※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

159 / 190
想えばこそ─実弥─

※実弥視点

 

 

 

 

甘露寺と時透、竈門、そして玄弥が上弦を二体倒してから、鬼の出現がめっきり減った。

 

その後の柱合会議で痣のこと、柱稽古の話し合いがされた。

痣はいつ出るか分からないが、無惨を倒すには痣の出現は必要不可欠だ。

隊士全員の力量向上と、柱の痣の出現を目指すべく柱稽古が始まった。

 

柱稽古の内容はそれぞれ違うが、順番は決まっていた。

柱は引退したが煉獄か宇髄が一番初めで、時透、甘露寺、伊黒、俺、悲鳴嶼さんの順だ。

胡蝶は事情があるとかで不参加と聞いた。

冨岡は、「俺はお前たちとは違う」とか言いやがって勝手気ままに不参加だ。

 

俺の稽古内容は、ひたすら斬りかかって来ればいいだけの単純なものだ。

準備も不要。

隊士が来るまではひたすら鍛錬するか、他の柱と共闘の為の稽古や手合わせをする。

 

初日は伊黒と手合わせした。

共闘の為の動きも確認し、有意義な稽古になった。

二日目の昨日は、悲鳴嶼さんと共闘するべく息を合わせた。

 

三日目以降は、一人で鍛錬するかと思っていた時のことだ。

二日目の夜に、初日に手合わせした伊黒から文が来た。

何だと思えば、蓬萊が稽古をつけろとうるさいと。

明日行くだろうから、ひたすらに稽古をしてやれと書いてあった。

 

斗和が稽古に来る…?

 

斗和のことは当然気掛かりだった。

 

俺が激昂に任せ手酷く抱いてしまって以来、一度も会っていない。

あの時気を失った顔は青白く、確認した心拍は酷く乱れていた。

違うと信じ胡蝶を問い詰めれば、告げられた真実に頭が真っ白になった。

 

 

 

斗和の余命は半年。

 

 

 

彼女は、知らないうちに心臓を悪くしていた。

胡蝶が言うには生まれつきで、全集中の呼吸を使ったことにより更に悪化した。

 

俺は、初めて斗和と会った時のことを思い出した。

 

下弦の鬼を二体同時に倒した彼女は、一週間目覚めなかった。

そして煉獄との任務では、三週間も目覚めなかった。

どちらも共通するのは、土の呼吸の奥義を放った後だということだ。

 

あの技は直接見たが、驚異的な瞬発力と刀を振るう速さと何より爆発的な力が特徴だった。

その威力は、下弦を二体同時に肉塊にする程だ。

だがこの技は、相当に負担をかけるのだろう。

だから技を撃った後は必ず失神し、しばらく目覚めないのだ。

 

この技の代償は、命を削ることだったのだ。

だが例えこの技を使わなくても、呼吸を使用している限り必ず心臓を悪化させただろう。

 

あんなに乱れだ心拍でなぜ戦おうとする?

あんなに酷い状態なのになぜ刀を置かない?

なぜ鬼殺隊にとどまる?

半年あるかどうかの命をなぜ削る?

 

斗和が分からない。

何年経とうがさっぱり分からない。

 

唯一分かったのは、俺から去ろうとしたことだけだった。

 

斗和は自らの余命を知り、俺から離れようとした。

俺が斗和を切り捨てるように仕向けて。

そうすれば、俺は何も知らないままでいられる。

 

俺が斗和を失わなくてもいいようにと、そう考えたんだ。

 

俺に、失う辛さと悲しさを味わわせないようにと…心底俺を想ってやったんだ。

 

それは、彼女のあまりにも不器用な優しさだった。

 

斗和の体の鬱血痕を見た時は、怒りで気が狂う寸前だった。

冷静に考えられず、我を忘れ酷いことをした。

 

例え彼女が仕方なくでも他の男に抱かれようが、俺は斗和を心底愛している。

 

それは何があろうと変わらない。

 

それでも最初は、いきなり突きつけられた半年という数字に、何も考えられなかった。

斗和の想いを汲み、このま別れればいいのかと一瞬頭を掠めた。

 

だができるはずがなかった。

 

自らを犠牲にしてまで俺を想う斗和と、このまま別れるなど到底できるわけがない。

 

変えられない現実ならば、受け入れるしかなかった。

 

いずれ斗和を失うことになったとしても、俺は最期まで傍にいたい。

あんなにも健気で愛おしい女を、一人になどしておけない。

 

 

蓬萊斗和と共にいたい。

 

 

もう命を削ることはしないで欲しい。

斗和がどんな思いで鬼殺隊に入ったかは分からない。

境遇も知らない。

 

だがもうお前はよくやった。

 

充分すぎる程に鬼を狩った。

 

俺より先に柱になるはずだった。

 

それだけ昔から刀を振るって来た。

 

ずっと他人の為に生きてきたんだ。

もう自分の為に生きていいはずだ。

 

残り僅かな時間ぐらい、女として幸せになってもいいと…そう思うのは間違っているのか?

 

斗和と結ばれてすぐに、彼女に着て欲しくて着物も誂(あつら)えた。

次に会ったら渡そうと思いながら、ずっと渡せないままだった。

 

 

それを着て俺の隣で笑って欲しい。

 

ただ、傍にいろ。

 

それが俺の願いだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。