※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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継子・館坂佳成

「おはようございます!」

 

よく響く声が門の前でした。

 

「入ってー!」と、斗和が台所から外に顔を出し呼んだ。

すると、昨日継子志願に来た館坂佳成が荷物を持ち歩いて来る。

 

 

 

昨夜は警備区域を廻るだけで任務はなかった。

普段より早く帰宅できた斗和は、客間の掃除をした。

その後一眠りして起きると、いつもより断然早く目覚めた。

 

斗和は佳成を継子として受け入れたので、今日から一緒に住むことになったのだ。

蓬萊家は、他の柱の屋敷よりかなり狭い。

不便をかけるだろうが、一つだけある客間を使って貰うつもりでいた。

 

客間、居間、斗和の寝室、台所、厠、風呂場、井戸、道場、庭兼鍛錬場、畑。

これが蓬萊家の全てである。

斗和は一通り家の中を案内し、裏にある畑を見せ管理している夏世のことを話した。

 

夏世は畑だけでなく、率先して家の中全体のこともする。

斗和は炊事が苦手なので、大変助かっていた。

 

「家事は一通りできます。岩柱邸では常駐の隠もいましたが、俺も人並にはやれますから」

 

「そうなの?それはよかった!」

 

佳成は家事が一通りできる。

斗和は、夏世と上手くやってくれればいいと思った。

 

「屋敷内のことはまずこんなところかな。あっ、そうだ!朝餉は食べてきた?」

 

「いえ、まだです」

 

首を横に振る佳成に、斗和は朝餉を共にと促す。

夏世が来てからというもの、斗和は任せきりにしていた。

上げ膳据え膳が板に付き始めており、このままではまずいと考えた。

女たるもの、料理ができないなどあってはならない。

斗和はそう思っていた。

 

何事も始めが肝心なので、まずは自分の料理を食べさせるべく早朝に来るよう告げたのだ。

昨夜は非番だった佳成は、本当に早朝に現れた。

 

夏世が来る前にと目論んでいたので、ここまではひとまず成功である。

早速、早起きし作っていた卵焼き、叩き牛蒡、大根の味噌汁、糠漬けを共に食すことにした。

卵焼きは、斗和の数少ないまともに作れる料理だ。

村田にも出したので自信があった。

 

いただきます!と手を合わせ互いに箸を持つ。

すると、一口目に叩き牛蒡を食べた佳成が顔を顰めた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、これ…ちょっと酢が強い気がするんです。あっ!勿論酢は体にもいいですし、たまにはこういうのも引き締まりますね」

 

佳成は斗和が気を悪くしないよう、気遣いを見せた。

 

(あ、そうだ。これを作っている時に呼ばれたから、うっかり味見を忘れたんだ)

 

体が大きいのでよく食べるだろうと思い、斗和は佳成におかわりをさせる。

食べっぷりがいいと、見ていていい気分になる。

斗和は、ぼんやりと煉獄杏寿郎を思い出す。

 

杏寿郎も、列車で弁当を大量に食べていた。

これまで煉獄家にはさつまいもしか届けていないが、いつか手料理を食べてくれる日が来るかもしれない…と妄想する。

斗和は、にまにまと不気味に笑っていたせいで、佳成に大丈夫ですか?と心配されたのだった。

 

食べ終えた佳成から、卵焼きと糠漬けが美味しかったですと言われる。

斗和は至極複雑だった。

他はだめなのか?と問いたいが、気まずくなりそうなのでやめた。

 

食器洗いと雑巾がけを佳成に頼み、斗和は洗濯をする。

 

するといつもの時刻に夏世がやって来た。

経緯を説明すると、相当驚く。

 

「昨日おらがいなかった時に、そんたなこどさなってらとは…たまげたなあ(昨日私がいなかった時に、そんなことになっていたとはね…驚いた)」

 

家の中で雑巾がけをしていた佳成を呼び紹介すると、茹で蛸みたいに真っ赤になっている。

夏世ももじもじとしており、この二人はどうしたんだろうと斗和は首を傾げた。

 

 

 

 

 

これから斗和は、任務までの間は佳成の稽古と己の鍛錬。

この二つを同時にこなさなくてはならない。

果たしてできるのかとそれなりに不安はあるが、やるしかない。

 

まず斗和は、佳成に土の呼吸を会得させるにはどうしたらいいかを考えた。

 

始めに、何よりも先に土を知ることだ。

人間や動物が食べる作物を育むのは土である。

土、つまり大地は必要不可欠なものだ。

斗和が派生させた時は、畑を耕していた時だった。

 

斗和は佳成にそれを伝え、まずはひたすらに畑を耕させた。

 

同時に壱ノ型 土龍爪(どりゅうそう)を見せる。

壱ノ型は不貞腐れた斗和が畑を耕していた時に、無意識で出していた技だ。

土の呼吸の基礎である。

 

これができれば、弐ノ型以降はそこまで苦にならず会得できるのではと考えた。

 

何にせよ呼吸の会得は一筋縄ではいかない。

ましてや岩の呼吸を使っている上で、新たな呼吸をものにする。

自分との闘いだ。

 

 

 

 

───────

──────

それから数日たったが、斗和は何も言わず見守っていた。

佳成が藻掻いているのは分かるが、殻に閉じ籠もっているような感じがするのだ。

斗和には、原因の一つに考えられることがあった。

 

