壱ノ型を撃てるようになった佳成の次なる修行は、弐ノ型から玖ノ型までを会得することだ。
斗和が派生させてから数年かけて編み出した様々な型だ。
いざ伝授するとなると、感慨深いものがあった。
斗和は土の呼吸のきっかけや型を、丁寧に書き記していた。
最初に派生させた時に、育手よりそうした方がいいと言われたのだ。
記すことにより師事する際に役立ち、更に後世へ託すこともできると。
斗和は、自分が弟子や継子を抱えるとは思っていなかった。
まさかそんな日が来るとは、と未だに驚いているのである。
佳成が現れるまで、土の呼吸を使用している者はいなかった。
斗和は不安な反面、ついに来たかと嬉しい気持ちでいっぱいだった。
まず一通り技を見せて、どういうものかをその目で確認してもらう。
【土の呼吸】
岩から派生した呼吸。
広範囲の技が多く、威力は使用者の持つ力に左右される。
・壱ノ型
土の粒子が龍を型取るように見え、その爪が斬り裂く。
・弐ノ型 土石流
文字通り土石流のような技で、上半身の全てを押し出す力にするので威力が大きい。
・参ノ型
文字通り穴から出てきた土竜を叩くように、素速く連撃を繰り出す。叩くと同時に斬る技である。一打一打が重い為、長く技を出していると疲弊する。
・肆ノ型
低姿勢から下肢、足下を広範囲に斬り裂く技。だがそれはあくまで囮で、技の残像がしばらく見え続ける。跳び上がれば確実に避けられるので、そこを狙うのがこの技の本質。驚異的な瞬発力が必要。
・伍ノ型 土砂崩れ
跳び上がり、敵の頭上から大きく刀を振り下ろす技。一撃だが威力が非常に強く、範囲も広い。まともに喰らうと体は半分地面にめり込み、頭は完全に潰される。
・陸ノ型
土の粒子を纏った斬撃が、撫でるように幾筋も舞う広範囲の技。相手の視界は繰り出す技の土煙により遮られる。畑や砂地で撃てばそれらも巻き上がり、威力が増す。
・㯃ノ型
霜柱のように縦に斬り刻むのと、突き刺すが混ざった技。日本刀形状の日輪刀でも威力が落ちない唯一の技。
・㭭ノ型
土の壁を作り相手の攻撃を防ぐ技。防御技であり、基本的には誰かを助ける時に使用する。防御するより攻撃した方が効率よく倒せるからである。
・玖ノ型
ミミズ腫れのように、縦に長く斬り裂く技。
いくつか応用技もあり、斗和は戦闘でそれらを咄嗟に閃き使用している。
他に拾ノ型もあるが、特殊な技なのでとりあえずは教えないことにした。
この技の威力は未知数で、身体への負担も明確に分かっていない。
斗和も実際に本気で使用したことはなかった。
斗和の場合は、木刀、鍬、日輪刀の順で威力が上がる為、同じ技でも大分違う。
佳成は碇に似た自らの日輪刀で鍛錬するので、斗和も自分の日輪刀を使って技を出した。
どの型が会得しやすいかは分からないが、鍛錬して使えるようになればいいと考えた。
佳成は基礎しっかり出来上がっている。
岩柱・悲鳴嶼行冥の継子だったこともあり、細かに教えなくとも考え理解し力をつけて行った。
何と言っても体躯に恵まれており、技の威力も範囲も相当だ。
斗和はそれが嬉しくもあり、少なからず悔しかったりもする。
佳成は俊敏さと、戦い方に合った技を出すのがまだ半人前だ。
岩の呼吸を壱ノ型しか出来なかったせいもあり、様々な技の使用に慣れていない。
それらを見極め、効率よく倒すことは必要不可欠である。
佳成は体躯を活かし、体術もできることが分かった。
斗和はいい機会だと、体術を教えてもらうことにした。
育手の元で一通りは習ったのだが、以来使っておらず殆ど身になっていなかった。
鬼の頸を斬るのに体術は無意味だが、咄嗟の時や護身用にはなるので使えるに越したことはない。
「先生!今の回し蹴りを止められた場合は、どう切り返せばいいですか?」
道場で体術稽古をしていた時に手を挙げて質問すると、佳成は照れくさいのか面白い顔になる。
「師範!先生と呼ばないで下さいよ!」
「私は今体術を教えて貰っているから、師範ではありません。名前で呼んで下さい。あっ、夏世ちゃんに嫉妬されるので苗字でお願いします、先生」
「もう!師範!!」
いよいよ怒り出す佳成に斗和は笑う。
死が身近にある鬼殺隊にいて、こうして笑い合えることは幸せなことだ。
つらいことばかり経験してきた隊士達には、ほんの少しでも笑顔になって欲しい。
斗和は常にそう思っていた。
(あの人を幸せに……)
一瞬頭を掠めたのは誰だったのか、斗和はまだ気付かない。
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斗和の継子。以前は岩柱・悲鳴嶼行冥の継子だったが、岩の呼吸が壱ノ型しか使えず悩んでいる最中に斗和と知り合う。土の呼吸が岩からの派生と知り、継子志願に来た。
畑管理の娘・
188㎝、16歳。黒髪短髪の凛々しい少年。