※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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かまぼこ隊再び

杏寿郎から今後の話しを聞いている最中のことだ。

 

玄関のあたりが騒がしくなり、皆が顔を向けるとぞろぞろと三人組がやってきた。

炭治郎、善逸、伊之助である。

 

(…まずい)

 

斗和は、煉獄家に来たのは失敗だったと思った。

三人は列車任務を通じ、杏寿郎を慕っている。

柱を引退した杏寿郎に稽古をつけて貰っているのは、容易く想像できたはずなのだ。

 

斗和は、不安要素が無ければこうして会うのは喜んだ。

だが気掛かりがある今は、この三人に会うのは避けたかった。

 

五感が鋭い彼等と一緒にいるのは、誤魔化せない。

 

斗和は、どうすればこの場から去れるか素早く考える。

 

「こんにちはー!煉獄さん、今日も来ました」

 

「勝負だ!今日こそ勝つ!」

 

「ううう、禰 豆子ちゃんが見ててくれるなら俺は頑張れると思う…」

 

相変わらず個性の強い三人は、杏寿郎達に挨拶し賑やかだ。

槇寿郎は早くもゲンナリしている。

 

「おっさん、今日こそはぜーったい勝つからな!」

 

伊之助は槇寿郎に稽古をつけて貰っており、勝つことに躍起になっていた。

 

「嘴平、お前は脇が甘くなる癖を直せ」

 

「伊之助さんの二刀流はなかなかできませんから、俺は見ているだけでも刺激になります」

 

千寿郎の言葉に気を良くした伊之助は、ササッとどんぐりを取り出す。

 

「分かってるじゃねえか!よーしこのツヤツヤのどんぐりをやろう!おっさんも欲しいか!?」

 

「いらん」

 

槇寿郎は即答し、厠へ行くと玄関へ向かった。

 

「わあ大きいどんぐりですね!」

 

「このどんぐりは子分にしかやらねえからな、ありがたく受け取れ!」

 

わいわい騒がしい伊之助達の横で、炭治郎が斗和に近寄る。

 

「蓬萊さん!お久しぶりです。任務に復帰しているんですか?」

 

「どうも、お久しぶりです。そうなんです。私は軽傷でしたから、退院して割とすぐに任務には出ました。皆さん元気そうで何よりです」

 

斗和は、至極普通に挨拶をし返す。

内心どうにかこの場を去れないものかと必死で考えているが、この気持ちさえ炭治郎には気付かれるのではと思った。

 

「俺達、任務の合間に…」

 

炭治郎が言い掛けたその時だった。

鴉が飛んで来て羽根をばためかせる。

 

「任務!任務!西ノ外レ、関所ヘ急ゲ!」

 

(令和!)

 

「任務か!」

 

「そのようです。半端なところで申し訳ありませんが、私はこれで失礼しますね」

 

突然入った任務に、斗和は挨拶もそこそこに煉獄家を出る。

 

斗和が、先を行く鴉の令和を追いかけようとした時だ。

 

「斗和さん!…待って下さい!」

 

「我妻君…!どうしました?」

 

呼ぶ声に振り返れば、善逸がいた。

まさか追いかけて来るとは思わず、斗和は平常心を保つのに必死になる。

 

「あの…言うべきか迷いました。蝶屋敷で会った時は俺の勘違いかもって思った。…だけど、今日会って間違いじゃないと確信しました…!」

 

善逸はいつも見せる情けない顔ではなく、真剣だった。

斗和はドクドクと動悸がし始める。

 

「斗和さん…心臓が悪いんですよね?」

 

「………」

 

斗和は黙って善逸を見つめた。

 

「俺は病気の事は分からないけど、斗和さんの心拍は明らかに乱れてる。雑音も混ざってるし、何より…!」

 

「我妻君、もういいですよ」

 

その先を遮り、斗和は首を振る。

 

「以前より酷くなっている、そうでしょう?」

 

「気付いてたんですか!?なら何で、このままじゃ…!」

 

善逸は悲痛な表情で眉尻を下げた。

 

「誰にも言わないで下さい。どうかお願いします!私は鬼を倒す為に鬼殺隊にいます。ここでやめるわけにはいかないんです。だからどうか内密に!…では」

 

終始困惑していた善逸を残し、斗和は先を急いだ。

 

 

 

 

 

(ばれていた…)

 

斗和はぐっと下唇を噛んだ。

蝶屋敷で、三人が見舞いに訪れる前に退院すべきだったと後悔する。

耳がいい善逸に会うのだけは避けたかった。

斗和は己の行動を悔やむ。

 

だが、いつかこうして煉獄家で会うことにはなったのかもしれない。

それでも口止めはできた。

 

(胡蝶さんと善逸君…大丈夫、これ以上ばれはしない。このまま堪えればなんとかなるはず…きっと…!)

 

斗和は、拭い去れない不安を抱えながらも走った。

 

 

 

────────

───────

斗和は、自宅の縁側で鴉の令和を眺めていた。

 

先ほど煉獄家で告げてきた任務は、令和の吐いた咄嗟の嘘だったのだ。

 

煉獄家を出て最初は西に向かっていたが、途中からいつもの帰路に合流したので驚いた。

任務は!?と声を張り上げれば「嘘モホーベン!嘘モホーベン!」と言うので、斗和はしばし呆然としてしまった。

 

令和は斗和の気持ちを察したのか。

あの場にいたくない、去りたいとなぜ分かったのか。

こんなことは今まで一度たりともなかった。

任務伝令以外は全く喋らない鴉だが、主の思いを察して助けたのだ。

 

こんなに気の利く鴉は他にいるだろうか。

令和は誰より斗和と共にいる相棒だ。

 

斗和はじわりと涙が浮かぶ。

 

 

 

「令和…ありがとう」

 

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