※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

37 / 190
18歳①【風柱・不死川実弥】
未来予想図


十八歳になった斗和は、昨年までやっていた階級を確かめることをしなかった。

 

階級は甲(きのえ)、上がりようがない。

下がる可能性もあるか?と一瞬考え、苦笑いする。

癸(みずのと)のままでよかった気もしたが、そうなると行動範囲が狭まり、本部に呼ばれることなどまずない。

そうなれば、斗和の目的が閉ざされてしまう。

 

物語自体は、おそらく来年には始まるだろうと目処を立てている。

それまでにしっかり計画を立てる必要があった。

 

斗和は任務明けの朝日を浴び、目を細めた。

 

 

 

 

───────

──────

帰宅すると台所に佳成と夏世がおり、二人でせっせと朝餉を作っていた。

 

普段夏世が来るのは、藤の家で朝餉を済ませた後だ。

今日はやけに早い。

 

(早すぎる…だってまだ五時半だよ?なんかおかしいな…)

 

斗和は二人をじっと見て首を傾げる。

よそよそしくも感じられ、どうにもしっくり来ない。

 

すると斗和の視線を感じた夏世が、妙に慌てて風呂に入って来いと告げる。

佳成は「お疲れ様です」と挨拶してからは、斗和に顔を向けない。

 

(なーるーほーどーね!)

 

勘がいいわけではない、むしろ鈍い斗和だったが、さすがにこれは察した。

斗和は言われた通り、まずは風呂に入ることにした。

 

 

 

湯舟に浸かりながら先程のことを考える。

こそばゆい、嬉しい、胸が躍る、今の心境に当て嵌まる言葉はどれなのか。

 

 

風呂から上がり髪を乾かし、普段着の野良着を着て居間に向かう。

朝餉が運ばれるのを、斗和はにやけそうになりながら見ていた。

普段はコの字で並ぶのだが、今日は斗和の向かいに佳成と夏世が並んでいる。

人参の白和え、生姜の佃煮、かぶの餡かけ、大根の味噌汁、糠漬け、梅干し。

ごく普通の朝餉が並んでいるが、膳の端に羊羹がある。

色からして小豆の羊羹ではなく、さつまいもの羊羹だ。

 

斗和は、なぜ羊羹が?と見つめていると、佳成と夏世が声を合わせる。

 

「誕生日おめでとうございます!」

 

満面の笑みを向けられ、斗和は驚きに目をしばたかせた。

 

「あ、りがとう…。私の誕生日知ってたの?」

 

誕生日の朝に祝われるなど、初めてのことだった。

斗和は、今まで誕生日を祝ってもらった記憶がない。

貧しい農村では、子供の誕生日を祝う風習などないのである。

斗和も幼少期から農作業ばかりだった。

鬼殺隊に入ってからも一人だったので、誰かに祝われるなど考えもしなかった。

 

斗和は、じわじわと心が温かくなるのを感じる。

 

(誕生日を祝って貰えるなんて思わなかった…伊之助君のほわほわする気持ちって、まさにこれなのかな?)

 

「斗和ちゃん!?」

 

「師範!?どうしたんですか、泣かないで下さいよ!」

 

夏世と佳成は驚きあたふたしている。

斗和は滲み出る涙を堪えられなかった。 

 

「嬉しい…二人共、本当にありがとう!」

 

泣きながら礼をすると、二人は顔を見合わせて笑顔になる。

冷めるから食べようと夏世が言い、三人揃って手を合わせ朝餉を食べる。

 

斗和は胸がいっぱいになり、いまいち味が分からなかった。

それでも最後に茶と共にに味わった芋羊羹は、甘くて美味であった。

誕生日に幸せな気分で満たされたことを、斗和は心から感謝した。

 

食べ終わる頃、そういえばと少し冷静になり気付く。

台所で斗和が感じていたのは、誕生日を祝う雰囲気のものではない。

継子の佳成と畑管理の夏世、斗和の前に座る二人が発するよそよそしさの正体。

知る限りでは、夏世がこの家に泊まったのは初めてだ。

二人が恋仲になったのは既に知っているが、昨夜ついに結ばれたのかと思った。

 

二人は隠す気がないように見えるが、追及もできない。

ただ何か言いたそうにも感じるのだ。

斗和はどうしようかと考える。

 

「ごちそうさまでした、美味しかったです!二人共ありがとう」

 

斗和は手を合わせそう言うと、夏世が立ち上がり膳を片付け始める。

佳成は真面目な顔で、話しがあるからそのまま少し待ってくれと告げた。

 

(やっぱり!私はこれから二人が結ばれた報告を受けるんだ。なんだか朝から刺激的…でも、そういうことってわざわざ話すかな?)

 

少々腑に落ちない斗和だが、戻ってきた二人を前に正座し直す。

二人はまた正面に並び、真剣な眼差しで斗和を見ている。

 

「師範、報告があります。…俺、心から夏世が好きです。今はこのままだけど、いずれ夫婦になろうと思っています。どうか認めて下さい、お願いします!」

 

(えっ夫婦!?)

 

「私も佳成さんが心から好きです。ずっと傍にいたい、生涯共に生きていきたいんです!」

 

二人は手を付き、斗和に頭を下げる。

周囲が赤面しそうな愛の告白である。

 

はっきりと気持ちを伝える十代の若者がいることに、斗和は感動した。

親でもないが、こうして伝えてきたことは嬉しい。

 

もし娘や息子がいたなら、このような感じなのかと思った。

 

「おめでとう!応援するよ!必ず一緒になる日が来るから、それまで精一杯愛を育んでね」

 

斗和は言いながら盛大に照れるが、パッと顔を上げた二人は目を合わせ喜んでいる。

 

鬼殺隊は三年後に無惨を必ず倒す。

その時、二人が結婚するのを見届けるという夢もできた。

斗和は穏やかに笑う。

 

微笑ましい空間である。

おそらく斗和の姿は、二人の視界に入っていない。

少しからかってやろうとするのは、斗和の癖だ。

 

「ところで佳成?」

 

「はい、何ですか?」

 

「昨日は任務がなかったんでしょう?夏世ちゃんはうちに泊まるの初めてだね。二人共寝不足に見えるけど…。じゃあ私は仮眠をとります、おやすみ!」

 

斗和は立ち上がり、襖に手を掛けると振り返る。

これでもかという程に顔を真っ赤にした二人は、唖然と斗和を見ている。

 

(分かりやすいんだから、本当に)

 

「必要ないだろうけど、客用の布団は押し入れに一組あるからね」

 

そう言って笑うと、斗和は私室に向かった。

背後で何やら騒がしいが、幸せの音が心地良い。

斗和は笑いながら布団へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

──────

それから一ヶ月程経ったある日。

斗和は、胡蝶しのぶが蟲柱になったと小耳に挟む。

しのぶが柱になった。

次は杏寿郎だ。

 

少しずつあの時が近付いていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。