※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

52 / 190
柱の皆さん①

斗和は急いで家に戻り、まずは水を飲もうと台所に行く。

すると、先に帰っていた佳成が風呂から上がってきた。

 

「お疲れ様です!風呂どうぞ。…やけに息を切らしてどうしたんですか?」

 

「お疲れ様!昼から柱合会議なの。それでお館様や皆に野菜をお裾分けしたいから、今から掘り起こさなきゃならなくて。急いで走ってきたんだけど、間に合うかな!?」

 

「じゃあ早く夏世を呼んで手伝ってもらいましょうよ。俺の鴉を飛ばしますから」

 

佳成は早速鴉に伝え、自らも着替え畑に入った。

風呂に入ったばかりで、これから仮眠をとるはずが狂わせてしまった。

斗和は申し訳なくて謝る。

 

「いいですよ。師範こそ、準備できたら風呂入って少しでも休んで下さい」

 

佳成の気遣いに、斗和は重ねて感激した。

 

しばらくすると鴉に呼ばれた夏世も到着し、三人がかりで掘り起こし洗い荷車に詰んでいく。

さつまいも、馬鈴薯、人参、牛蒡、大根、小松菜、葱の七種類だ。

斗和はそれらを見て、「えーと」と指を折っていく。

 

(まずお館様、宇髄さん、冨岡さん、胡蝶さん、悲鳴嶼さん、不死川さん…あとはいるか分からないけど煉獄さんの七人)

 

そして麻袋を七枚用意した。

するとそこで考え直す。

野菜はこれだけの量があるので、それぞれ好きなくらい持って行って貰う方がいい気がしたのだ。

袋は七枚だけでなく、たくさん持って行くことにする。

 

柱には会議の後であげることにし、産屋敷家の分は袋に詰めて隠に頼むことした。

そしてもし杏寿郎がいるあの会議ならば、先に帰ってしまう。

この場で詰め、帰りに渡して貰うことにした。

 

斗和は麻袋を広げ、あれもこれもと入れていく。

 

(下には重いのを…まずはさつまいもでしょ。さつまいもは煉獄さんが好きだから、たくさん入れなきゃね。そしたら次は……)

 

気付けば予想以上に大量になってしまった。

 

「あれ斗和ちゃん!こりゃ運べねェんでねが?袋がらはみ出てるべ(斗和ちゃん!これは運べないんじゃない?袋からはみ出てるよ)」

 

斗和は夏世に指摘されたので持ってみると、かなり重い。

 

(これ煉獄さん持って帰れるかな?)

 

そしてなんとか準備が出来た。

三人がかりだと早く終わり、斗和は素早く風呂に入って仮眠をとった。

 

 

 

──────

─────

「…ちゃーん!斗和ちゃん、起きて」

 

「…んー…はぁーい!」

 

斗和は夏世に起こされ、一般隊服に着替えると髪を結ぶ。

新調した浅緑の羽織に袖を通すと、気分も高揚した。

 

(化粧は……不要か)

 

鏡を見て小さなため息が漏れる。

化粧をしても醜い顔は変わらない…斗和はそう思った。

 

 

 

本当に一人で運べるのかと心配する二人を余所に、斗和は勢いよく荷車を引いて本部へ向かう。

 

 

 

 

───────

──────

斗和は、何度か迂回をし本部に到着した。

 

柱は本部の場所を知らされているが、最短で来るのではなく、複雑に迂回をして来るようにと言い渡されている。

野菜が満載された荷車を引いて迂回するのは大変だったが、杏寿郎に会えるかもしれないと思うと苦にならなかった。

 

さて入ろうとするも、斗和は門の前で立ち往生してしまう。

荷車ごと中に入りたいのだが、段差がある場所は簡単に越えられない。

門から中を覗くも近くに隠はおらず、斗和はどうにか一人でと後方へ回ろうとした。

 

(ここを持ち上げて押せば…)

 

するとその時、突然車輪が持ち上がり楽々と門の中に荷車が入った。

 

背後から巨体が現れる。

巻き付けられた大きな数珠、全盲。

岩柱の悲鳴嶼行冥がそこにいた。

行冥は鬼殺隊最強であり、斗和の継子・佳成の元師範だ。

そしてその強さは斗和の憧れなのだ。

 

(うわぁ……すごい、あの悲鳴嶼さんが目の前にいる!大きい…)

 

長年憧れを抱いていた男を前に、斗和は動悸がしてくる。

行冥のように強くなりたいと思い、岩の呼吸を会得したかった。

それは叶わなかったが、土の呼吸を派生させ柱にまで上り詰めた。

つまり今の斗和がいるのは、行冥のおかげと言える。

 

