※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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二度目の打診

迎えに来た隠に起こされた斗和は、本部へと向かう。

 

今日は畑管理の夏世が来ていない。

最近は起こして貰っていたので、うっかり寝過ごしたのだ。

襖の外から隠に大声で起こされ、慌てて支度をした。

 

 

 

──────

─────

二度目の本部へ着くと、斗和が予想していた通り柱への昇格を受けろと言われる。

前回からそんなに経っていない上、申し訳ないが自分はまだ未熟だからと断った。

柱が足りないと言われても、斗和は首を縦に振らなかった。

 

今現在柱なのは煉獄槇寿郎、悲鳴嶼行冥、宇髄天元、冨岡義勇、不死川実弥のおそらく五人だ。

他に加入者がいる可能性もあるが、いずれも数年のうちにいなくなっていると思われる。

槇寿郎は、どこまで任務をこなしているのかは分からない。

斗和が知る限りでは、任務も酒持参で行っていた。

少なくとも、柱の威厳は感じられない。

 

実質四人の状態に等しい。

柱の定員はその画数から九人だ。

今は確かに少ないが、そのうちに胡蝶しのぶが加わる。

更に煉獄杏寿郎が下弦ノ弐を倒して加わるので、そうなるまでもう少しだ。

 

斗和は、柱にはならないが今まで同様警備はし、どんな任務もこなすと宣言した。

いくら条件を突破しようと、ならないものはならないと決めているのだ。

昨日のような体たらくでは、いくら下弦を倒したとしても皆の上に立てはしないと思った。

 

斗和は、これ以上の打診は御免被りたいと言いたかったが、さすがにと思い口を噤んだ。

 

 

 

 

───────

──────

本部からの帰り道、久しぶりに共同鍛錬場の前を通ると突然雨が降って来た。

 

斗和は雨宿りを兼ねて、道場で素振りでもしようと中へ入る。

当然ながら外には誰もおらず、休憩所か道場にいると思われた。

 

道場へ入ろうとすると、中から数人の声がする。

入るに入れず、斗和はこっそり聞くことにした。

どうやらの斗和の噂をしているようだ。

野良着姿で手拭いを巻いた女、顔の傷、何の呼吸なのか、階級は、本当は農婦、など。

 

斗和は前まで共同任務が他の隊士より少なかった為か、会ったことのない者は多い。

このように噂されるのは仕方のないことだ。

しかし一度聞いてしまえば道場には入り難い。

 

(やっぱり帰ろう…)

 

 

 

鍛錬場を後にしながら、斗和は口を尖らせる。

自分の噂を、さすがに直接は聞いたことがなかった。

気恥ずかしいような、何とも言えない気持ちになる。

 

(そういえば、隠に転向した島本さんも、私のことを目立つって言ってたな。そんなに目立つかな?)

 

斗和はまあいいかと、雨に濡れながら家を目指した。

 

にわか雨ですぐに晴れ、所々に水溜まりができている。

 

家が見えてきたあたりで、門の前に人がいた。

斗和が誰だろう?と歩み寄ると、気付いた人物が頭を下げてくる。

 

「突然訪ねてすいません!昨夜はお疲れさまでした。助けていただき、ありがとうございます」

 

「館坂さん!わざわざお礼を言いに来てくれたんですか?こちらこそ……あ、彼の小指はどうだったんですか?」

 

訪ねて来たのは、昨夜の下弦ノ陸を倒した任務と神社での任務で一緒だった館坂だ。

音柱・宇髄天元ほどではないが、館坂は高身長かつ筋骨隆々である。

昨夜は小指を損傷した隊士を、蝶屋敷に送り届けるよう頼んだのだった。

 

「はい、対処が早かったので傷口に問題はないそうです。十二鬼月に遭遇して、小指だけですんでよかったと言っていました。だから蓬萊さんが気に病むことはないんですよ。俺、あなたに二度も助けられたんですから!」

 

そう言い見つめてくる館坂に、斗和は目頭が熱くなる。

 

立ち話もあれなので中に促し、縁側で待つよう告げ茶を用意する。

わざわざ礼を言いに来る館坂は、義理堅い男である。

 

 

 

運んだ茶を一口飲んだ館坂は、徐に斗和に向き合い突拍子もないことを口にした。

 

「どうか俺を蓬萊さんの継子にして下さい!土の呼吸を伝授してほしいんです!」

 

