※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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幸せの味─実弥─

※前ページの実弥視点

 

 

 

 

長期任務を終え帰路に着く。

 

久方ぶりの長期での任務は、昔からある窟(いわや)に住み着いた鬼退治だった。

似たような窟が点在する一帯を調べ、鬼を狩ってきた。

窟の数が多く思っていたより時間はかかったが、やっと帰路に着くことができた。

 

藤の家を出る前に、昼までには着くと斗和に伝えてある。

しばらく会っていない彼女は、どんな顔で出迎えてくれるだろうか。

 

ずっと告げられなかった想いを伝えた後、そのまま流れのままに睦み合った。

着物姿で化粧を施した斗和は、それはもう美しかった。

脱がせればまた違う一面も見え、普段からは考えられない時を過ごしたのだった。

 

見送ろうとする気怠げな斗和の姿は、ほんのりと色香が漂っていた。

その姿を見て、帰ろうとしたはずの足が一瞬止まったのは確かだ。

 

翌日からは今回の長期任務だったので、しばらく会っていない。

斗和は元気にしているか、早く会いたい気持ちが湧き上がる。

 

 

 

───────

──────

自宅付近まで来ると、上空に一羽の鴉の姿が見えた。

あれは斗和の鴉・令和だろうか。

 

門を潜り勝手口に目を遣ると、こちらを見る一つの頭。

戸口に手を掛け、ひょっこりと顔を出している斗和の姿があった。

すると、素早く頭を引っ込め消える。

 

何をコソコソ隠れているんだか。

 

「何隠れてんだァ?斗和」

 

勝手口を覗くと、斗和はその横で胸に手を当て深呼吸している。

 

「わっ!さ…ねみさん!お帰りなさい、お疲れ様でした…」

 

俺を見て驚き、しどろもどろに労ってくる。

いちいち反応するのが面白い。

 

「別に隠れてなんか、ただちょっとその…」

 

ぶつぶつと呟く斗和を無視し、竈を覗き込む。

 

「あ、ご飯を作ったので今用意しますね。手を洗って居間で待ってて下さい。…?どうしました?」

 

何でまた敬語に戻ってるんだ?

そもそも俺達は同い年だ。

本来敬語は不要だが、斗和は柱になろうと常に敬語だった。

だが、この関係になってもそれが続くのは面白くない。

 

「いつまで敬語なのかと思ってよォ、この前は抜けてたよなァ?敬語じゃねえと新鮮で益々そそるん…」

 

「ちょっ、ちょっと!何を言うんですか!?」

 

俺のそそるという言葉を遮り、声を張り上げる。

その顔は赤い。

斗和の反応はいちいち面白い。

 

 

 

膳を前に、手を合わせ向かい合って食事をする。

白米、人参と大根の葉の味噌汁、鰤大根、葱のぬた、あんかけ豆腐、糠漬けだ。

 

斗和と食事をするのは二度目だ。

一度目は継子の死を報告しに来た時で、その時は俺がほぼ作って出した。

斗和に味噌汁を作らせたら、出汁を取らなかったことを思い出す。

たまたま忘れただけだと思う。

 

膳からは食欲をそそる香りがし、まずは斗和の得意料理と言う鰤大根に口を付ける。

 

「鰤大根はどうですか…?」

 

すかさず聞いてくるあたり、気にしていたんだろう。

 

「うまい」

 

かなり美味い。

得意料理と自ら言うだけある。

鰤の旨みが染み込んだ大根が柔らかく煮込まれ、飯に合う。

 

前回出汁を取らなかった味噌汁は今回は取ったようだが、大根の葉がまだ生だ。

あんかけ豆腐は餡が妙に固まっているが、味はまあまあ。

糠漬けも美味い。

だが、葱のぬたはほんのり酢の味しかしない。

 

鰤大根はかなり美味いので追加で食べたが、なんだかちぐはぐな料理だった。

 

そういえば、鰤大根と握り飯"ぐらい"しかまともに作れないと言っていなかったか。

 

斗和は、もしかしたら料理が苦手なのかもしれない。

焼いた握り飯と鰤大根はかなり美味いが、他はいまいちだった。

野良着に手拭い、見るからに炊事はできそうな感じだが、実は苦手というのは何とも言えない。

気にしている可能性もあるから、直接聞くことはしない。

それでも、斗和が俺の為に作ってくれるなら何だって食べる。

 

斗和は茶碗を洗っているので、用意されていた急須で茶を淹れる。

すると湯気のたつ茶の香りが、いつもよりいいことに気付く。

一口飲むと、香りとともに深みのあるまろやかな味わいが広がった。

 

いつもの茶葉かァ?

 

色を見たり鼻を近付けたりしていると、洗い物の終わった斗和が現れる。

 

「そのお茶、とってもおいしいでしょう?この前共同鍛錬場で飲んだらすごくおいしくて、売っているお茶屋を探していくつか買ってきたの!一袋置いていくので飲んで下さいね」

 

なるほどそれでか。

合点がついた。

 

「あーだから着物だったのかァ。いねェと思ったら茶ァ買いに町に行ってたわけか。なるほどなァ」

 

あの時着物姿だったのは、町に買い物に出ていたからなのか。

あの風呂敷包みの中身はこの茶だったわけか。

それにしても、わざわざ茶を求め買いに行くなど珍しい。

 

斗和の口からは、おおよそ女がしそうな買い物だのなんだのの話題は出てこない。

唯一するのは、よく土産を買ってくる甘味屋の話しだけだ。

 

そういやしばらく食ってねェなァ…

 

俺は湯気のたつ茶を啜り、好物のあれを思い浮かべる。

 

すると斗和は、ふっふっふーと鼻歌混じりに今思い浮かべていたあれを出してきた。

 

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