※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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13歳【最終選別〜初任務】
最終選別


最終選別の場所・藤襲山は、斗和が本で見た通り一面藤の花だらけだった。

 

藤の花の香りが充満したその麓には、たくさん集まっている。

皆殺気立っており、言葉を発する者はいない。

 

男ばかりだと思われていたが、女も何人かいた。

斗和は自分だけかもしれないと不安だったので、同性がいるのは心強いと思った。

 

斗和は久方ぶりに同世代の少年少女を見て、なんとなく恥ずかしさを覚えた。

育手のところは山奥で自給自足だった為、街に行くことも殆どなく過ごした。

 

彼らの中には二十歳をとうに越してるような者もいるが、大抵は十代と見受けられた。

 

斗和はぐるりと全体的に見回すと、やけに背が高い男がいることに気付く。

 

(なんだか派手な人…ん?あれ!?)

 

もしやと思い、男の顔が分かる場所までさり気なく移動する。

 

(あーっ!!)

 

派手な額宛てに宝飾品。

そこにいたのは未来の音柱・宇髄天元だった。

 

斗和が知っている天元の姿よりも、かなり若い。

だがガッシリした筋肉に長身、そして整った顔はまさに宇髄天元を示している。

 

(一番初めに目にした人が宇髄さんか…本当に美形だな。ここにいるってことは、宇髄さんは合格して入隊するわけで同期になるのか…)

 

そこで天元の記憶を辿るが、確か里抜けしたのではなかったかと思い出す。

里抜けをして産屋敷耀哉に出会い、入隊したはずである。

斗和は、天元は実力が高いので最終選別は参加していないのだと思っていた。

 

最終選別に例外はないのだと、初めて知るのだった。

 

他に誰かいないかと、斗和が再び周囲を見回した時だ。

辺りががざわつく。

 

「皆様。今宵は鬼殺隊最終選別に起こし頂き、誠にありがとうございます」

 

聞こえた穏やかな声の主は、お館様こと産屋敷耀哉だった。

斗和が本で見た姿より若く、まだ病の症状もあまり出ていない。

 

(すごい!あのお館様がいる!そうか、子供たちはまだ生まれていないんだ)

 

主要人物が一気に二人も出てきたこともあり、斗和は緊張が増して手が震える。

 

紛れもない鬼滅の刃の世界にいるのだと、斗和は改めて実感した。

 

実のところ心の片隅で、夢なのではないかと思っていたのだ。

しかしこれは現実である。

蓬萊斗和はここで生きている。

 

まずは七日間生き抜くことを目標にした。

鬼殺隊に入るために一年間修行してきたのだ。

 

握り締めた刀に汗が滲む。

 

(絶対にここを乗りきってみせる…!)

 

 

ついに最終選別が始まった。

 

 

 

 

 

───────

──────

斗和は薄汚れた頰を左右に引っ張り、思いきりグリグリと回した。

癖になっている眠気覚ましだ。

 

最終選別が始まり、早いものでもうすぐ七日目を迎える。まだ気は抜けないが、このまま行けば残れる予感がしていた。

斗和の中で、少しずつ淡い期待が込み上げる。

 

 

斗和は始まってすぐ、とにかく山を登り上を目指した。起伏のある山道を走ることで、足腰の鍛錬にもなる。

そうしながら鬼を狩れば、もっと強くなれると思ったのた。

 

当然ながら鬼はいる。

真横から飛び出る。

いつの間にか追いかけられている。

前方で待ち構えていたなど、奇襲強襲なんでもありだった。

 

最初に斗和は、衝撃を受け慌てふためいて逃げた。

本当に鬼だ!と、人間ではない生き物に相当の恐怖はあった。

だが戦いの中で確実に頸を斬る術を学んでいけば、どうにか先に進めた。

倒れたら喰われて終わりである。

そうならないよう、必死で挑むしかない。

だが斗和は、常に冷静でいられなかった。

二体同時に出て来れば焦り、無我夢中で技を出し掠りもせず逆にやられたりした。

あっという間に野良着はぼろ雑巾になり、生傷は増え風呂にも入れないので全身汚くなった。

 

臭い、風呂に入りたいと思うのは皆同じ。

しかしこの七日間はそうもいかない。

 

仮眠をとるのは昼間のうちだ。

斗和はそれなりに用心深かった。

油断はできないと思い、木の上で藤の花を大量に身体中に纏い寝た。

 

