杏寿郎に手合わせの文を出して、すぐに返事が来た。
早速明日来てくれと書いてあった。
その夜は先に警備区域を見廻り、並々ならぬ意気込みで任務に臨んだ。
斗和は勢い余って転び、顔を擦り剥いた。
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斗和はいつも通り朝方帰宅した。
仮眠もせず握り飯をたくさん作り、糠漬けも用意する。
村田も美味しいと言った焼きお握りだが、杏寿郎はどう思うか気になった。
あとは芋羊羹を作れば準備万端だ。
斗和は前日、夏世に早く来るよう伝えていた。
そろそろかと思っていると、任務帰りの佳成が疲れ切って台所に顔を出した。
佳成は昨日、実弥のところに稽古に行った。
鴉から、帰らずそのまま任務に行くと報告されていた。
稽古のせいもあるのか、佳成は珍しくぐったりとしている。
「随分疲れてるね、大丈夫?」
「いや…昨日の任務地が風柱邸からの方が近かったんです。だからそのまま向かったじゃないですか。そしたら伝令が行き違ってたらしくて、反対の、しかも三つも先の町だったんですよ!結局移動時間ばかりかかって…着いたらたまたま近くで任務だった隊士が応戦していたんです。二人で倒したんですけど、遅いってかなり怒られました」
佳成は盛大なため息を吐き、壁に寄りかかっている。
伝令の行き違いはたまにあることだ。
斗和は柱になってからは無かったが、一般隊士の時は何回かあり大変だった。
「それは気の毒に…お疲れ様。ところで、不死川さんの稽古はどうだった?」
「ああ!あの人の打撃の速さと風圧はすごいですね。全然打ち返せなかったんですけど、なんとか漆ノ型を撃ったんです。そしたら木刀にひびが入ったから、あとは素手で。そういえば…」
佳成は、いつぞや土の呼吸を初めて出した時を思い出す。
斗和も実弥同様に、木刀を手放し最終的に素手で向かってきた。
まさか二度も体術で応戦するとは、思ってもみなかったことだ。
「師範も前に木刀を手放して殴りかかってきましたよね?まさか不死川さんも同じことをしてくるとは思わなかったです。二人はやることが似てますね」
斗和は聞き捨てならない言葉に「はぁ?違うし!」と反論する。
「とにかくそれで、俺の蹴りが不死川さんの脇腹に入ったところでお終いです。水と茶を貰いました」
率直に斗和は、聞く限りではなかなかまともな稽古だと思った。
最後が素手になるのは実弥らしいところだ。
決して自分と似てはいないと、斗和は再度否定する。
「…あ!おはぎ、師範にもお礼伝えろって言ってました。師範の嫌いな物をわざわざあげるから、あの人はおはぎ好きなんですか?」
斗和はギクリと肩が跳ねる。
やはり聞いてきたか、と身構えた。
「さ、さあ?土産といったらおはぎかなと思って…そう!私の田舎だと土産はおはぎなの!だから…あの、その、私がおはぎを嫌いだとか不死川さんがおはぎを好きなのかとか、まさか言ってないよね…?」
(どうか余計なことは言ってませんように!)
願うも、次の瞬間それは消え去る。
「え、言いました。そうだ、そしたら鬼みたいな顔になって…あ、夏世!おはよう!」
「おはよう、佳成さん。任務お疲れ様でした。あら、随分疲れてますね」
「そうなんだよ、実は昨日…」
それから夏世に揺さぶられるまで、斗和は真っ白になり動けなかった。
実弥に会ったらおしまいだ、などと思い項垂れる。
◇
そして斗和は、夏世と二人で芋羊羹を作った。
固めている間に風呂に入り、仮眠をとる。
「斗和ちゃん、落とさねよう気付けでな(斗和ちゃん、落とさないように気をつけてね)」
「うん!」
(いよいよ煉獄家だー!)
握り飯、糠漬け、芋羊羹を持った斗和は勢いよく家を飛び出した。