斗和は一度柱を断った時から、単独任務への拘りを捨てた。
すると柱になったとたん、共同任務が一気に増えた。
その割合は共同七割、単独三割と、昔では考えられない任務状況である。
必然的に隊士とも隠とも毎日のように会うので、斗和は挨拶をするのが苦になっていた。
まず、自ら柱だと言うのは恥ずかしい。
何より斗和は、甲の期間が板についていたせいで、未だに間違うのだ。
ある時は
「
「
ある時は
「蓬萊斗和です」
「名前じゃなく、階級を聞いているんですが…」
ある時は事後処理の人手が足りず手伝おうとしたところ、
「土柱様、私達がやるのでもう帰って下さい」
「仮だからやります」
「仮ってなんですか!?」
斗和はとにかく慣れなかった。
そもそも、元来上に立つのは苦手だ。
そして土柱様などと呼ばれるのは、かなり居心地が悪いと感じていた。
堂々とできないのは、斗和の持って生まれた性格である。
卑下しすぎだと実弥は言うが、果たして自信を持てる日は来るのだろうか。
任務や警備区域の見廻り、継子・佳成の稽古、自らの鍛錬。
柱になる前からもなってからも、斗和は忙しい日々を送っている。
甲の時期と大きな変化がないということは、もしかしたら知らずに柱同様のことをしていたのかもしれない。
斗和は、柱は更に忙しいと思っていた。
そうだったのかと一人納得する。
継子の佳成は斗和の師事を受け、早一年以上が経った。
最初こそ藻掻いていたが、その後は目を見張る早さで型を会得した。
奥義である拾ノ型を除き、他は全て自分のものにしていた。
階級も上げ、稽古というより手合わせに近い状態だった。
斗和は以前、佳成に警備を頼むこともあった。
さすがに今は頼むことはないが、非常に頼りになる存在となっていた。
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ある日斗和は、任務帰りに村田に会った。
相変わらずサラサラの前髪をなびかせている。
村田は、いつぞや甘味屋で世話になったのをきっかけに仲良くなった。
斗和の、数少ない敬語無しで会話の出来る人物である。
一年以上前に昼餉を食べにきて以来だが、元気そうに見えた。
斗和は、せっかくだからこれからまた食べに来ないかと誘う。
「う……ん、そうだね」
村田は歯切れの悪い返事をした。
村田は以前、斗和から貰った焼きお握りが絶品だったことにえらく感激した。
他の料理も食べたいと強請り食べに行ったのはいいが、いくつかはいまいちだったのだ。
辛子で盛大にむせた過去があるので、またそうなれば嫌だなと思ったのだ。
しかしせっかく斗和が誘うのだからと、行くことにした。
その道中、二人は同期の話しになる。
斗和は音柱が同期だと告げると、村田は驚く。
「へー!あの派手な音柱と蓬萊さんが同期って結びつかないね。…俺、一応水柱と同期なんだよね。まああっちは覚えてないだろうけど……」
村田はため息を吐き、少し淋しそうな顔になる。
村田の同期は水柱・冨岡義勇だ。
だが、そのことを義勇は忘れていると村田は思っている。
斗和は、義勇がちゃんと覚えていることを知っていた。
村田がそれを知るのは最終決戦なので、まだまだ先のことだ。
気まずくなった為、斗和は「二人とも柱が同期なんてお揃いだね!」と笑ってみせる。
すると村田は、じーっと斗和を見て口を尖らせた。
「…柱の同期が柱の方がすごいよ。ていうか蓬萊さん、俺に報告無しなんて酷いよー!柱になったならすぐ報告してよ!同い年だから頑張ろうって誓ったのに…」
「村田さん知ってたの!?だってわざわざ報告なんて、自慢しているみたいだしできないよ…。それに柱と言っても仮だから、いつかはまた甲に戻るよ」
「仮って何?柱に仮なんてあるの?蓬萊さんて本当に変わってるよね!俺なら飛び跳ねてるよ」
斗和は、飛び跳ねる村田を想像して笑ってしまう。
朝餉は柱就任祝いとこじつけ、斗和が得意なのだけを作り振る舞うことにした。
祝ってもらう側が作るのはおかしいが、急遽そうなったので仕方がない。
焼きお握り、卵焼き、茹でただけのほうれん草、浅漬け、煎茶が膳に並ぶ。
村田は全て食し満足して帰って行ったが、斗和は少しだけ複雑だった。
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任務帰りの朝方。
斗和は家に向かう途中、田んぼで稲穂がしだれているのが目に入る。
そろそろ刈り取りかなと思っていると、姿の見えなかった鴉の令和が飛んで来た。
「柱合会議、昼マデニ向カエ!」
(柱合会議!?まさか、もしかして煉獄さんが来るあれかな?)
斗和は立ち止まり、心臓がドキドキと高鳴るのを感じた。
違うかもしれないが、確かめる機会が到来したのだ。
(あ!そうだ、お館様から畑の作物ができたら楽しみにしてるって言われてたんだった)
いつぞや耀哉から言われていたことを思い出す。
野菜はちょうど食べ頃だ。
すぐに畑から収穫して準備しなければと思った。
斗和は勢いよく駆け抜けて行った。