※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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柱稽古①

翌日。

斗和が煉獄家を訪れると、隊士がひしめいていた。

入りきれず門の外にも溢れている。

 

鴉が告げたのは、まずは煉獄家か宇髄邸のどちらかに行き、合格が出たら行っていない方に行く。

そして次の霞柱邸に続くようにとのことだった。 

 

斗和は特に理由はなく最初に煉獄家に来たが、これ程いるのでは稽古にならないのではないかと思った。

 

隊士をかき分け庭に行くと、杏寿郎が木刀を振るっていた。

向かってくる隊士らに次々と一撃を入れている。

どうやら二人ずつ杏寿郎に向かって行き、一撃入れられたら次の二人という稽古のようだ。

終わったらまた後ろに並ぶ、終わりなき稽古に見える。

 

しばらく見ていると、隠に声を掛けられた。

 

「あれ?蓬萊様?」

 

「あ!後藤さん。お疲れ様です。手伝いをしてるんですか?」

 

後藤は井戸で水を汲み、盥(たらい)いっぱいの手拭いを洗おうとしていた。

 

「そうなんですよ。隠も稽古の手伝いに駆り出されてるんです。蓬萊様も参加するんですね。てっきり稽古つける側だと思ってましたよ」

 

後藤はバシャバシャと手拭いを浸していく。

何の気なしに言っている後藤だが、斗和の表情が曇ったことに気付いた。

 

「はい。私、一般隊士ですから。だけどこんなにいるので…良かったら手伝いますよ」

 

斗和は手拭いの山に囲まれる後藤を見兼ね、手伝いを買って出た。

 

「いやでも…」

 

後藤が言い淀むと、縁側を走る千寿郎が見えた。

 

「千寿郎君!忙しそうですね。柱稽古に来たのですが、人数が多いようなので様子を見ていました。よかったらお手伝いしますよ」

 

足を止め振り返る千寿郎の手には、手拭いの束が大量だ。

 

「蓬萊さん!助かります!今道場に手拭いを持って行くところなんです」

 

「道場というと、もしかして?」

 

斗和は、道場では槇寿郎が稽古をつけているのでは?と思った。

槇寿郎は柱を引退してはいるが、現役に近い程に動ける。

現に、隻眼となり柱を引退した杏寿郎との手合わせでは、常に勝ち続けていた。

 

「はい。兄上は庭で、父上は道場で稽古をつけているんですよ。隊士の方々に手拭いを渡したり水分提供などをしているんですが、人数が多くて驚いています」

 

千寿郎は肩にたすき掛けをし、額に汗を掻いている。

 

「槇寿郎様も稽古をつけてるんですね。一人でこの人数の世話は無理ですよ。手伝いますので、何をすればいいか教えて下さい!」

 

千寿郎は、じゃあお言葉に甘えてと、持っていた手拭いの束を斗和に渡す。

道場にいる隊士に配った後、台所に来てくれと言われる。

 

 

 

(うわっ、すごい汗くさい…鼻摘んだら失礼だよね。でも結構きついな)

 

斗和は、立ち込める汗のにおいにうっと顔を顰めた。

道場は開け放たれているが、隊士の人数が多く非常に汗臭い。

 

そこには、斗和の屋敷に稽古に来た女隊士がいた。

 

「田屋さん、お疲れ様です。汗くさいけど頑張って下さい!」

 

「びっくりした!蓬萊さん、手伝いしてるんですか?」

 

「はい。あまりに人数が多いし、手伝いも不足しているようでしたので。一段落したら私も稽古に参加しますね」

 

斗和は汗塗れの手拭いを回収し、新しい手拭いを渡して行く。

当然ながら斗和の存在は知れ渡っている。

未だに柱だと思っている者も多く、なぜ柱が柱稽古の裏方をしているのかと疑問に思われた。

 

「何で土柱が煉獄様の手伝いしてるんだ?」

 

「土柱って退いたはずだぞ。てゆーかあんなことしてると、益々隊士に見えないよなあ」

 

「お前ひょっとこの面の話し知ってるか?一時期着けて任務してたらしい。何か変わった人だよな」

 

そんなことを囁かれている中で、隊士らの中心にいた槇寿郎の姿を見つける。

 

蕎麦屋の二階でのことを思い出し、斗和は胸が痛んだ。

非常識極まりないことを頼んでしまった。

斗和は、槇寿郎に対し申し訳ないという気持ちが強かった。

だが、忘れなければならない。

槇寿郎も、何事もなく接するだろうと思った。

 

 

 

 

斗和は、回収した手拭いを井戸で洗う後藤の元へ持って行く。

 

「後藤さーん!すいませんが追加です」

 

ドサドサッと横の盥(たらい)に入れると、後藤は口布の上から鼻を摘んだ。

 

「くっさ!やばいですねこれ!蓬萊様、結局手伝いしていいんですか?あなたは実質柱のようなものなのに…」

 

「私、柱は昨年退いています。だから稽古もしますし手伝いだってしますよ」

 

斗和は、いやいやと手を振り否定する。

 

「でも胡蝶様と冨岡様は事情があり不参加らしいから、てっきり蓬萊様が入るんだとばかり思ってました」

 

「要請が来れば従いますが、今のところはないので…ではよろしくお願いします」

 

後藤に頭を下げ、斗和は台所へ向かった。

その後ろ姿を見つめる後藤は思った。

やはり蓬萊斗和は変わっている、と。

 

「千寿郎君!今終わりました。次は何を?」

 

斗和が台所へ行くと、千寿郎が薬缶に水を移し替えていた。

 

「ありがとうございます。次は庭の兄上達のところへ水分提供を。この薬缶と湯呑みを持って行きます。竹筒を持参している方もいますから、湯呑みは足りると思います」

 

「あ、梅干しも用意できますか?」

 

「はい、それはできますが、なぜ梅干しを?」

 

千寿郎は小首を傾げる。

 

「汗を大量にかいた時は、塩分も補給しなければなりません。水ばかりではよくないんです。梅干しが無い時は、塩を少し舐めればいいんです」

 

斗和は分かる範囲の知識を教えた。

千寿郎はならばと、壺から梅干しを取り出し皿に置いた。

道場には千寿郎が運ぶので、斗和は再び庭へ向かった。

 

「皆さん、水分補給はしっかりして下さいね。汗を沢山かいた方は、梅干しを一つ食べるようにしましょう。塩分補給も大切なんですよ」

 

斗和の声に、隊士らはそれぞれに水分補給をし始めた。

 

それが終われば今度は握り飯を作る。 

大量に握らなければならず、斗和は梅干しを入れた普通のを作ろうとした。

 

「兄上と父上には、蓬萊さんの焼きお握りがいいと思います。以前教えて貰って作ったんですが、焼き加減と醤油の付ける量が上手くできなくて。それ以来作っていないんです。兄上はきっと食べたいと思いますよ」

 

白飯を握りながら千寿郎がそう言うので、斗和は頷いた。

焼きお握りにすべく握っていくが、最近全く作っていなかった。

以前は振る舞うことも多かったが、めっきり無くなり久しい。

今日はできるだけ作ろうと、斗和はひたすらに手を動かした。

 

 

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