※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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蝶屋敷

鬼は日中活動できず、人目を避けて山に潜んでいる印象が強い。

だがその実、町中に堂々潜んでいたりもする。

そのため任務は町中でというのも多かった。

 

斗和は山を走り抜けるのが得意なので、足場が悪かろうが遠方であろうが苦にならない。

むしろ、周囲を気にせず戦える環境の方がいいと思っていた。

 

生憎この日は町中での任務で、出会い茶屋に鬼が頻繁に出るということだった。

出会い茶屋といえば、所謂男女が逢い引きし関係を持つ場所である。

必ず男女がいるはずなのに、被害に遭うのは女ばかりだというから不思議だ。

 

 

 

そんなわけで斗和は一人、蕎麦屋の二階にある出会い茶屋に潜んでいる。

行灯がぼんやりと照らす部屋を、押し入れからこっそり伺う。

潜んでいる斗和以外部屋に誰もいないのに、果たして鬼は来るだろうか。

 

(それにしてもどうして女だけ狙うのかな?)

 

女に恨みがあるとすれば、鬼は男の可能性が高い。

それか、同性が妬ましい気持ちが強いならば、鬼は女だ。

 

 

 

 

 

──────

─────

夜もとうに更けた頃、鬼が現れた。

その鬼は女だった。

自分の容姿が醜いのを認めたくなくて、容姿のいい女たちを殺して食っていたのだ。

今まで殺した女たちがどんな容姿かは知らない。

単純に睦み合う男女が妬ましかったのではないかと、斗和は思った。

 

当の女鬼の容姿は、言うなればおたふくだった。

斗和はその鬼に醜女(しこめ)と言われた。

左頰から耳まではしる、横一文字の傷を見てのことだろう。

 

醜女と呼ばれ、斗和は少なからず落ち込むも慣れてはいた。

 

 

"私の顔はとても醜い"

 

 

斗和は、傷を負ってからそう思っていた。

人前に晒していい顔ではないことも、女としてあり得ない傷だということも全て分かっている。

 

鬼は自分より醜い女だと判断し、上機嫌になり襲ってきた。

結局、女は必ず殺すのは分かりきっていたので、斗和も応戦した。

まるで平安時代の女のように髪が異様に長い鬼だったが、その長い髪こそが血鬼術だった。

髪全てが毒針で自在に操る為、斗和は喰らわぬよう防戦一方となった。

 

行灯を倒した際に手のひらに火傷を負い、右足首を強く捻ってしまう。

それでも毒針を一本も喰らわず倒せたので、斗和は安堵した。

 

 

 

◇

自宅に火傷の薬がなかったのを思い出し、斗和は藤の家に寄ろうとした。

だが、鴉の令和が案内したのはかの有名な蝶屋敷だった。

 

蝶屋敷は蟲柱・胡蝶しのぶの屋敷で、隊士の治療や機能回復訓練をしている場所だ。

物語内での主はしのぶだったが、今は姉のカナエが主だと思われる。

カナエは十七歳か十八歳で亡くなる。

助けられないのに会うのは、斗和にとって心苦しかった。

 

怪我は大したことはないので寄らずに帰ろうと、斗和は踵を返す。

ところが角を曲がった時、誰かにぶつかった。

 

「わっ!」

 

右足首を庇うように、塀伝いに歩いていたのが悪かった。

ぶつかった人物は斗和より遥かに小柄で、髪に大きな蝶の飾りをしていた。

 

斗和は驚き、言葉が出ない。

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

斗和が知っている姿よりかなり幼い、胡蝶しのぶである。

 

「あ、はい、大丈夫です!こちらこそ前方不注意ですみませんでした」

 

斗和は顔の前でブンブン手を振り、詫びる。

こんな偶然があるのかと思いながら、すぐに去るつもりだった。

だが足を庇っていたのを見つけられ、手当てをして行くよう進言された。

 

斗和は丁重に断った。

しかし斗和の手の火傷にも気付いたしのぶは、半ば強引に屋敷に連れて行った。

 

