※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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柱の皆さん②

天元がいなくなった後、斗和はまた荷車を引き塀伝いに奥に行く。

 

音を聞いたのか、隠が二人現れた。

 

「あっ!いいところに。あの、これをですね……」

 

耀哉への野菜は麻袋に詰めているので、そのまま隠に台所まで運んで貰った。

重いのでよたよたとした足取りになっている。

斗和は、自分が運べばよかったかなと思った。

 

杏寿郎の分はさつまいもを多めで詰めているが、今日の会議はあの会議なのかどうか分からない。

斗和は、もう一人の隠にさり気なく聞いてみることにした。

 

「私、柱合会議は初参加なんです。柱だけじゃなくて、一般隊士も参加するんですか?」

 

「いえ。名前の通り、基本的には柱のみが参加されます。…あ!今日は炎柱の代わりにご子息の一般隊士が来ています」

 

(やっぱり…!)

 

「そうなんですね、分かりました。ありがとうございます」

 

斗和は、やはり杏寿郎だと確信する。

 

「あ、じゃあこれ!その一般隊士にも、帰りに渡して欲しいんです」

 

パンパンに詰まった麻袋を指差すと、隠は「はい」と答える。

 

「土柱様からと伝えればよろしいですか?」

 

斗和は頷く。

 

杏寿郎とは数年前に蝶屋敷で会ったが、挨拶を交わしてはいない。

今日もそれどころではないが、受け取ってはくれるだろうと思った。

 

他の柱には好きなだけ詰めて貰うことにし、残ったら隠の皆さんでと告げる。

 

「…残りますかねえ?」

 

怪訝な顔を向ける隠に、斗和は足りなかったかなと思った。

 

「残らなかったらまた持参しますよ。よかったら、いつでもうちに来て下さい。野菜ならたくさんあります」

 

「ではそのうちに伺うかもしれません。土柱様の屋敷は、家より畑が広いと隠の間で有名ですよ」

 

斗和と隠は、しばし談笑した。

 

その後荷車から離れ、少しくらいならいいだろうと庭を散策する。

 

ここは最初に訪れた本部とは違う場所だ。

産屋敷邸は、常に同じ場所にあるわけではない。

二年程で屋敷を替えている。

それは鬼の始祖・鬼舞辻無惨の追跡を逃れる為だ。

無惨は鬼殺隊、特に本部の耀哉の居所を掴もうと動いている。

刀鍛冶の里もだが、要となる場所だけは悟られてはならない。

鬼殺隊は、過去に幾度か壊滅に追い込まれたこともあった。

 

それでも残った者達で何とか立て直しをはかり、今日(こんにち)まで続けてきたのだ。

斗和が知る鬼殺隊は、ほんの一部でしかない。

あと三年で無惨が倒される。

それをを確実にするべく、斗和は今できることをしようとしている。

 

様々考えながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。

 

「あ!」

 

振り返ったそこには、二年前に蝶屋敷で会ったきりの胡蝶しのぶがいた。

以前より大分成長した姿だった。

まだ幼さはあるが、綺麗で可愛い少女である。

 

「蟲柱様!その節はお世話になりました。蓬萊斗和と申します。よろしくお願いします」

 

「ご丁寧にどうも。あれからあまり蝶屋敷へはいらっしゃってないようですね。野良着姿の隊士が柱になったと聞き、あなたを思い出したんですよ。私は胡蝶しのぶです。様付けは不要ですから、よろしくお願いします」

 

斗和はしのぶの声と柔らかな喋り方に、美しい人は全てが美しいと感心する。

 

しかしその笑顔は二年前とは微妙に違い、どこか貼り付けたようである。

おそらく姉の胡蝶カナエが死んだからだ。

しのぶは既に、この小さな体に藤の毒を取り込んでいるのだろうか。

 

まだ先のことだとしても、いずれはそうなる。

斗和は涙が出そうになり、慌てて庭木に顔を向けた。

しのぶは先に行くと告げ、去って行った。

 

斗和はしばらくぼんやり庭木と向き合っていると、視界の隅に人影が映る。

 

(あの特徴的な半々の羽織は!)

 

半々の模様の羽織を着た男は、どこか一点を見ている。

斗和はその男に聞きたいことがあり、話し掛けようと走った。

 

突然走って来た斗和に怪訝な顔を向けた男・冨岡義勇は、視線をずらした。

綺麗な青い瞳に吸い込まれそうだと、斗和は思わず凝視してしまう。

 

「初めまして、あの水柱様ですよね?私、土柱に任ぜられました蓬萊斗和と申します。どうぞよろしくお願いします」

 

丁寧に頭を下げるも、何の返答もない。

斗和の視界には白い玉砂利と義勇の足しか映っておらず、頭を上げていいものか悩む。

 

「………」

 

「………」

 

(ちょっと、何か反応してよ!このままっておかしいんだけど……よしもう上げる!)

