※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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21歳⑫【幸せの終焉】
ある隊士は風柱邸で幸せの音を聞いた


黄色い頭の隊士・我妻善逸は、げっそりと頰をこけさせ風柱邸に向かっていた。

 

善逸は蛇柱邸で酷い目に遭ったのである。

ぐねぐね曲がる太刀筋に、相当苦戦させられた。

雷の呼吸は直進型なので、蛇行する動きを追うのは苦手だった。

善逸は何度目かで、できなければお前も括り付けると脅された。

それだけは絶対に避けたかった。

 

どうにかこうにか合格し、最悪を免れたのが先程のことである。

括り付けられた隊士らじゃなくてよかったと思ったが、蛇柱のネチネチ攻撃は恐ろしすぎた。

 

(あー恋柱の稽古は天国だったなあ)

 

善逸は、その前の恋柱邸はよかったと思いを馳せる。

変わった服にへんてこな踊り、恋柱と向き合って柔軟。

夢のような時間だったなあと思いながら、緩みきった顔で蛇柱邸に行くと奈落に真っ逆さま。

開口一番ボロクソに言われ、地獄のようなネチネチ攻撃に晒された。

稽古をする前に精神的に打ち砕かれ、更には括り付けられた隊士からの怨念も感じた。

 

拷問に等しかった。

 

どうにか合格を貰い次の風柱邸に向かっているが、善逸は嫌な予感しかしなかった。

風柱はどんな人物かは知らないが、男はだめだと思った。

 

善逸は癒しが足りないと嘆く。

 

(禰 豆子ちゃあーん!早く会いたいよぉぉぉー!)

 

善逸は自分に手を振る禰 豆子の姿を思い浮かべ、半泣きでよたよたと歩く。

 

 

 

 

そして風柱邸に到着すると、門を跨ぐように隊士が突っ伏しており驚いた。

どうしたと声を掛けると、隊士は呻きながら起き上がる。

 

「か、風柱は一等やばい。恐ろしい…鬼より恐いからな!俺はもう生き抜ける気がしない…」

 

恨み事なのかブツブツ言い、最後に休憩がないことを告げてきた。

 

善逸はもう帰りたいと思いながらも庭に行くと、呻き声に雄叫びが聞こえてくる。

 

「!?なんだよこれぇー!!」

 

ボコボコに打ちのめされる隊士らの姿は、まさに阿鼻叫喚地獄となっていた。

 

次々向かって行く隊士らをなぎ払い、徹底的に打ちのめす男。

完膚なきまでに一刀両断する白銀髪の男は、善逸に気付いて突進して来た。

 

「ギャーッ!!」

 

準備もままならずに打ちのめされ、善逸はあっという間に地面に転がった。

起き上がったら終わりだと思い、善逸はそのまま突っ伏していた。

すると、ガシッと頭を掴まれ恐ろしい顔で凄まれる。

 

「死にたくねェならさっさと立てェ!」

 

「ギャアアアアアア鬼!!」

 

「うるせェ!」

 

「ぐえっ!」

 

善逸は、振り上げられた拳が頰に入りやっと気付いた。

この男は前に蝶屋敷に来ていた。

昼前だったか大声がし起きてみれば、この白銀髪の男が蟲柱を探していて裏山にいると教えた。

 

鬼のような恐ろしい形相だった。

昼間なのに鬼が出たと思ったくらいだからなと、善逸は頷く。

 

 

 

鬼でなく人間だった。

 

なるほど、風柱だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや鬼じゃねえかあ!!

