※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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煉獄槇寿郎

斗和は、しばし杏寿郎に思いを馳せボーッとしていた。

 

「いけない、早く書かないと」

 

斗和は改めて文机に向かう。

 

杏寿郎には手合わせを頼んだが、本来の目的は槇寿郎に会い立ち直らせることである。

 

これは斗和が以前の記憶を戻し、初めてと言える行動だった。

記憶の中の出来事を変える行為だ。

 

斗和が鬼殺隊に入ったのは、無限列車で杏寿郎の命を助ける為だ。

 

実のところ、槇寿郎のことはどうでもよかった。

このままふて腐れていようが、肝臓を悪くして死のうが、どうでもいいと思っている。

どうでもいいと言う言葉は、それこそ槇寿郎の口癖だ。

皮肉ともとれる。

 

だが斗和は、杏寿郎の命と共に彼を取り巻く想いも救いたいと思った。

そうでなければ、本当の意味で杏寿郎を救うことにはならない。

それには、父親である槇寿郎を変える必要がある。

 

斗和は仮説を立てていく。

 

まず杏寿郎を救えたら、槇寿郎は変わるか?

答えは変わらない。

 

杏寿郎が生きていた場合、確実にこのままだ。

死んだからこそ変わったわけで、生きていればあのままである。

 

だが、槇寿郎は息子が死んですぐ変わったわけではない。

 

槇寿郎が後悔したきっかけは息子の死に加え、炭治郎が伝えた杏寿郎の言葉だ。

息子からの"体を大切に"というたった一言が変えた。

これは単純だが相当に難しい。

 

この言葉、生きている杏寿郎が同じことを告げたら変わるのだろうか?

答えは絶対に変わらない。

 

それ程に杏寿郎の死は重く、意味があった。

槇寿郎が、あのように酷く変わった理由は様々ある。

斗和は、歴代炎柱の書を見たのはきっかけに過ぎないと思っていた。

例え見なくとも、妻・瑠火の避けられない死と、きりがない長年の任務。

これらは、いずれ槇寿郎を追い込んだ。

 

だからこそ悩む。

どうすればいいのか、どうするのが最善なのか。

当初は、諭して変わるとは思えなかった。

槇寿郎本人より杏寿郎さえ生きればと、それだけだった。

 

だがそれはできない。

斗和はいくら考えても、いい案は浮かばなかった。

とにかく今の槇寿郎と話し、僅かでも変えていく。

変わらなくとも、最大限の努力をしようと思った。

 

会話しても、否定しかしないであろう槇寿郎に会うのは気が重い。

 

それでも斗和はやるしかなかった。

 

筆を動かしながら、思う。

 

どうか無意味と言わないで欲しい。

杏寿郎を助けたくてここにいる女の存在を否定しないで欲しい。

記憶がある意味を、生きる意味を否定しないで欲しい。

 

 

ドクン…!

 

 

その時、聞こえないはずの心臓の音が大きく聞こえた。

 

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