※天元視点
遊郭での任務後、煉獄が屋敷に来た。
話したいことが様々あり俺が呼び出した。
話しの途中、来客があった。
それは同期の元土柱・蓬萊斗和だった。
数ヶ月ぶりに見た同期の雰囲気は、随分と変わった印象を受けた。
相変わらず野良着姿で化粧もしていなかったが、以前とは明らかに纏う空気が違っていた。
蓬萊は十五歳の時から見ているが、野良着で頭に手拭いを巻いた、まるで農民の娘だった。
実際そうだと言っていた気もするが、何年経とうが常に野良着姿の芋娘だと思っていた。
蓬萊は顔に傷はあるが、それなりに整った顔立ちをしている。
もしかすると化粧をすれば変わるのではと思ってはいた。
だがとにかく、地味の中の地味だった。
それが今ではどうだ。
まるで年若い人妻であるかのような、得も言われぬ色香を漂わせている。
あの田舎くさい芋娘はどこへ…?
すぐに生娘でなくなったのに気付いた。
率直な疑問。
相手は誰だ?
最初は煉獄かと思った。
なぜなら蓬萊は、最初に煉獄と挨拶した時に盛大に頰を染めていた。
煉獄が重傷を負った任務でも一緒だった。
当然勘ぐるだろう。
だがそれはすぐに違うと判明する。
今しがた自らの持参した豆大福を食べた蓬萊は、口の周りに粉がべったり付着した。
横にいた煉獄が指摘し、どこ?と舌や指を使って口の粉を取るその仕草。
煉獄に顔を向けそんなことをするものだから、奴の顔は面白い程に赤くなり動揺していた。
その反応で、相手は煉獄でないのは確実だ。
となると…?
次に浮かんだのは、いつぞやの柱合会議で二人連れ立っていなくなった冨岡だ。
二人は会議でも端で隣同士だ。
だがあの朴念仁と蓬萊…全く考えられない。
他の一般隊士かとも思ったが、蓬萊は柱だったわけで、さすがに一般隊士とどうこうは考え難い。
そうなるとやはり、柱の誰かとしか考えられない。
時透は絶対にない。
伊黒もない、奴は甘露寺に惚れている。
悲鳴嶼の旦那は…ないな。
いや待てよ、あの二人は岩と土、元の呼吸と派生呼吸という共通点がある。
もしかしてその繋がりで…?
やべえ、少し想像しちまった。
とはいえ、悲鳴嶼の旦那はこれまで色恋に関する噂は無かった。
あの性格だしやはりないな。
となると、残ったのは不死川しかいない。
不死川……?
大分前だが、手合わせをすると言っていた。
しかしそのぐらいよくあることだ。
そういえば、少し前に不死川と任務明けに会った時、奴の顔は鬼が逃げ出すくらいやばい顔だった。
鬱憤を溜めているような、吐き出せないような悶々とした表情だ。
まさかこいつ溜まっているのかと思い聞くと、更に物凄い形相で俺を睨み先に帰って行った。
本当に溜まってるのかと嘲笑したが、まさかその相手が蓬萊なのか?
浮いた話ひとつ無いあの不死川が芋娘と…?
いつの間に?
しっくり来ない為、否定するだろうとその名を口に出した。
「…不死川」
斗和は、見てすぐ分かる程に動きが止まった。
相手はまさかの不死川だった。
それにしてもあの色香を不死川が引き出したのだとしたら、いやはや何ともだ。
だが蓬萊自身、自分がどれだけ色香を撒き散らしているか気付いていない。
口唇の粉を舌で舐め取る姿は、煉獄を誘惑しているようにしか見えなかった。
不死川よ、あれはやばいだろう。
しかし女は変わるものだ。
まさかあの芋娘がねえ…
同期の変貌ぶりに、天元はニンマリと笑うのであった。