それから更に数日後の朝。
ついに隊士達が風柱邸に現れた。
来たのはまだ三人で、その中に胡蝶しのぶの継子である栗花落カナヲがいた。
斗和は蝶屋敷で療養中、カナヲの機能回復訓練を受けた。
喜怒哀楽を表に出さないカナヲだが、炭治郎と接するうちに少しずつ変化が現れる。
そしてしのぶの童磨討伐計画。
それを知らされている可能性が高い。
(確か風柱の稽古に行く前に、胡蝶さんから話しは聞いたはず…)
斗和の記憶が正しければ、今朝には計画を聞いているはずなのだ。
動揺しているのか、カナヲの表情は暗いと感じた。
因みに斗和は、台所の勝手口からこっそり庭を覗いている状態だ。
(カナヲさんの目って確か花の呼吸の技で…)
何も知らないはずの斗和が、あれこれ言葉を掛けることはできない。
同じ女隊士として何か…とも思ったが、上手い言葉が見当たらなかった。
斗和はとりあえず、様子を見て水と手拭いを持って行くことにした。
稽古は始まったばかりなので、休憩まで斗和も裏庭で自らの鍛錬をする。
風柱邸の裏庭は、表側に比べて三分の一程の広さだ。
それでも広く、斗和は瞬発力の訓練と技の繋ぎを何度も確認する。
しばらくして、そろそろいいかと台所で握り飯を作り始めた。
三人分をあっという間に作り終え、茶を淹れている最中に実弥が顔を出した。
「あっ、お疲れ様です。今お茶を淹れました。この薬缶には冷たい水が入っています。実弥さんは薬缶とおしぼりを…」
「全部俺が持ってく。お前はここにいやがれェ」
実弥は強引に盆を掴む。
失神するまで休みのない風柱の稽古だが、カナヲがいるので休憩を入れていた。
「いいですか、カナヲさんは胡蝶さんの継子ですよ。ぞんざいに扱ってはだめですからね。ただでさえ恐ろしい風柱の稽古に来ているんですから、労ってあげないと。他の二人にもこれ持って行って下さいよ」
「…おい。ただでさえ恐ろしい風柱ってのは俺のことかァ?」
盆を持ったまま口元を引き攣らせる実弥だが、斗和はおかまいなしに先を続ける。
「とにかく、私が出るのはだめだと言うなら、実弥さんがお世話してあげて下さいよ。お握りを食べなかったら、この梅干しだけでも食べるように言って下さいね。汗を掻いたら…」
「あー分かってらァ。女は休ませてるだろォがァ。必要以上に甘やかすんじゃねェ!」
実弥は盆と薬缶持ち、台所から庭に戻って行った。
斗和はそっと様子を伺うと、振り返って睨まれたので慌てて首を引っ込めた。
間もなく"ありがとうございます"と聞こえ、斗和は口元が緩んだ。
稽古中、隊士らは帰宅するか道場に雑魚寝するかで別れる。
厠と風呂は外にもあるので問題ない。
台所と表側の部屋はいくつか開放し、自由に使わせている。
柱の屋敷はとにかく広い。
更にたくさんの隊士が来ても問題なく使えるのだ。
当然だが、女隊士は危ないので必ず帰宅する。
その日の稽古を終えてカナヲが帰るのを見て、斗和はもやもやとし始める。
自分がここに寝泊まりしているのは、果たしていかがなものかと思った。
バレていないからいい。
それは理由にならない。
そもそもこの時代に、結婚もしていない男女が同棲するのは御法度に等しいのではないか。
(同棲?同居?風柱邸に棲み着く女?私はいいけど、実弥さんがどう思われるか…)
斗和は、バレたらどうなるんだろうと不安がよぎる。
◇
その夜、斗和は不安な思いを口にした。
「実弥さん…あの、私がここにいることがバレたらどうなるんですか?」
「アァ?今更どうもならねェだろォ。何言ってやがる」
実弥は、斗和がまた何か余計な心配をしているのだと察した。
気遣いなど無用だというのに、斗和はあれこれ気に掛ける。
「他の奴はお前を見たところで、女中と思うんじゃねェかァ?」
「あっそうか!女中ね、その手があった。じゃあ私、午前中に鍛錬をして、午後は着物で隊士のお世話をしますよ」
斗和は納得し、頷いている。
だが実弥は、何も分かっていない#斗和にため息が出た。
着物で化粧をした斗和の姿を見られたくない理由。
それは初日によく言って聞かせたはずである。
互いに顔を赤らめる小っ恥ずかしいことになったのに、なぜ斗和は未だにこんなことを言い出すのか。
「斗和、何度も言うが着物姿で堂々出て来るんじゃねェ。握り飯作ってるので充分世話してんだからよォ」
「だけど、人数が増えたら実弥さんだって大変だし…。少しでも役に立ちたいの」
上目遣いをしてくる斗和に、実弥は堪らなく口付けしたくなる。
「強情な奴…」
「ん…」
実弥は斗和を抱き寄せ、口付けした。
シュルっと帯を解き、乳房に手を寄せ揉んでいく。
実弥はふと、あることに気付く。
斗和の乳房が、僅かに大きくなった気がするのだ。
本人は、痩せたから小さくなったと言う。
そして甘露寺蜜璃のように豊満ではない。
それらを口癖のように言っているが、実際の話し、斗和の胸はごく普通である。
小さいわけでも大きいわけでもなく、丁度良いと実弥は思っていた。
何より形が良く、見ているだけで眼福なのだ。
その胸が、初日に来た時よりも弾力を増したように思えた。
「…なァ…」
「ん…?あっ…」
実弥は人差し指で先端を弄りながらも、揉む手は止めない。
器用に斗和の左乳房を堪能している。
「乳、前よりでかくなってるよなァ?」
「えっ!?…そ、そうなの?自分じゃ分からないけど…あんっ」
実弥は満足そうに右の乳房にも吸い付いた。
斗和は、柱稽古中に肌を重ねることはないと思っていた。
道場とはいえ夜も隊士がおり、実弥はこういうことはきっちり分けると思い込んでいた。
しかし実際は違った。
一緒に過ごす時間が残り僅かという理由もあり、実弥は毎夜斗和を求める。
月のものが始まった際は、実弥はあからさまに残念そうにした。
それを見た斗和は、その間は口や手で奉仕し続けた。
実弥の予想通り、斗和は尽くす女であった。
使えない下半身以外の全てを使い、実弥を悦ばせたのだ。
実弥は一日中隊士をなぎ倒し疲れているはずだが、それを微塵も感じさせない。
正直柱の体力を甘くみていた斗和は、毎朝起きるのがつらかった。
それでも想い人に愛される日々は初めてのことで、斗和は堪らなく幸せであった。
ずっとこの日常が続きますようにと、実弥も斗和も何度も願った。