※斗和の鎹鴉・令和視点
俺の名は令和。
鬼殺隊に属する鎹鴉だ。
人間の年齢にすると大分いい歳だが、鴉の仲間にはもっと上がいる。
水柱・冨岡義勇付きの寛三郎なんてかなりの高齢だ。
この前会った時に話したが、伝令間違いを度々するらしい。
そろそろ引退かもしれないと呟いていた。
とはいえ、隊士同様に鎹鴉も不足している。
今年からは雀にまで役目を負わせているぐらいだ。
動けるうちは頑張れと励ましておいた。
俺はその昔、本部・産屋敷家常駐の柱専用伝令をしていた。
長年本部付きだったが、引退したり死んだりする鴉が増えたことで、隊士付きに変更になった。
藤襲山で仲間達と待機していると、最終選別の突破者達が戻って来た。
その中に、野良着姿の小娘がいることに気付く。
すると、俺は成り行きで小娘に付くことになった。
田舎者丸出しのうす汚れた顔で、俺に笑い掛けてきた。
小娘は一風変わっている。
野良仕事が趣味のようで、任務以外は鍛錬をするか畑仕事をするかしかしない。
後に同期の派手な男から芋娘とあだ名されるが、なんとも絶妙なあだ名だ。
それ以降俺も芋娘と呼んでいる。
芋娘は方言と訛りで喋る時がある。
最初に自己紹介してきた時は、方言丸出しでかなり驚いた。
変な奴だと思い、任務に関すること以外は一切喋らなかった。
何せ暇さえあれば話し掛けてくるので、いちいち答えていられない。
俺が全く喋らないのに気付いてからは頻度も減ったが、それでも話し掛けてくる。
反応しなくてもそれは変わらない。
おかしな娘だと思った。
だが支給され、一番最初に俺に名前を付けてくれたのは嬉しかった。
俺はそれまで名前など無かった。
芋娘は考えるより先に行動したりするので、失敗することも多かった。
歳の割には大人びた雰囲気だったが、無鉄砲だったり無茶をすることもあり放っておけなくなる。
一番悩ませたのは、芋娘の使う土の呼吸の技だ。
土の呼吸は、どうやら芋娘が岩の呼吸から派生させたらしい。
鬼殺隊に長くいる身だが、岩の派生呼吸は聞いたことがなかった。
そもそも岩の呼吸は、相当な体躯に恵まれた男でなければ会得できない。
故に昔から岩の呼吸の使用者は少なく、一握りしかいなかった。
それを新たな呼吸を派生させるとは、俺も少なからず驚いている。
見ていれば、派生なだけあり豪快な大技ばかりだった。
だがこの土の呼吸が、芋娘の体を蝕んだ。
奥義と銘打った拾ノ型は、撃てば鬼をほぼ滅殺する強力な技だ。
だが体にかかる負担が大きく、失神してしまう。
今まで数回使用したが、使う毎に目覚めるまで時間が掛かるようになった。
ついには三週間も目覚めなかった。
芋娘は、いつの間にか心臓を悪くしていたのだ。
おそらく拾ノ型の反動だけではなく、元から心臓が弱かったらしい。
成長期に負担をかけ、更に全集中の呼吸を常にしている為に、悲鳴を上げていたのだ。
日を追うごとに、少しずつだが技に乱れが生じ、生傷が増えていく。
それでも芋娘は隊士を辞めようとはせず、何かに突き進むように駆け抜ける。
芋娘はこの先を悟っていたが、しっかり前を向いていた。
俺は鴉だ。
主がどうしようが止めることはできない。
鴉ができることは殆どない。
それでも俺は、俺なりにやれることはしてやろうと思った。
それが俺に令和と名付けてくれた礼だ。