※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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村田の来訪

気合いを入れて鍬を振るう雇い主の姿を見た夏世は、そっとため息を吐いた。 

 

夏世が管理を任されている畑で一心不乱に鍬を振るうのは、この家の主・蓬萊斗和だ。

 

陽もとうに高く昇る頃、任務から帰宅した斗和は突然畑を耕し始めた。

いきなりどうしたんだろうとは思った。

だが何かを思い詰めた表情で、人を寄せ付ける雰囲気ではなかった。

 

左腕に包帯を巻いて帰宅した時以来、斗和は様子がおかしかった。

 

焦っているような心ここにあらずで、ろくに眠らず動いていた。

何かあったんだろうと、夏世は思っていた。

だが一般人である夏世が、鬼殺隊のことを聞いたところで何かできるわけではない。

安易に首を突っ込むべきではないと思い、何も聞かず過ごしていた。

 

だがやはりどこか無理をして笑い、思い詰めた顔をする斗和の姿に、どうにかならないものかと考えていた。

 

 

 

 

◇

それから一週間後の昼近くのことだ。

共同鍛錬場から帰ってきた斗和は、見知らぬ隊士を連れて来た。

夏世が斗和の屋敷に通うようになり、初めてのことである。

いきなりで戸惑ったが、斗和に話しをする隊士がいたのだと安堵した。

 

畑は家の裏にあるので、呼ばれない限り来客には気付かない。

二人はわざわざ夏世のいる畑まで来て経緯を説明し、紹介した。

 

「こちらは村田さん。私と同い年なの。鍛錬場で偶然会ったから、一緒に昼餉をと思って連れて来たんだ。で、こちらは私達より一歳上の小野寺夏世ちゃん。うちの畑を管理してくれているの。近くの藤の家から通ってるんだよ」

 

夏世は衝撃を受けた。

 

流暢に標準語を話す斗和の姿は、これまた初めてだった。

二人の会話は全て方言なので、どうにも違和感が拭えない。

 

昼餉の支度をするから手伝ってくれと言われ、村田を居間に案内する斗和と別れ台所に入る。

 

買い出しも夏世が行っており、食材は何があるのかなど把握済みだ。

台所に来た斗和に何を作るのか聞けば、野菜の天ぷら、卵焼き、菜の花の辛子和え、豆腐の味噌汁だと言う。

昼餉にしては結構な豪華さだ。

よほど世話になっている人なのだろうと思った。

 

夏世は天ぷらを任されたので作業に取りかかる。

その間に斗和は卵焼き、味噌汁などを作っていきあまり待たせずに提供できた。

 

目を輝かせ食事に手を付けた村田と共に、夏世も相伴にあずかる。

正直なところ、斗和の料理には不安がある。

果たして大丈夫だろうか…と夏世は落ち着かない。

 

直接声に出したことはないが、斗和は料理下手だと思っている。

これは夏世から見てではなく、一般的な目線でだ。

一通りそれなりには作れるようだが、その行程で何かが抜けていたり味の付け方がおかしかったり、毎回不安定なのだ。

食べられなくはないが、いまいちなのである。

 

それでも糠漬けと卵焼きは絶品という極端に美味なものもあるので、夏世はかなり不思議に思っていた。

今回出した卵焼きと糠漬けは村田も絶賛するだろうが、他はどうか。

 

夏世は村田に悟られないよう、こっそり様子を見続ける。

隣にいる斗和は何も気にしていないのか、もりもり食べていた。

なぜ気にならないのだろう、と夏世は少々呆れた。

村田は天ぷら、卵焼き、糠漬け、白飯を「おいしい、おいしい」と食べている。

ひとまず安堵し、夏世は自らの椀に口を付けた。

 

ところが僅か数秒後、菜の花の辛子和えを口に入れた村田が咽せた。

 

「うぐっ、ゲホッゲホッ!」

 

「ちょっと大丈夫!?」

 

斗和は駆け寄りその背中を擦ってやるが、村田は咽せたせいで顔が赤くなり涙目になっている。

 

「カハッ、こ、この和え物の辛子の塊を食べちゃったよ!」

 

どうやら村田の器に入ったのは、辛子が多かったようだ。

村田は口直しに味噌汁を飲むが、今度は小首を傾げるではないか。

 

まさかと思い夏世も飲んでみると、見事に味が薄い。

普段は作っても二人分だ。

斗和はその感覚で、水は増やしても味噌を同じ量しか入れなかったのである。

 

それでも全て平らげた村田は、土産の糠漬けを貰い礼をし帰って行った。

 

今度誰か連れて来たら、漬物以外は全て自分が作ろうと誓う夏世だった。

 

 

 

 

◇

その夜珍しく任務のなかった村田は、昼に斗和から貰った糠漬けを食卓に置いた。

 

今日の昼餉はなんだか微妙だったなと思う。

天ぷらと卵焼きと糠漬けはとても美味しかったのに、菜の花の辛子和えはとんでもなく辛く、味噌汁は味が薄い。

 

おかしいな?と村田は思った。

 

以前に斗和から貰って食べた焼いた握り飯は、かなり美味で感動した。

なのになぜ今回は、あんなにも味にばらつきがあるのか。

 

天ぷら以外は斗和が作ったとのことで、ますます不思議だった。

斗和は農婦姿のせいか料理上手に見えるのに、そうではないという事実が判明した。

 

村田は、斗和に頼むのは焼いた握り飯だけにしようと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

____________

◉小野寺夏世(おのでらかよ)

 

斗和が一軒家に引っ越した際、畑の管理を任された。

元は藤の家の奉公人。

斗和と同じ東北出身で、普段は方言と訛りで会話をする。

157㎝、18歳。気立ての良い可愛いらしい娘である。

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