無惨が完全に復活し、城での戦いは鬼殺隊にとって不利だ。
愈史郎が城を操っていた上弦ノ肆・鳴女を乗っとり、無限城を倒壊させる事に成功。
無惨を地上に引き摺り出した。
城内にいた全隊士も地上へと出た。
死亡者、生存者問わずだった。
斗和の体は、辛うじて瓦礫の端に投げ出された。
そこへ駆け付けた隠の一人が、斗和を発見する。
「…蓬萊さん…?蓬萊さんっ!」
皆と違い野良着姿なのですぐに分かったのだ。
そして発見したのは、柱稽古中ずっと風柱邸に来ていた隠だった。
揺さぶるも全く動かない斗和。
呼吸や脈を確認するも何も感じなかった。
「ううっ…蓬萊さんっ…」
隠は泣きながら斗和の体を引っ張り上げ、建物の陰に横たえた。
無惨との死闘が繰り広げられる中、斗和の魂はゆっくりと肉体から抜ける。
導かれるように皆が戦う場所へ向かった。
斗和は隠の後藤を見かけ、その後ろ姿にそっと手を伸ばす。
(後藤さん…)
手は後藤の体をすり抜けた。
(私…)
足の赴くまま、斗和はその場所へと向かう。
無惨の猛攻は止まず、柱達の必死の攻撃も押されていく。
斗和はただ見ているしかできない。
脳裏に蘇る記憶にある死闘、まさに同じ戦いが繰り広げられている。
たった今無惨の強力な攻撃を喰らい、柱は建物に叩き付けられ皆意識を失っている。
腕を失い、足を失い、皆既に戦える状態ではない。
それでも斗和にはどうすることもできない。
歯痒さと悔しさとつらさに、胸がぎゅうぎゅうと締め付けられる。
涙は溢れ、頬を伝い消えていく。
無惨が巨大化し、柱達は最後の攻撃を繰り出す。
全身血だらけでも実弥は型を撃つ。
「しぶてェんだよ糞がァアア!!さっさと塵になりやがれェ!!」
皆が力を振り絞り、何度も何度も攻撃する。
そしてついにその時が訪れた。
巨大化した無惨が陽光に焼かれ、断末魔を上げついに崩れ消えたのだ。
それをしかと見届けた斗和は、倒れ動かない実弥に目を向ける。
斗和はふわりと浮き上がり、実弥の傍へ一瞬で移動した。
隠らが必死で手当てをする中、その体を包み込む。
だが、幽体の為に触れることはできない。
はらりと、斗和の両眼から涙が溢れ落ちる。
おそらく今実弥は、死の淵で玄弥の姿を見ている。
そして母と共に地獄へ行こうとし、父に阻止されているはずだ。
(実弥さん…起きて…頑張って…)
斗和は願った。
すると実弥はうっすら目を開ける。
「あっ!」
「あっ!意識戻った、不死川さん起きた!!」
「くそが…」
絞り出したその声を聞き、斗和は安堵し微笑んだ。
そして眩い朝日が斗和を包むと、その姿は消えた。
手拭いだけが一枚、残されていた。