※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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鎹鴉は喋らない

その後斗和は、耀哉に日輪刀を特殊な形状でお願いしたいと言った。

すると耀哉は、ではすぐに刀鍛冶師を寄越す手配をすると返答した。

 

斗和は我儘をすいませんと、何度も丁重に謝罪をしつつ更に我儘を重ねようとしていた。

 

それは任務についてだ。

 

斗和は、土の呼吸を使っていて感じたことがあった。

いくつか編み出した型、その技の範囲がなかなかに広いのだ。

師の岩の呼吸も相当なものだが、土の呼吸はそれ以上かもしれないと思っていた。

 

要因として、斗和は力加減が苦手だった。

とにかく技を出す時は全力を出す。

よって、周囲をめちゃくちゃにしてしまうことも多々あった。

一対一ならば気兼ねはしない。

だが隣に仲間がいて、もし巻き添えを喰らわせてしまったら?と気になって集中できないのである。

 

斗和は一年間、育手以外と接することなく過ごしてきた。

そのせいか同じ空間に誰かがいたり、見られながら戦うのは居心地が悪いと感じていた。

なんとも言えない緊張や焦りが生まれる。

 

最終選別では悲鳴は聞こえど、誰とも会わなかったので気兼ねなく刀を振るえたのだ。

 

つまるところ一人が楽なので、任務は単独のばかりを回してもらうよう頼むのだ。

新米隊士が鬼殺隊の当主に文を出すなどありえないし、聞き入れられるか分からない。

 

だが、斗和は出すと決めた。

 

 

 

まずは師に報告しなければと、斗和は七日間滞在した藤襲山を後にした。

 

 

疲れているはずたが、東根山へと帰る足取りは軽かった。

 

斗和はその道中、相棒となった鎹鴉に話しかけてみた。

 

「おらは蓬萊斗和、十三歳。おめはんは?(私は蓬萊斗和、十三歳。あなたは?)」

 

「…………」

 

鎹鴉なは斗和の問いかけに答えない。

名前がないのだろうか。

 

「んだばよ、名前がねんだば呼びにぐがらおらが付けていがべが?おめはんは、きまりや掟という意味の令に和物の和で令和。どうだえ?(だったら、名前がないと呼びにくいから私が付けてもいいかな?あなたは、きまりや掟という意味の令に和物の和で令和。どうかな?)」

 

「…………」

 

またもや返事はなかったが、かなり大人しい鴉なんだろうと思うことにした。

令和とは、斗和が前に生きていた時代の元号である。

鴉が雄か雌か分からないが、大丈夫だろうと、斗和は小さく頷く。

 

鎹鴉・令和がこの時喋らなかったのは、斗和の方言に驚いて言葉を失ってしまったからだった。

 

 

 

 

──────

─────

東根山。

その中腹の畑で、師が畑作業をしているのが見えた。

 

「師匠ー!帰ってきましたー!」

 

腕をぶんぶん振り、精一杯声を張り上げる。

おそらく足音で気付いていただろう師は、驚いた様子もなく振り返る。

隻眼になろうと元・柱であり、貫禄があるなと斗和は改めて思った。

 

「師匠!戻りました!私、私、最終選別に合格したんです!師匠がこれまで教えてくれたから頑張れたんです!生き残れたんです!私……!」

 

斗和は鼻の奥がツンとし、視界がぼやける。

すると次の瞬間、師の腕の中にいた。

 

「よく頑張ったな、斗和。よく頑張った!お疲れさん」

 

温かい大きな手に頭を撫でられ、涙腺が一気に緩む。

 

「うっ、うっえっうわあーん!!」

 

斗和は、師に抱き着いたまま、子供のように泣いてしまった。

確かに斗和は見た目は十三歳になりたての小娘だ。

だが中身というか以前は二十九歳だったので、些か恥ずかしく思えた。

しかしそんなことも気にならないくらい、安堵の気持ちが大きかった。

 

しばらく泣いたあと、頭上から声が聞こえた。

 

「におうから風呂に入れ」

 

容赦ない言葉に、斗和は師から離れ家に向かった。

 

「はーい。…自分だって加齢臭がするおっさんなのに」

 

「おい聞こえてるぞ!」

 

その声に、斗和は慌てて風呂へ向かった

 

 

 

 

 

◇

七日ぶりの風呂に入り、上がってすぐに斗和は気を失うように眠ってしまった。

 

その時見た夢は、暗がりの先から聞こえるため息と舌打ち。

そして斗和を射貫く冷たい目だった。

 

 

 

 

(あれは誰…?)

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