助っ人任務
斗和は鬼殺隊五年目だ。
さすがに数年もいると、見知った顔も増えてきた。
一軒家を与えられてから庭で鍛錬することが多くなったが、共同鍛錬場の近くを通る時は必ず寄っている。
最初は恥ずかしさから一般隊服で行っていたが、それも面倒になりすっかり今の野良着隊服でどこへでも行っていた。
この日も道場にある木刀を借りて振っていると、手合わせを申し込まれその流れで何人か顔見知りができた。
ほぼ男ばかりとの手合わせだが、話し掛けてくるのが女の隊士だと斗和も親近感が湧く。
大抵はこの顔の傷に驚き同情されるが、それも慣れている。
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ある日、斗和が担当の警備区域を巡回していた時のことだ。
深夜からの共同任務前に、先に警備をしようと足早に見て廻っていた。
途中で鴉が現れ、隣の町で鬼が暴れているからすぐに来てくれと言われ走る。
斗和が到着したそこは、大きな神社だった。
神主の姿をした鬼を囲うように隊士が三人いる。
隊士らは鬼から距離を取り刀を構えていた。
鬼の背後、扉の開いた社の中に見えたのは、血に塗れ折り重なる人間の姿だ。
さしずめ神主の姿に化け、祈祷をするとでも言っておびき寄せ殺したのだと思われる。
神主に化けたのか、神主が鬼になったのかは分からない。
大きな神社が故に、人も多数集まるので大惨事になってしまったのだ。
斗和は応戦しようとする隊士の間に入り、鬼の腕を斬り落とし離れる。
そして隊士に、早口で鬼の能力や血鬼術を聞く。
隊士は参ったと嘆く。
(だから鬼から離れているのか)
神主らしい血鬼術だが、
長距離攻撃を仕掛けるか、耳を塞ぎつつ大声を出し祝詞を掻き消すかだ。
一番確実に倒せるのは、大声を出しその間に攻撃することだと思われる。
この手の音を操る鬼は、戦闘が長引く程こちらに不利だ。
耳は本人の知らないうちに小さな音も拾っている。
実はそれが相手の術で、知らないうちに嵌まっていた…というのがよくあるからだ。
斗和は、三人の隊士それぞれに小声で
『合図をしたら鬼に向かい、日頃の鬱憤を大声でいいと言うまで途絶えさせず喚くこと。歌や罵詈雑言、何でもいいからひたすら叫ぶように』
と告げ、鬼に突進した。
「今です!」
すかさず
後方から一斉に隊士たちの大声も聞こえ、鬼の
それでも迂闊に近付くのは危険なので、間合いよりかなり離れたところで技を撃つ。
─土の呼吸 玖ノ型
斗和の技は鬼の胸を斬り裂いたが、頸には当たらない。
僅かに距離が足りなかった。
鬼は斗和がそれ以上近付けないと思い、ニヤリと口角を上げる。
「一斉に大声とは考えたものだが、いつまで持つか?離れていては俺は殺せないぞ」
至極ゆっくりと声を出さずに口を動かす鬼。
狐のような顔をして、長い舌を出し血の付いた自らの口元を舐める。
直後、持っていたお祓い棒・
斗和は後方に跳びながら左腕で庇ったが、手の甲から肘まで無数の刃に斬り裂かれてしまう。
─土の呼吸 玖ノ型
右腕で撃った技は先程より倍に伸び、鬼が振り回す
それを見ていた隊士の二人は、叫ぶのを止め斗和に駆け寄ろうとする。
「やめるでねえ!叫べ!(やめるんじゃない!叫べ!)」
「「!?」」
頸だけになった鬼は、斬られる前からずっと
斗和はその口を素速く真横にぶった斬ると、ボロボロと壊れ消えていく。
少しではあるが、斗和は
血鬼術がこの鬼にだけ有効ならばいいが、もし他の鬼にも有効ならば非常にまずい。
斗和はこの後すぐに共同任務が入っていた。
攻撃が効かないならば役に立たない。
「すみませんでした!頸を斬ったから油断してしまいました。腕は大丈夫ですか?」
叫ぶのを止めなかった背の高い隊士が、いち早く謝罪する。
すみません、すみませんと他二人が続けて謝る。
「…はい。声で血鬼術を使う鬼は、頸を斬っても油断なりませんから気を付けて下さい。こちらも怒鳴ってしまい、すいませんでした」
頭を下げる斗和に、三人は顔を見合わせあたふたする。
ではこれでと、斗和はその場から去ろうとした。
だが背の高い隊士が左腕をと言うので、手拭いで縛って貰うことにした。
他の隊士二人は事後処理の隠を呼んだり、境内の中の検分をする為その場からいなくなった。
残っている背の高い隊士は、手拭いで斗和の腕を縛りながら口を開いた。
「さっきの技、細かい土の粒子が見えたんですが何の呼吸なんですか?」
「あれは土の呼吸です」
「土の呼吸……俺、初めて見ました!派生呼吸ですか?」
「はい、岩の呼吸からです。私の育手は元・岩柱なので……」
「任務ダ次へ急ゲ!」
話している最中、鴉の令和が次の任務を急かした。
斗和は話しを中断し、日輪刀を背負う。
「すみません、助かりました。手当てありがとうございます。では失礼します」
◇
斗和が去った後、隠が数人現れ事後処理をしていく。
残った三人の隊士が集まる。
「変わった人だったな。止めるでねえって訛りか?ちょっと面白かった」
「あれ野良着みたいだったけど隊服か?日輪刀も変わってたな」
「お前ら反省してんのかよ!?あの人最初に言ってたからな?いいと言うまで叫べって。あの人がいなかったら俺達どうなってたか…!」
手当てをした隊士は、軽口の二人を叱責し先に行ってしまった。