「岩柱様!お助けいただき、ありがとうございます。これら野菜は後程皆様にお配りしますので、お持ち帰り下さい。ご挨拶が遅れました。初めまして、蓬萊斗和と申します」

 

斗和は深々と頭を下げる。

すると行冥はしばらく沈黙した後、嗚呼…と口を開いた。

 

「蓬萊斗和、土の呼吸の使い手……館坂佳成は元気でやっているか?」

 

「はい!佳成は最初こそ殻から抜け出せずにいましたが、その後は順調に呼吸を会得しています。型はほぼ全て撃てます。階級も上がりました。岩柱様のところで鍛えられたのがよかったのだと思います。本当にありがとうございます!」

 

佳成のことを聞かれ、斗和は嬉しくて満面の笑みで答える。

 

「あの、いつか私に稽古をつけて貰えますか?お願いします!」

 

ついでに稽古まで願い出る。

図々しいと思うも、せっかくの機会を逃してはならないと思った。

 

「稽古…考えておこう。岩の呼吸は派生も少なく、使い手も限られていた。そのような中で呼吸を派生させ、継子を育てた蓬萊の努力は報われるであろう」

 

行冥は両眼からツーと涙を流す。

 

(悲鳴嶼さん、泣いてるんですか!?なんて涙脆い!しかも努力は報われるというありがたい言葉まで…さすがです!)

 

斗和は無意識に手を合わせ、行冥を見つめる。

傍から見ると妙な光景だ。

 

その時、門の上から人が現れた。

門が開いているのに、わざわざ上から現れたのだ。

 

「何だこの荷車?お、悲鳴嶼さんよ、久しいな。……ん?お前は芋娘!」

 

「宇髄か、久方ぶりだ」

 

「ご無沙汰しております、宇髄さん」

 

(また芋娘って言ったな、派手柱め!)

 

斗和は内心舌打ちしながらも、にこやかに丁寧に挨拶する。

顔を上げると既に行冥はおらず、天元は荷車と斗和を交互に見ながら顎に手を遣った。

 

「この大量の野菜は何だよ?…お前が野良着じゃねえの珍しいけどよ、いつでも地味だな」

 

「これはうちの畑で穫れたものです。後で皆さんにお配りしますから、持って帰って下さいね」

 

淡々と答えた斗和は、荷車を引いて奥へ行こうとしたがびくともしない。

振り返れば、天元が手を掛けいるではないか。

 

「ちょっと放して下さい!」

 

「いーやそうはいくか!芋娘、お前俺に嘘吐いただろ!?」

 

天元は斗和をじっと見据える。

無視して行きたいところだが、斗和は観念して荷車から手を放した。

 

「…嘘?嘘なんて吐いては…」

 

しらばっくれようと視線をあちこちに向けるも、天元からの圧は弱まらない。

柱になれば、いつかは追及されると思っていた。

斗和は昨年、天元に会った時に嘘を吐いたのだ。

 

「お前な、この後に及んでまだしらばっくれる気かよ?下弦を倒したのに柱にならなかった隊士ってお前だよな?しかもその前にも鬼を五十体倒してるそうじゃねえか。で、数ヶ月前に下弦を二体倒したのもお前で、やっと柱になったんだろ?」

 

そうだよな?と、天元は凄む。

荷車から手を放さないその顔は真面目で、斗和は驚く。

 

怒ったのかもしれない。

確かに嘘を吐いたが、天元に教えると周囲がざわつきそうで言わなかった。

 

「それによ、お館様の文で知ったが、お前は俺と同期らしいじゃねえか。全然気付かなかったぞ」

 

「気付かないのは、私が地味だから宇髄さんの眼中に入っていなかったんでしょう?それに、柱の前で実はあなたと同期なんですとはなかなか言えませんよ」

 

斗和は、なぜ天元がこんなにも詳しく知っているのか気になった。

考えられるのは、斗和が柱を受けた際に、耀哉が他の柱にも報告していた可能性がある。

経緯をかなり詳しく知ってるので、それ以外考えられない。

 

「柱については引き受けはしましたけれど、いずれ九人揃いますからその時は退かせて貰います」

 

斗和の言ったことに、天元は眉を顰める。

 

「…歴代の柱でさえ九人揃うことは滅多になかったらしいが、揃う時が来るとでも?」

 

(まずい!いずれ九人揃うと口に出してしまった)

 

だが斗和は、必ず揃う日が来ることに嘘は言えなかった。

 

「揃いますよ、いつかきっと」

 

真剣に天元を見据えると、彼は荷車から手を放して消えてしまった。

やはり怒らせてしまったかもしれないが、斗和はまあいいかとふーっと息を吐いた。

 

この時、天元が何を思ったかは分からない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。