(えっ継子?継子って柱の直弟子だっけ?後継者と同じ意味合いかな。私は柱じゃないんだけれど…。それに土の呼吸を伝授って、だけど彼は既に……)

 

「待って下さい!あの、継子って……館坂さんは昨日、岩の呼吸を使っていましたよね?」

 

「岩は……壱ノ型しか使えないんです。俺、前は岩柱の悲鳴嶼さんの継子だったんですけど、どんなに稽古しても壱ノ型以外できなかった。このままじゃ限界があるから、悩んでいた時に蓬萊さんの土の呼吸を見てこれだって思って。まさか二度も同じ任務になると思わなかったから…これはもう行くしかないと。だから来ました!」

 

館坂は清々しい程に、しかと斗和の目を見て答える。

 

(ええええ……そう言われても!)

 

斗和は困り果てる。

壱ノ型しか使えずとも、我妻善逸のように自らで型をいくつも改変させる者もいる。

岩の呼吸を使えるならば、それを貫き通すべきだと考えた。

そして派生とはいえ、今から土の呼吸を会得するのは相当難しい。

 

「岩の呼吸ですけど、既存の型以外に自分で編み出すこともできるのでは?」

 

斗和が提案すると、館坂は顔に影を落とし俯く。

 

「できることは全部やりました……だけどどうしても出来なかった。だから、岩から派生させた呼吸なら俺にも使えるんじゃないかって、蓬萊さんを見て希望が持てたんです」

 

「…岩柱様は何と?」

 

「決めるのは自分自身だと言いました。継子でいたいならいればいいし、自由だと。岩の呼吸は鍛え抜かれた筋力が無いと使えないから、使用者も一握りで弟子も継子も殆どいないんです。迎え入れてくれた悲鳴嶼さんには感謝しかないんですが、俺はもっと強くなりたい。鬼を殲滅するために力をつけたいんです」

 

真っ直ぐ決してぶれないその瞳に、強い意志が現れている。

そんな館坂の姿に、斗和は昔の自分が重なった。

 

斗和は、本当は行冥の継子になりたかったのだ。

岩の呼吸を使いたいと思っていた。

それができなかった時の悔しさは、充分に理解できる。

 

館坂はずっと藻掻き悩んでいた。

そんな彼が斗和を頼って来たならば、応えるべきだと思った。

できることをすると耀哉にも宣言したばかりだ。

斗和は、館坂を受け入れる決心をする。

 

「分かりました、あなたを受け入れます!よろしくお願いします!」

 

立ち上がり頭を下げた斗和に、館坂もよろしくお願いしますと同じく頭を下げる。

縁側で頭を下げ合う二人の姿は、傍目から見るとなかなか面白い。

 

破顔した館坂は「俺が世話になるのに、蓬萊さんから頭を下げるなんておかしいですよ」と笑う。

館坂は凛々しい顔をしているが、笑うと少し幼くなるなと斗和は思った。

 

「これから師範と呼びますね。俺、下の名前は佳成(よしなり)ですけど好きなように呼んで下さい」

 

「佳成さんでいいですか?」

 

「いや俺十六歳になったばかりですよ。失礼ですけど師範の方が歳上ですよね?敬語もやめて下さい」

 

館坂がまだ十六歳という事実に、斗和は驚く。

背が高く逞しいので、てっきり自分より上だと思っていたのだ。

 

「分かったそうする。私は十七歳。それで継子なんだけど、私は柱じゃないから弟子という言い方の方がいいと思う」

 

すると佳成は目を丸くして驚く。

 

(何か変なこと言ったかな?)

 

「十二鬼月を倒したんだから柱でしょう!?……え、辞退した?」

 

斗和は隠す理由もないと思い、先程耀哉に打診されたが断ったことを教えた。

更に前回、鬼を五十体以上倒したが断ったこともだ。

ついでに柱の職務である警備をしていることなども、洗いざらい話した。

 

すると佳成は、信じられないものを見るような目で斗和を見てきた。

 

「鬼殺隊最高位の柱を、二度も断るなんてどうしてですか!実力があるから十二鬼月も倒したんですよ?しかも警備までしているなら実質柱ですよね。絶対に土柱です」

 

鼻息荒く訴える佳成に、斗和は圧倒される。

佳成はその後も、柱にならなかったことをなぜだと追及する。

もしや昨夜のことで柱になったと思い継子志願してきたのかと聞くと、佳成は違うと即答する。

 

あなたは自分のことが分かっていないにも程がある!と言われるが、斗和は結局よく分からないままだった。

 

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