 

 

 

 

 

善逸は内心で叫んだ。

 

 

 

───────

──────

数刻後。

 

殆ど失神している隊士に混じり、善逸も半目で突っ伏していた。

立ち向かっていく隊士もいなくなり、一区切りついた状態だ。

 

血も涙もない鬼のような風柱は、どこかに行きいない。

善逸はぼんやりと縁側を見ていると、聞いたことのある音がした。

すると、着物姿の女が横切りながら庭に目を向けた。

 

「!」

 

幻かと目を擦り縁側を見れば、既にいない。

 

善逸は胸がザワザワとし始める。

確かに聞こえた音だ。

 

(あの時の、あの人のものだ…)

 

以前よりも悪化していることは、すぐに分かった。

 

善逸は確かめるべく、縁側で履物を脱ぎそっと中に入った。

音を辿り廊下を進むと、茶のいい香りがする部屋があった。

座卓には湯気のたつ湯飲みが二つと、片側におはぎの皿がある。

 

すると、一層大きくなった音と共に着物姿の女が現れた。

 

「ごめんなさい、うっかりして。はい、水とおしぼり…!?」

 

「!」

 

盆を持った美しい女が、目を見開いて善逸を見ている。

大きくなった音は彼女から発せられていた。

 

「我妻君…」

 

善逸はそう呼ばれ、一瞬固まった。

発せられた声と顔には覚えがあった。

疑惑は確信に変わる。

 

「え…?えっ?…斗和さん!?斗和さんなの!?」

 

気まずそうに苦笑いする女は、善逸の予想通りだった。

 

蓬萊斗和。

 

列車での任務に同行していた隊士で、元土柱だ。

そして善逸が何度か聞いた、乱れた心音の持ち主である。

その斗和がなぜここにと疑問が湧く。

着物姿で化粧をして、なぜ風柱邸にいるのか。

 

今は柱稽古中で、全隊士は各柱の元で稽古をしているはずだ。

斗和は隊士を辞めたのだろうか。

 

いやそれよりもだ。

善逸は何よりも斗和の姿に釘付けになる。

 

(綺麗すぎるよ!色香が漂う大人の女性って、まさに斗和さんのことー!いつか禰 豆子ちゃんもこんな風に…)

 

善逸は斗和の色香に当てられ、クラクラしてきた。

それでも気を取り直し、口を開く。

 

「どうしてここに…?隊士を辞めたんですか?」

 

斗和は黙って首を横に振る。 

善逸は斗和の心音が以前よりも乱れ、弱くなっているのに気付いていた。

 

「斗和さん!心臓がもう…」

 

「大丈夫…分かっています。稽古、一緒にできなくてごめんなさい。せめて皆のお世話はしようと思うのだけど…」

 

「だからって!こんな血も涙もないおっさんの屋敷で働かなくても…い、っ!?」

 

いいのに、と言おうとした善逸の頭が後ろから掴まれる。

ゆっくりと振り返れば、そこには鬼の形相をした風柱が立っていた。

 

「!?」

 

「てめェ…勝手に入って来るとはいい度胸じゃねェかァ!来い!!」

 

「ギャアアアアア!斗和さん助けてえ────っ!!」

 

強制的に引っ張られていく善逸は、両手を伸ばして斗和に助けを求める。

 

「ちょっと実弥さん!乱暴すぎますよ。我妻君は、煉獄さんとの列車任務で一緒だったんです。せっかく来たんだから、一緒におはぎを食べて休んで貰いましょうよ。ね?」

 

「食べます食べます!おはぎ食べます!」

 

(斗和さん、まるで仏様だあー!)

 

そう思った善逸だが、妙な音に気付く。

 

「誰がこいつに食わすかァ!黄色頭ァ、てめェも甘えくさってんじゃねェ!クソがッ!」

 

「たくさんあるんだからいいじゃないですか。じゃあ終わったら出しますね。我妻君、もう少し頑張って下さいね!」

 

引き摺られる善逸に声を掛けた斗和は、居間に戻って行った。

 

その姿と自分を引っ張る風柱を交互に見て、善逸は驚愕する。

 

(…なんなのこの音!この二人まさかそうなの!?そういうことなの!?血も涙もない風のおっさんと綺麗な斗和さんが…嘘だろー!!)

 

 

 

 

 

 

 

その日稽古が終わった風柱邸では、隊士達におはぎが振る舞われた。

 

皆、泣きながら食べたとかなんとか。

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