※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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稽古とおはぎ

柱稽古が開始してから十日が経過した。

 

斗和は、その間に一旦自宅に戻り、身の回りの物や糠床や梅干しを持って来た。

糠床は毎日混ぜる必要があり、使い慣れた物が一番だった。

また、斗和の自家製梅干しは絶品である。

実弥にも一日一粒、必ず食べさせていた。

 

食事の仕度は殆ど斗和がやっており、美味しいものをと努力はしている。

だが、斗和は料理が苦手である。

実弥の方が遥かに上手く作るので、悔しくなることもしばしば。

 

それでも実弥は全て食べ、美味しかったと言う。

斗和はそれが何より嬉しかった。

 

 

 

隊士らが来れば、斗和は裏庭で一人鍛錬することになる。

心臓の事もあり、共に稽古はできなかった。

士気が高まり皆が力を付けている最中なので、斗和なりに気を遣っていた。

その代わり合間に握り飯を作ったりと、出来る限り世話をしたいと考えている。

 

実弥は絶対に出て来るなと言った。

しかし斗和は、曲がりなりにも隊士だ。

風柱邸に住んでいて、黙っているわけにはいかない。

そして斗和は、どうしても玄弥に会いたかった。

故に毎日様子を見る必要がある。

要は実弥に見つからなければいいのだ。

 

その時の為に、斗和は自宅からひょっとこの面を持って来ていた。

一般隊服を着て髪型を変え面を着ければ、稽古中の隊士に紛れることができると考えたのだ。

あとは実弥が休憩中に、こっそり隊士のところに行けばいい。

斗和の計画は水面下で進んでいた。

 

 

 

◇

「…よし、休憩だァ。心臓は苦しくねェかァ?」

 

実弥は斗和から木刀を受け取り、気遣う。

 

「うん、大丈夫。今お茶と水を持って来るから待ってて」

 

午後の稽古の休憩時、斗和は喜々として台所へ向かう。

この日は、休憩中に出そうと思いおはぎを作ったのだ。

普段は通いの隠から、甘味屋で様々な菓子を購入して貰っていた。

その中におはぎを入れるよう伝えていたが、思い立って作ることにしたのだ。

 

斗和は柱稽古の最初に、蜜璃から作り方を教えて貰った。

何度か試作をし、どうにか味を安定させることができた。

炭治郎はこしあんか粒あんか実弥に聞いていたが、おはぎが好きなのだからどちらも好きに違いないと思った。

 

最初に試作を出した時は、実弥は相当に怪しんだ。

 

『お前、これ嫌いなはずだよなァ?何で作ったァ?』

 

『いやー実は食わず嫌いというやつだったらしくて。この前食べてみたら美味しかったんです。柱稽古に行った時、甘露寺さんに作り方を聞きました』

 

飄々と答えた斗和に、実弥は首を傾げるしかなかった。

本当のことなのだが、実弥が納得しきれないのも理解できる。

斗和は、幼少期からなぜだかおはぎは嫌いだった。

家族が楽しげに作っていようと、参加せず腹が減っても食べる気にならなかった。

それを、二十歳を越えていきなり食べるようになったのだ。

斗和は自分でも不思議であった。

 

村田と会った甘味屋で、初めて頼んだおはぎは殊の外美味しかった。

蜜璃に作り方を聞いたのは、気まぐれなのかもしれない。

その時は、実弥との関係は二度と戻らないと思っていた。

なので普通ならば、作ってあげたいなどと思うはずがない。

 

今となれば聞いておいてよかったと、斗和は思った。

実弥の好きな物を作ってあげられることが、この上なく嬉しいのだ。

 

『そういうわけで、私はおはぎしか作れませんからね。おやつはおはぎですよ』

 

そう言った時の実弥の顔は嬉しそうだった。

頑なに好きだとは言わないが、それがまた実弥らしくてそんなところも愛おしい。

 

盆に布巾、茶、水、おはぎを乗せ縁側へ向かう。

 

「はいどうぞ。今日のおやつはこし餡のおはぎです」

 

「…お前は妙に嬉しそうだよなァ」

 

実弥は呆れながら黒文字を手に取る。

 

「それにしても、おはぎの餡の呼び名は物騒ですよね。半殺しに皆殺しに…。実弥さんが作ったら"よォーし、今日は半殺しにしてやらァ!"なーんて言いながら…ふふっ」

 

斗和は想像して一人笑う。

 

「想像すんじゃねェ!」

 

二人は談笑し、しばし穏やかな時間が流れた。

 

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