※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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伝えたいこと

善逸が稽古に来てから数日が経った。

 

斗和は、変わらず午前中は一人で鍛錬していた。

しばらく実弥とも打ち合いをしておらず、そろそろ一度本気で手合わせをしたいと思っている。

今の力量と、どれだけ戦えるのかを把握する必要があった。

 

しかし、薄っすら分かっていた。

技の威力が日増しに落ちていること、心臓が苦しくなる時が増えたこと。

実弥の前ではどうにか隠しているが、刀を振り技を撃つのも限界を感じていた。

連撃は勿論のこと、一つ撃った後は呼吸を整えなければ、次の攻撃はできなかった。

 

斗和は無限城に行っても、倒せるのは雑魚鬼だけだと思った。

それすらもどうなのか危ういくらいである。

隊士でいる限り、否応なしに無限城に取り込まれる。

 

そうすれば実弥とはもう会えない。

 

斗和が無限城で生き抜くことは不可能だった。

 

 

 

胡蝶しのぶより伝えられていた余命は、間もなく期限を迎えようとしていた。

 

 

 

 

◇

その日の午後も、斗和は通いの隠と共に握り飯を作っている。

朝、昼、と来る隊士には目を配っていた。

今のところは炭治郎も玄弥もまだ来ていない。

 

善逸は毎日逃げ出すことばかり考えており、脱走の常習犯として実弥は目を光らせていた。

斗和は合間にこっそり励ましたりしているが、それも効果はない。

その都度実弥にバレ、結局二人共怒られるのだ。

 

今までは実弥が席を外した際に出たり、面を着けて一般隊士に紛れ出て行ったりしていた。

だがことごとく発見されるので、もう絶対に出てくるなと実弥からきつく言われてしまった。

 

着物姿でもなんでも、とにかく絶対にだめだと実弥は譲らない。

それは可愛い独占欲なのかもしれないが、斗和はこれから来る玄弥にはどうしても会う必要がある。

どうにかしなければと考えていた。

 

玄弥は、実弥の稽古はしないように思えた。

するのかもしれないが、その描写が無かったので分からない。

分かっているのは、玄弥が実弥を探し家に入り、廊下で話しをするということだけだ。

炭治郎が目撃するのもここで、目潰しをしようとした実弥を阻止する。

 

話し掛ける想像をするも、斗和は顔を顰めた。

もし実弥に、玄弥と話しをしているのを見られては言い訳の仕様がない。

なぜ無関係で何も知らないはずの斗和が、玄弥と顔見知りなのか。

実弥は不信感を抱くはずだ。

やはり、ここで話し掛けることはできないと判断した。

 

炭治郎も家に入って来るので、そこから実弥が納戸を壊して外で乱闘する。

その後に接近禁止命令が出る。

 

(となれば乱闘騒ぎの後しかない…)

 

 

 

 

───────

──────

その翌日のことだった。

 

斗和が寝室の掃除をしていると、何やら大声で話し声が聞こえてくる。

まさかと思いこっそり行ってみれば、炭治郎の後ろ姿があった。

 

(あっ!)

 

慌てて廊下の影に隠れた斗和は、耳を澄ませる。

 

不穏なやりとりが聞こえ、突然大きな音がして納戸が壊された。

廊下が明るくなり、喧騒は遠ざかる。

 

皆が外に出たのを見計らい、斗和は壊れた納戸の横から覗き見る。

 

そこには、文字通り乱闘になっている実弥や炭治郎、玄弥の姿があった。

 

斗和は玄弥が帰る時に声を掛けるべく、素早く風柱邸を出た。

塀の角で待っていれば通るだろうと、ひたすらに待った。

 

他の隊士との稽古はすぐ再開される。

だが乱闘のせいで、炭治郎と善逸と玄弥は今日で終わりなのだ。

 

(岩柱邸での稽古は何日間…?)

 

斗和は考えても分からなかった。

それが終われば、本部・産屋敷邸が襲撃される。

 

(終わりが近い…お願い、もう少しだけ頑張って…!)

 

胸に手を当て、斗和は祈る。

 

 

 

斗和はしゃがみ込み、ぼんやりと考え込んでいると、脇を通る人影に気付く。

 

咄嗟に顔を上げると、玄弥の姿があった。

俯いており、その足取りは重い。

 

「…玄弥君!」

 

斗和が呼ぶと玄弥は振り返った。

じっと斗和を見ている。

 

「あ、この格好じゃ分からないですよね。私、蓬萊斗和です」

 

玄弥は目を見開き、驚愕している。

その顔は実弥によく似ていた。

 

「え…ここで柱稽古?…さっきまでいなかったよな?ここは兄ちゃんの…」

 

玄弥は不思議だった。

兄である風柱の屋敷で、これまで何度か会った斗和と会った。

なぜ彼女は着物姿で兄の屋敷にいるのか。

なぜわざわざ声を掛けたのか。

 

「玄弥君、なんだか一回り成長しましたね。玄弥君がお兄さんを守りたい気持ち、きっとお兄さんも分かっています。だけどお兄さんはそれ以上にあなたを守りたいんだと思います」

 

「………」

 

「玄弥君もお兄さんも、お互いを思いやる気持ちが強いんです。それだけ優しすぎるんですね…」

 

斗和は滲んだ涙を拭いた。

玄弥は何も言わず、ただ斗和を見つめている。

 

「いきなりすいませんでした!最後にもう一つだけいいですか?」

 

「!」

 

斗和は玄弥の返事を聞かず、その大きな体を抱きしめた。

 

「ありがとう」

 

一礼し、斗和は去って行った。

 

玄弥はそこで何を思い感じたのか。

 

変えられない未来を思い、斗和は瞼を伏せるしかなかった。

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