 

 

 

◇

昔の病院はこのような感じなのかと、斗和はそこかしこを見回す。

しのぶは、診療室と書いた部屋に斗和を案内した。

大正時代では違和感はないが、先の時代を生きてきた斗和にとって、殆ど見なくなった物ばかりだ。

木の机や椅子、全てが珍しく目移りしてしまう。

すると、しのぶはクスッと笑い口を開いた。

 

「そんなに珍しいですか?」

 

斗和は素直に頷くと、しのぶは「蝶屋敷は初めてなんですね」と微笑む。

しのぶはまだ十三歳の少女だが、斗和は美しいその顔に見惚れてしまう。

 

 

しのぶの手は、野良仕事ばかりの斗和とは正反対で白かった。

斗和は、手当てを受けながらぼんやりと見る。

しのぶはこの先、小さな体に毒を取り入れる。

そうせざるを得ない事件が起きるからだが、そこまでできる精神の強さに斗和は感服していた。

 

だがやはりしのぶの最期を知る斗和の目には、痛々しく映った。

 

(こんなに綺麗な姉妹が鬼殺隊にいることが不釣り合いだよ…)

 

斗和はふと、先程倒した鬼から醜女(しこめ)と言われたことを思い出す。

 

元から醜いのもあるのだろうと思った。

この物語に出てく人物は殆どが見目麗しい。

斗和の顔の傷は余計に際立つ。

 

捻った右足首をきつく縛られ、しばらくは気を付けるように言われた。

火傷用の軟骨も貰い、斗和は蝶屋敷を後にした。

 

カナエは不在で、彼女は柱に就任しこの時は本部・産屋敷邸に赴いていた。

 

 

 

 

───────

──────

出会い茶屋での任務から五日後。

斗和は隣県・埼玉東部での任務の為、列車で移動していた。

 

埼玉の東根山には元岩柱の師がいる。

斗和は隊に入ってから一度も帰っていないので、元気にしているかなと思いを馳せた。

近くならば帰りに寄ることもできるが、東根山は西部にあるので今回の任務地とはかなり離れている。

 

斗和は昨年あたりからかなり忙しくなり、ろくに文も書いていなかった。

 

 

 

 

───────

──────

しばらくして目的地近くの駅に降り立つと、後ろから声を掛けられる。

 

そこにいたのは、村田だった。

 

「わ!村田さん!どうしてここに?」

 

「聞いてないの?これから俺と蓬萊さんと、あともう一人とで任務だよ。もう一人は別任務から直行するらしい」

 

村田の言ったことは初耳で、斗和は訝しむ。

共同任務の時は、文に【他二名と】などと明確に記載してくる。

だが今回は何も書いておらず、単独任務だとばかり思っていたのだ。

斗和は、嫌だな…という気持ちを全面に出した。

それを見た村田がぼやく。

 

「ちょっと、なんで嫌そうな顔するんだよ?俺と任務するの嫌なのかよー!」

 

慌てて否定するも、村田は恨めしそうに斗和を見ている。

まずいと思い、咄嗟に飯は食べてきたか話しを逸らす。

村田は食べ損ねたらしく、斗和は持参していた握り飯をあげた。

 

「これ、二個余ってるからよかったら食べて。私はもう食べてきたから」

 

「いいの!?ありがとう!」

 

歩きながら一口食べた村田は「おいしい!めちゃくちゃおいしい!」と、嬉しそうに食べる。

斗和は、村田が空腹だからそう感じるのだと思った。

 

あっという間に二個食べきった村田は、今度斗和の作った飯を食べたいと言ってきた。

私の作ったものを?と斗和がまたもや怪訝な顔をすると、村田は顔を顰める。

 

「ほらまた!なんでそんなに嫌そうにするの。俺、嫌われてるのかよ?」

 

うじうじといじけてしまう。

斗和は違う違うと否定し、じゃあ今度食べにきてねと社交辞令を述べ任務に向かった。

 

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