※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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幸せの香り

その日の昼前、斗和は風柱邸の台所にいた。

 

長期任務に赴いていた実弥から、昼までには帰ると連絡が来た。

久しぶりの家でゆっくりして貰いたい。

斗和はそう思い、昼餉を作っているのだった。

 

想いが通じ合い結ばれた翌日から、実弥は長期任務で二人はしばらく会っていない。

 

斗和は、想いが通じ合った日のことを思い出す。

二度抱かれた初めての経験の後は、気怠かった。

見送ろうと起き上がるも下半身が痛み、それに気付いた実弥に寝てろと言われた。

斗和は恥ずかしいやら嬉しいやらで、その言葉に甘えた。

それから今日まで会っていないので、斗和はまだ色々と慣れずにいる。

 

冷静になると非常に恥ずかしく、どんな顔をして会えばいいのか妙に緊張していた。

 

「んー…」

 

出来上がった料理を見て、斗和は唸る。

数少ない、まともにできる料理の鰤大根を作った。

そして、家から持参した糠漬け。

他に何品か作ったものの、果たしてこれでいいのかと考える。

味見をすれば、鰤大根以外はもやっとする味だった。

斗和は、やはり何年経とうが料理は上達しないのだと悟る。

 

実弥は、藤の家で美味しい料理ばかり食べている可能性が高い。

このままではがっかりされそうだと思った。

 

(やっぱり通いの隠に頼めばよかったかな…でもいつ来るか知らないし…)

 

膳や茶碗を用意していると、開け放っていた勝手口から鴉の令和が叫ぶ。

 

「風柱、帰宅ッ!」

 

(任務でもないのに、実弥さんが絡むと話すのか…)

 

斗和は令和に呆れつつ、戸口からそっと顔を出す。

すると、ふわふわとした白い頭が勝手口に向かって来た。

 

とたん恥ずかしくなり、斗和は頭を引っ込める。

 

深呼吸を繰り返し、再度覗こうとした時だ。

 

「何隠れてんだァ?斗和」

 

「わっ!さ…ねみさん!お帰りなさい、お疲れ様でした」

 

実弥が台所に入り、斗和を見て呆れている。

 

「別に隠れてなんか、ただちょっとその…」

 

口を尖らせ呟く斗和を無視し、実弥は腹が減ったと竈の上を覗く。

 

「あ、ご飯を作ったので今用意しますね。手を洗って居間で待ってて下さい。…?どうしました?」

 

実弥は鍋から視線を移し、斗和を見遣る。

 

「いつまで敬語なのかと思ってよォ。この前は抜けてたよなァ?敬語じゃねェと新鮮で益々そそるん…」

 

「ちょっ、ちょっと!何を言うんですか!?」

 

「まずは飯だなァ」

 

実弥は呟いて勝手口を出て行く。

斗和は顔を赤くしながら白米をよそった。

 

 

膳を前にいただきますと手を合わせ、向かい合って食事をする。

斗和が風柱邸で食事をするのは二度目だ。

一度目は継子の死を報告しに来た時で、その時は実弥が殆どを作った。

斗和より腕前は遥かに上であった。

今日は全て斗和が作ったので、実弥はそれなりに期待もしている。

 

斗和は、実弥が鰤大根に手を付けたのを見計らい窺う。

 

「鰤大根はどうですか…?」

 

「うまい」

 

(よかった…!)

 

実弥はおかわりまでして完食したので、今回は成功と言える。

食べ終わった斗和は、茶碗を洗いながら上機嫌だ。

 

 

洗い終わり、配膳台の四角い包みを開き皿に乗せる。

居間へ運ぶと、実弥は飲んでいた茶の香りを嗅いでいる。

 

「そのお茶、とってもおいしいでしょう?この前共同鍛錬場で飲んだらすごくおいしくて、売っているお茶屋を探していくつか買ってきたの!一袋置いていくので飲んで下さいね」

 

「あーだから着物だったのかァ。いねェと思ったら茶ァ買いに町に行ってたわけかァ…」

 

なるほどなァ、と茶を啜る実弥。

その目の前に、斗和は鼻歌混じりでおはぎを出した。

 

どんな反応をするのか、楽しみだった。

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