因みに、食糧はたんまりと持参した干し芋だ。

育手を探す道中も芋だったが、今度は生ではないので食べやすい。

 

(さつまいもは素晴らしい!煉獄さんも好きらしいし、好物が同じなのは嬉しいな)

 

斗和は木の上で干し芋を咀嚼しつつ、顔がほころぶ。

 

 

 

頂上付近と思われるところまで行き、また下がる。

これを七日間繰り返していると、大分速くなった。

鬼殺隊に速さは必須である。

逃げるも助けるもまずは足だ。

 

そういえば…と、斗和は今まで忘れていたことを思い出す。

 

竈門炭治郎が出くわした手鬼の存在。

水柱・冨岡義勇の兄弟弟子である錆兎は、手鬼のせいで死んだ。

ここで自分が倒せば、錆兎は死なずにすむと斗和は考えた。

 

今の実力で倒せるか分からないという不安はある。

だが、逃げるわけにはいかない。

 

斗和は再度気合いを入れ頬を叩いた。

 

 

 

───────

──────

だが結局、斗和が集合場所に戻るまで手鬼とは遭遇しなかった。

 

そうなると、錆兎はやはり死んでしまうと思われる。

最初から手鬼を倒すことを目的に動かなかったのが悪いのか、とも考えた。

 

しかしそれは今更であり、どうにもならない。

いくら斗和がこれから起こることを知っていようと、全てを変えることは不可能だ。

 

斗和が以前の記憶を戻した際、強く意識したのは一つだけだった。

考え始めたらきりがないと、斗和は目の前に集中することにした。

 

頭を切り替え、再び周囲に目を向ける。

 

当たり前だが宇髄天元がいた。

他にも四人いるが男だけだ。

 

(宇髄さんは何歳なんだろう?彼の年齢さえ分かれば、時系列が大分明確になってくるのに。でもいきなり聞くのはな…となるとお館様に聞く?それもあやしいか)

 

疲労の色が見える面々を見ながら、斗和はあれこれと考える。

炭治郎が鬼殺隊に入った時、天元と耀哉は二十三歳だった。

耀哉の病気はあまり出ていない上、明らかに若いので二十代ではないことが分かる。

 

斗和は、周囲が不気味な程静かなことに気付く。

耀哉が労いの言葉をかけているが、天元を始め皆一言も喋らない。

当然である。

鬼だらけの場所から七日後に生還して、和気藹藹の精神状態になれるわけがないのだ。

 

耀哉は、任務、階級、隊服、鎹鴉、日輪刀などについてを丁寧に述べている。

 

斗和の腕に留まった鴉は、大人しそうに見えた。

鎹鴉と言えば、喋る優秀な鴉で任務などの伝令に使用する。

今後の相棒であるから仲良くしようと思い、斗和はとりあえずにっこりと笑ってみせた。

だが鴉はフイッと顔を背ける。

斗和は少なからず落ち込んだ。

 

続いて刀を造る玉鋼を選べと言われ、師に言われたことを思い出す。

『お前が使えるのはそれしかないから貸すが、合格したら刀鍛冶師に自分に合ったのを拵えてもらえ。呼吸や使用者により、持つ日輪刀の形状は様々だ。大抵は日本刀形状だが、短刀、二刀流、薙刀の奴もいる。俺の大鉈も特殊だしな。今の刀では土の呼吸の威力が最大限引き出せていないだろ?だから必ず合ったものを造ってもらえ』

 

 

刀については悩みであった。

鍛錬中にも思っていたが、土の呼吸は無意識だが畑を耕す感覚で派生させたものだ。

なので、今使っている日本刀形状の刀ではしっくりこないのだった。

鬼の頸を斬ることはできたが、どうにも違和感が拭えないでいる。

 

理由として、刀が軽いからだろうかと思っていた。

鍬(くわ)や鋤(すき)や鉈(なた)に比べると、手に持った適度な重みが足りないと感じていた。 

そうなると、呼吸に適した特殊形状の日輪刀を造ってもらうことは必須である。

 

刀が手元に来るまでの流れはどうだったか、斗和は考える。

 

(確か玉鋼を選んだ後、しばらくしたら刀鍛冶師が日輪刀を持って訪ねて来るんだ。じゃあ今ここでお館様に頼んでおくしかないな)

 

そうと決まれば選ぶのは一番最後がいいだろう。

斗和は皆が順に決めて行くのを待つ。

 

天元は一番最初に決めて、さっさといなくなってしまった。

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