 

斗和がゆっくりと頭を持ち上げると、じっと見つめてくる義勇。

本当に美男子だと思い、見惚れる。

天元といい伊之助といい、男でここまで綺麗な顔をしているのは狡いと思った。

彼らの中にいては、傷のある斗和は面が必要じゃないのか。

 

(お面…今度刀を整備に出す時、灼白銀(やしろがね)さんから貰おうかな)

 

一つあれば便利かもしれないし、などと本気で考えている。

考えてみれば傷の女より、ひょっとこの面の方がまだ人前に出せる顔だ。

斗和は卑屈になる。

 

義勇はずっと斗和を見ているも、何も言わない。

もしや顔の傷について聞きたいのかもしれないと思い、口を開く。

 

「あのこの顔……」

 

「俺は水柱じゃない」

 

(は?)

 

思わず斗和は口を開いたまま固まる。

長い沈黙を経て出た言葉がそれなのかと思うと、斗和はゲンナリした。

 

思わず突っ込みたくなったが、どうにか心を落ち着かせる。

義勇は柱ではないとか言ったが、マタギの任務で"俺たちは文字通り柱"と語っていた。

斗和はそれを知っているので、首を傾げる。

しかしよく考えてみると、あの任務は炭治郎に会った後のことではないかと思った。

あそこで何か思うことがあっての発言なのかもしれない。

 

(でも柱稽古で水柱じゃないと炭治郎君に言っていたし…よく分からない人だな)

 

斗和は考えるのが面倒になりやめた。

 

「蓬萊と言ったか……俺は冨岡義勇だ」

 

やっと挨拶してきた義勇だが、やはり口下手に加え口数も少ない。

なんだか疲れるな、と斗和は思った。

実弥や小芭内が嫌うのも理解できる。

 

(顔はいいのに残念な人だ。あ!そうだ!)

 

斗和は義勇に白けた目を向けると、当初の目的を思い出した。

義勇に、炭治郎に会ったかどうかを確認したいのだ。

おそらく来年だとは思うが、念の為に聞くことにした。

 

「聞きたいことがあるんですが、最近雪山での任務ってありました?」

 

「ない……今は秋だ」

 

「……ですよね、失礼しました」

 

(そうだ、今は秋……雪はまだだ)

 

斗和は恥ずかしさに顔に熱が集まるのが分かる。

一方の義勇は、既に顔を逸らしどこかを見ている。

 

すると横から禍々しい空気が現れた。

 

「何冨岡なんぞに顔を赤らめてやがる」

 

白銀髪に幾筋も傷の走る顔。

体中傷だらけで胸元全開の男は、舌打ちをし斗和を一瞥した。

 

「蓬萊の顔が赤らむと、不死川は嫌なのか?」

 

義勇がいきなりおかしなことを、これまた飄々と言った。

斗和は思わず凝視する。

 

(何言ってるの、この人!)

 

「アァッ!?冨岡ァふざけたこと言ってんじゃねェぞォ!」

 

目を吊り上げる実弥は、今にも義勇に喰ってかかりそうだ。

 

「不死川さん落ち着いて下さい!今のは、私が秋なのに雪山の話しをしたから…」

 

「そろそろ始まるから俺は失礼する」

 

義勇はさっさとその場からいなくなり、斗和は実弥と二人だけになった。

 

実弥はなぜ常に喧嘩腰なのかと思った。

そして斗和は、実弥と二人になると非常に気まずい。

会うのはあの手合わせ以来だが、あのような醜態を見せたので本音は二度と会いたくなかった。

 

(きっと柱に相応しくない私がいるから苛ついているんだろうな…)

 

「あの、この前は大変失礼しました。醜態ばかりですみません」

 

「少しはまともになったんだろうなァ?この後また来い、手合わせしてやる」

 

「えっ!?ですが今日は荷車が、その…」

 

「荷車ァ?あそこにある野菜詰んだあれはお前のかァ?」

 

「はい。うちの畑で野菜を作っています。できたらお館様に差し上げる約束なんです。柱の皆さんの分もありますから、後でお持ち下さい。ですから荷車持参では遅くなりますので…」

 

斗和は、なぜ今日も実弥と手合わせしなくてはならないのかと顔を引き攣らせる。

実力からしても実弥には敵わないと思っており、更に怖くて萎縮してしまう。

普段のようににはできないのだ。

 

(手合わせ好きなのかな?あ、継子がいないから張り合いがないんだ。なら今度、佳成をお願いしようかな)

 

自分は嫌なので、佳成に押し付けようとする斗和だった。

 

「別に構わねェ。俺もお前も任務は夕刻からだろォ」

 

(えー!?いや構います!こちらが構います!)

 

実弥の返答に、斗和は心底嫌になった。

なぜ荷車を引き、風柱邸まで行かなくてはならないのか。

わざわざ精神的に痛めつけられることをしに行くなど、苦行でしかない。

そして斗和は、稽古をするなら行冥がいいと思っている。

 

しかし怖くて嫌ですと言えるわけもない。

なぜこうなるのかと思いながら渋々頷いた。

 

「分かりました…」

 

 

 

いよいよあの柱合会議が始まる。

斗和は内容を知っているので、それよりもその後の稽古のことで頭がいっぱいだった。

 

 

 

 

 

_________________

※刀鍛冶師・灼白銀(やしろがね)

 

斗和の特殊日輪刀を造った人。声が低い。現在35歳。鋼鐵塚蛍の一歳上。

 

 

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