※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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贈り物

膳を居間に持って行き、二人は向かい合わせで食べた。

 

「天つゆは少し濃い目にしたので、大根おろしを多く入れた方がいいかもしれません。あとこれはおかわりの天ぷらです。よかったら…」

 

斗和は遠慮がちにそう言うと、実弥の様子を覗う。

黙々と食べるので、果たして美味いのかどうなのか分からずにいる。

それでもおかわりの天ぷらにも手を付けたので、斗和は自然と顔がほころんだ。

 

「…ごちそうさん、美味かった」

 

「良かったです…」

 

食べ終わり片付けをしようとすると、実弥が腕に何かを抱え居間に持って来た。

それはたとう紙に包まれた着物のようだ。

実弥に開けてみろと言われ、斗和はそっと見てみる。 

 

「わぁ…!」

 

そこにあったのは椿と白の上品な着物と、藤の花柄の寝間着だった。

一緒に渡された箱を開けて見れば、手鏡と化粧品、そして緑色の簪が入っている。

手鏡は裏面が彫刻刀で彫られており、見事であった。

簪は装飾品に疎い斗和が見ても分かる程に、高級な物である。

 

「どれもすごく綺麗…!あの、これらは…?」

 

「渡そうと思っていた物だァ…。それ、嫌じゃなければ明日から着てくれねェか…?」

 

実弥は照れて頰が赤く、言い難そうに告げる。

 

「嫌なわけないじゃないですか!…嬉しいです、とっても嬉しいです!こんなに綺麗な着物…。寝間着も簪も化粧品も手鏡もこんなにたくさん…。実弥さん、本当にありがとうございます!」

 

(嬉しい、本当に嬉しい…!)

 

斗和は、たくさんの贈り物をされたのは生まれて初めてだった。

それが実弥からというのは、本当に嬉しかった。

あまりにも嬉しくて、涙腺が緩み目に涙を溜める。

実弥はそんな斗和を見て、こんなに喜ぶならもっと早くに贈ればと思った。

気恥ずかしくて押入れに仕舞い込んだままで、やっと日の目を見ることができた。

 

「片付けは俺がしとくからよォ。お前は先に湯浴みして来い」

 

「はい、じゃあお言葉に甘えます」

 

斗和は早速、藤の花柄の寝間着を持ち風呂場へ向かった。

風柱邸の風呂に入るのも初めてだった。

これまで実弥とは幾度も肌を重ねて来たが、情事後は必ず自宅で湯浴みをしていた。

何もかもが初めてのことで、斗和は先程から心臓が慌ただしい。

 

(お風呂はうちと変わりない広さだな)

 

湯加減は丁度良く、ゆっくり浸かれば全身が温まる。

このところ落ち着かなかった斗和は、しばらくぶりに長風呂をした。

 

 

 

 

風呂から上がり寝間着を身に着けた斗和は、洗った下着を以前干した場所へ持って行き吊した。

思いの外長く入ってしまい、一言詫びなければと思った。

 

居間に戻ると実弥の姿は無く、行灯が間もなく消えそうになっている。

 

すると実弥が戻って来た。

 

「布団は敷いてある。場所、分かんだろォ?」

 

「はい、あのでも…」

 

「着物も置いてある。あとは好きに使えェ」

 

実弥はそう言うと、風呂へと向かった。

斗和は、本当に部屋に行っていいものか不安になる。

泊まるのも初めてだが、あまりに突然で予測がつかないことばかりの連続だった。

 

部屋とは実弥の私室のことなのだろうか。

斗和は暗がりを記憶を頼りに廊下を進む。

すると、灯りの点いた場所があった。

 

そこはやはり実弥の私室だった。

他に灯りのついた部屋は見当たらない。

 

「お、お邪魔します…」

 

誰もいないのにも関わらず、斗和は律儀にも一言言ってから入る。

行灯が照らし出す部屋には、文机や箪笥が置いてあった。

斗和がこの部屋に入るのは、実弥から手酷く抱かれたあの日以来だ。

 

思い出し、斗和は俯いた。

ふと見た文机の上には化粧品の箱、その横にはたとう紙に包まれた着物が置いてある。

化粧品の箱には、化粧水らしき物が入っていたので、手に取り顔に付けた。

それは香りが良く、斗和は自然と口端が上がる。

 

 

そして着物を見つめた。

本当に貰ってもいいのだろうかと、そっと生地を撫でる。

 

(高そうな着物…こんなに綺麗なの初めて。そうだ、布団…)

 

斗和は、二組並べて敷かれてある布団を見て立ち上がる。

やはり同じ部屋で寝るのは気が引けた。

 

隣の部屋に引っ張って運ぼうと、しゃがんで布団を掴む。

そのまま勢いよく立ち上がろうとしたのが悪かった。

踵で寝間着の裾を思いきり踏んづけてしまい、斗和は盛大に後方に転んだ。

 

「わぁっ!」

 

ドシーン!

 

バターン!

 

部屋中に盛大な音が響き渡る。

半分しか開けていない襖に、斗和は体当たりしてしまう。

襖は見事に外れ、隣の部屋に倒れた。

 

(あー!!)

 

斗和は慌てて倒れた襖を戻そうとするも、うまく嵌まらない。

早くしないと実弥が風呂から上がってきてしまうので、必死で直そうとする。

 

(もー!私の馬鹿!いつぞやは煉獄家の庭木の枝は折るし、今日は風柱邸の襖を体当たりして倒すし…)

 

ガタガタと襖と格闘するが、やはり嵌らなかった。

 

「…何やってんだァ?」

 

「!?」

 

斗和が咄嗟に横を向くと、頭に手拭いを被った実弥がいた。

 

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