※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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おはぎ

斗和が柱合会議から帰宅すると、上機嫌なのに気付いた佳成が怪訝な顔を向ける。

 

「…今度はやけに機嫌がいいですね?二週間前は泣いて帰ってくるから驚きましたよ。柱合会議は、そんなに感情の起伏が激しくなる場所なんですか?」

 

それは斗和だけだが、前回は実弥との手合わせさえなければ泣くことなどなかった。

今日も会話はしないままだ。

 

斗和は、気まずいと思いながらも言われたことを考える。

知らずに自分の行いが、夏世に嫌な思いをさせていたかもしれないと気付かされた。

声に出して気持ちを確認できたことは、良かったのだ。

指摘されなければ、分からないままだったからだ。

 

実弥には感謝しなくてはいけない。

だが、顔を合わせたくない。

最初も二回目も、斗和は手合わせの後に怒られてばかりだった。

 

(怖いよ…)

 

実弥の方も、斗和の顔は見たくもないと思っている可能性が高い。

 

しかし、斗和は未だに藤の家まで運んで貰った礼をしていなかった。

あれだけの距離を運び、言葉だけでは足りない。

何かないかと考える。

 

やはりおはぎかと思うも、それをどうやって渡すかだ。

 

(…そうだ!佳成の稽古!つけてくれるって言っていた)

 

斗和は早速、鍛錬に戻っていた佳成を追いかける。

 

「佳成!あのね、不死川さんが佳成に稽古をつけてくれるって。私とだけじゃ単調になるから、お願いしてきたの。明日にでも行ってきて!」

 

手を合わせて頼み込むと、佳成は不思議そうに目を丸くした。

 

「不死川さんって…え!風柱ですか!?行くのはいいですけど、どういう流れでそんな話しに?仲がいいんですか?」

 

仲がいいならば、毎回あんなことにはならない。

斗和は即座に否定する。

 

「よくない、むしろ悪いよ。前にちょっと手合わせをしたの。その時に継子の話しになって、流れでね」

 

仲が悪いのに、なぜ継子の稽古の話題になるのか。

佳成は益々疑問が湧いた。

「あの人の打ち込み稽古は、血反吐を吐いても何してもやめないからね。失神したら一区切りなんだって。無惨が相手だと思い込めばなんとかできるよ、頑張って!」

 

「……分かりました、じゃあ明日行きます」

 

佳成は諦めたように遠い目をして、頷く。

あとはおはぎだと、斗和は次は畑へ向かう。

 

「夏世ちゃん!」

 

畑で収穫後の片付けをしていた夏世に声を掛ける。

 

「おはぎこしぇれるが?明日佳成が風柱んどごさ稽古さ行ぐはんで、持たせでけろ(おはぎ作れる?明日佳成が風柱のところに稽古に行くから、持たせてあげて)」

 

「分がっだ。斗和ちゃんは行がねの?(分かった。斗和ちゃんは行かないの?)」

 

「おらは行がね。じゃ頼むな!(私は行かない。じゃあ頼むね!)」

 

とんとん拍子で話しが進み、斗和は満足する。

これで佳成におはぎを持たせ、稽古をつけてもらえばいい。

おはぎで少しでも機嫌がよくなりますようにと、祈ったのだった。

 

 

 

 

───────

──────

翌日。

夏世の作ったおはぎを持った佳成が、実弥の家に向かう。

それを見届け、斗和は自室へ向かった。

 

早速杏寿郎に、手合わせの文を出すのだ。

 

横切った台所で夏世から茶とおはぎを渡されたが、嫌いだからごめんと返した。

実は斗和は、おはぎは嫌いである。

大福も団子も羊羹も食べるが、おはぎだけは嫌いだった。

田舎にいた頃は、母親や弟妹たちがよく作っていた。

餅米を潰すことを半殺しにする、皆殺しにするなど物騒なことを言いながら手を動かしていた。

斗和はそれを見ていた。

 

そう。

作りもしていないし、食べてもいないのだ。

食わず嫌いというものかもしれないが、斗和はあれだけはいくら腹が減ろうと食べる気にはならなかった。

 

その斗和が嫌いなおはぎが好物というのが、実弥だ。

好物を超えた大好物で、義勇の鮭大根愛と同等だと思っている。

 

なぜなら、柱稽古で休憩中食べていた香りを炭治郎に気付かれていた。

 

(あの泣く子が更に泣く、凶悪な風貌言動の風柱が…おはぎが好き。あーこれ皆に言いふらしたい!)

 

斗和は筆を持ちニヤリとする。

が、次の瞬間固まる。

 

なぜそれを斗和が知っているのか。

 

実弥が自ら"俺はおはぎが好きなんだ"などと言うわけがない。

斗和は当然ながら、本人から聞いていない。

 

(まずい…!)

 

瞬く間に青ざめていく。

よかれと思いおはぎを持たせたが、数ある甘味でおはぎを選んだ理由を聞かれたら困ってしまう。

しかも甘味なんて食べそうにもない実弥にだ。

 

こうなると、佳成がうまく言ってくれることを願うしかない。 

 

(頼む!間違っても…師範はおはぎ嫌いなんですけど、不死川さんに持っていけって言うから、なんて言わないでよ!大丈夫かな…)

 

斗和はガックリと項垂れる。

いい案だと思ったのは間違いであった。

どうしてよく考えないで動いたのかと、後悔する。

 

それでも杏寿郎からは、さつまいもが好きと聞けた。

これからは堂々と持って行けるのだ。

煉獄家に行くときは、夏世に教えて貰い芋羊羹を作って行こうと決める。

 

 

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