関へ向かっていく。

 

扉に手を掛けた時だ。

 

「好きだ」

 

「!」

 

ずっと告げられずにいた三文字は、いとも簡単に口にできた。

あれ程言えなかった癖に、こうも簡単に口から出るなど自嘲するしかない。

斗和は玄関扉に掛けた手が止まり、大袈裟なくらい肩が震えた。

 

「…風柱様、何か勘違いしてませんか?もしかして、以前のあの口付けごときでそのようなことを?」

 

斗和は振り返り、"あんなことぐらいで馬鹿馬鹿しい"と言いたげに冷ややかに笑う。

彼女のこんな表情は初めて見た。

 

まだ気付かないのだろうか。

なぜ気付かないのか。

 

俺はそう思った。

何も言わない俺に対し、斗和は更に言葉を紡ぐ。

 

「柱ともあろう方が、私みたいな醜い女を好き…?…下らない。早く目をお覚まし下さい。先に失礼しま…っ!」

 

扉を開け中に入ろうとした時だ。

もう黙っていられなかった。

 

斗和の腕を掴み、自らの胸に掻き抱いた。

 

「好きだ、斗和。…演技すんなら泣くんじゃねェ!」

 

「…っ、うっ…っふ…」

 

とたん斗和は嗚咽を漏らす。

俺を突き離そうと、演技しているのは最初から分かっていた。

途中から涙が零れているのにも気付かず、必死で言葉を紡いでいたのだ。

 

きっと斗和は様々考えたんだろう。

顔に傷があることで自分を卑下し、相応しくないとそう思ったんだろう。

そして俺のことも考えたはずだ。

迷惑がかかるんじゃないかと。

 

斗和はいつだってそうだ。

いつだって自分そっちのけで他人を思い遣る。

 

気持ちを押し殺してまで俺を突き離すつもりだろうが、そうはさせるか。

 

泣く程に俺を想っている女を、こんなにも愛しい女を手放せるわけがない。

すると斗和は、俺に抱き着いてきた。

 

「…っ、好き…私もあなたが好き…!」

 

ついに聞きたかった言葉が聞けた。

泣きじゃくる斗和の頰を撫で、一瞬目が合えばすぐに口唇も合う。

 

そのまま何度も角度を変え、離れていた時間を埋めるようにいつまでも互いを求めた。

 

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