佳成は体格的に会得できるはずの岩の呼吸を、壱ノ型しかできず藻掻いていた。

斗和は体格的に会得できない岩の呼吸を、会得したくて藻掻いていた。

 

直感的に似ていると、斗和は思っていた。

 

 

やはりどうにもきっかけを掴めないでいる佳成に、斗和は荒療治に移ることにした。

 

畑にいた夏世に、何があろうとその場にいろと告げ佳成と向き合う。

 

佳成は鍬(くわ)、斗和は右手に木刀を持つ。

打ち返してこいと言い、斗和は突っ込んで行った。

純粋な力では佳成が勝るが、斗和が右腕しか使っていないにも関わらず応戦できていない。

 

速さは圧倒的に斗和が勝るものの、何かがおかしいと感じ取る。

遠慮しているのか、斗和が女だからなのか。

はたまたやる気がないのか分からないが、これはあり得ない。

 

(何のつもりだ?)

 

斗和は沸々と湧き上がる怒りに支配される。

 

 

─土の呼吸 参ノ型 土竜叩(もぐらたたき)

 

 

斗和が、土竜叩(もぐらたたき)を右腕だけで打ち込んだのは初めてだった。

木刀で片腕だけでは、やはり威力が著しく落ちる。

 

「っ!」

 

片膝を着いた佳成に、斗和は畳みかけるように技を放つ。

 

(あれごときで膝をつくなど情けない)

 

 

─土の呼吸 弐ノ型 土石流

 

 

この技も右腕だけで撃つが、佳成は後方に転がる。

上背もある大の男だというのに、あまりにあっけなかった。

 

(これで私の継子になろうとは笑わせる)

 

「さっさと立て!このざまでよく今まで隊士が務まったものだ。まさかとは思うが……鍬では当たると危ないから打ち込めないとでも?」

 

斗和は木刀を佳成に突き付けた。

 

「……お前は私より強いのか?鬼殺に女も子供も関係ない。私を鬼だと思ってかかれ!そのような腑抜けならば、鬼が大切な人を殺そうとしても助けられないな…。無力ほど悔しく情けないものはない」

 

淡々と、斗和は自分でも驚くことを言うと更に畳みかける。

木刀を構え、畑で蹲っていた夏世に向かって行った。

 

「キャーッ!!」

 

「やめろー!!」

 

ズバンという音と共に、夏世に向けて振り下ろそうとしていた木刀が切断される。

 

風圧で斗和の体は真横に飛んだ。

飛ばされながらも、その目にはっきりと土の粒子が見えた。

素早く受け身を取った斗和は、切断された木刀を手放す。

そして夏世を庇いその前に立つ佳成に、ありったけの拳を打ち込んだ。

斗和は育手の元で修行中に、一通り体術も習っていた。

しかし本格的に使うのはかなり久しぶりである。

 

 

斗和の打ち込んだ拳を、佳成は全て腕で防いでしまう。

これならばと、斗和は右足で佳成の脇腹を盛大に蹴り上げる。

しかし同時に肩口に拳が入りよろめく。

 

「うっ!」

 

その拳はかなり強く、重い。

 

斗和は額を拭い、正面で睨む佳成に笑ってみせた。

 

「今のは壱ノ型。もう一回やってみて」

 

聞こえたはずだが、唖然とした佳成は状況について行けない。

 

「……はっ?」

 

斗和は呆けている佳成の脇を通り、後ろで涙目で蹲る夏世の頭を撫でて詫びる。

 

「夏世ちゃんごめんなあ!こええ思いさせたじゃ。悪いのは佳成だはんで、今度甘味でも奢ってもらえばええ(夏世ちゃんごめんね。怖い思いさせたね。悪いのは佳成だから、今度甘味でも奢ってもらうといいよ)」

 

「斗和ちゃんてば!びっくりしたでねえが!(斗和ちゃんてば!びっくりしたじゃないの)」

 

ぽかぽかと斗和を叩いた夏世は、涙を拭い佳成の傍に寄ると隊服の袖をそっと掴む。

 

「助けてくれてありがとう、佳成さん」

 

「あ、いや……夏世さんが無事でよかった…!」

 

照れているのか顔の赤い佳成と、泣き顔に笑みをたたえる夏世の姿に斗和は察した。

実際、佳成がふっきれない原因の一つは夏世だ。

 

なんと世話の焼ける二人だと思った。

この状況、斗和はかなりお邪魔虫である。

だが、今は修行中。

夏世を家に入らせると、斗和は再び畑で佳成と向き合う。

 

これからが本番である。

 

斗和は先程の壱ノ型を、もう一度鍬を使い佳成に出させた。

次は木刀、最後に佳成自身の碇に似た大きな日輪刀で出させる。

斗和はそれぞれをよく見て、適応と威力を確かめた。

 

どうやら日輪刀が一番しっくりくるようで、威力もなかなかのものだった。

ならば一人で鍛錬する時は刀を、稽古する時は互いに鍬にしようと決め休憩した。

 

 

 

 

 

───────

──────

斗和は夕方から任務だった。

 

任務の無い佳成に、夏世を送って行くよう頼むと嬉しそうに頷いた。

 

「分かりました!責任持って送り届けます」

 

「うん、じゃあよろしくね」

 

なんとも分かりやすい男だと思った。

 

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