※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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迫る決戦

隊士が完全に来なくなり、柱同士の手合わせや共闘稽古が行われるようになってすぐだ。

 

その日の昼間のこと。

斗和は体調がかなり良く、実弥と稽古をしていた。

 

すると一羽の鴉が飛んで来た。

それは水柱・冨岡義勇の鴉だった。

斗和はてちてち歩く鴉を見て、名前は何だったかと考える。

 

「あなたは冨岡さんの鴉の…えっと…寛三郎さんですよね?」

 

「ソウ、ジャ…」

 

当たっていた、と斗和は内心で喜ぶ。

 

「高齢と聞いています。頑張ってらっしゃるんですね。うちの令和は、寛三郎さんに比べたらまだ雛のようなものです。どうぞ末永くよろしくお願いします」

 

斗和が頭を下げると、隣にいた実弥は怪訝な顔を向ける。

 

「何で鴉に敬語で話してんだァ!鴉を子供みたいに扱ってんじゃねェ。で、何か用かァ?」

 

「…ナンジャッタカ、ハテ?」

 

てちてちと庭を歩く寛三郎は、右に左に首を傾げる。

 

「伝令の鴉のくせに忘れんなァ!斗和、お前が話し掛けたからだぞォ」

 

「困りましたね、文があるわけじゃないし…」

 

斗和はそう言いながら、もしかしたらあの手合わせではないかと思った。

 

ドクンドクンと動悸がし始める。

 

「もしかして、手合わせじゃないですか?柱稽古は終盤だし、冨岡さんも手が空いているんでは?」

 

「…ソウジャ、手合ワセ。義勇ヨリ不死川ニ手合ワセ」

 

(ついに来た…!)

 

寛三郎はそう言うと、飛び立とうとする。

 

「待って下さい!返事がまだです」

 

斗和が引き止めると、寛三郎は空中で旋回した。

 

「冨岡に明日行くと伝えとけェ。忘れんなよォ!」

 

実弥は寛三郎に向けて声を張り上げた。

寛三郎はカァ!と鳴き、そのまま飛んで行った。

 

「そういえば、冨岡さんは柱稽古に不参加だって聞きましたよ。いつの間にか参加してたんですね」

 

「最初は全くやる気が無くてよォ。俺はお前達とは違うって言いやがって…何言ってやがんだか。何の気まぐれか知らんが、しれっと参加してやがる。分からねェ奴だぜェ」

 

実弥は呆れていた。

それでも、義勇から手合わせしようと言われるとは思わなかった。

もう隊士も来ないので、行くことにしたのだった。

いけ好かないと思っていても、同じ目的の為に刀を振るう仲間だ。

いずれ共闘する時に備えることにした。

 

斗和は実弥の横顔を見て、目を細めた。

ついに明日の夜、本部・産屋敷邸が爆破される。

耀哉とその家族三人の死、珠世による無惨への毒。

柱が集結し、全隊士が鳴女により無限城に取り込まれる。

 

ついに最終決戦が始まるのだ。

 

(間もなくだ…)

 

明後日の夜明けまで心臓が持つよう、斗和は祈った。

 

 

 

◇

その夜、斗和は自らの得意料理ばかりを作った。

実弥はおかわりをした。

 

「卵焼きならまだありますよ。揚げ出し豆腐もですか?勿論あります」

 

「それも食う」

 

「はい、食いしん坊さん!ふふっ」

 

「斗和!」

 

顔を赤くし睨む実弥を見て、斗和は笑う。

何日も過ごした幸せな日常は、明日の昼で終わりを告げる。

斗和は涙が出そうになるのを堪え、とにかく笑った。

 

 

 

 

先に風呂に入った斗和は、時間をかけ丹念に頭や体を洗った。

風呂上がりには薄く化粧を施した。

 

風柱邸に柱稽古に来た夜、実弥から着物と共に貰った化粧品だ。

それらは大分減っている。

化粧品と簪、数える程しか着たことのない着物。

遅れを取り戻すかのように身に纏ったそれらは、斗和の宝物だった。

 

斗和は、最期の思い出を精一杯作ることにした。

 

手鏡に写る顔は、何度見ても見慣れない姿だった。

実弥が綺麗だと言った斗和の姿だ。

 

「さよなら…」

 

斗和は鏡に向かい呟くと、文机に伏せた。

 

立ち上がり、部屋を出て縁側に向かう。

星を見たくなり、夜空を見上げた。

輝きを放つ星々は、今にも降り注がんばかりであった。

 

「斗和…?部屋にいねェから心配した。どうしたァ?」

 

斗和が横を向くと、実弥がいた。

黙って微笑むと、実弥からごくりと喉を鳴らす音がした。

実弥は斗和を抱き締め、その頭を何度も撫でる。

 

いつ心臓が止まってもおかしくないことは、互いに分かっている。

二人の間に言葉は無くとも、通じ合っていた。

 

斗和は実弥に感謝し、"部屋に戻りたい"と告げた。

 

 

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