包帯を取れば、滲んだ血が彼の腕を赤く染め上げている。
見ると、治りかけの傷に新しい傷が交差していた。
痛そうだなと顔を顰めながら手当てをしていく。
あれから何も言わないので、こちらも無言だ。
怒ってはいないと思う。
屋敷に着いて手当てをするための道具を渡されたのだが、素直に手当てさせるなどおかしい。
知っている彼は、粂野さんが心配してもうるさいと一喝していた。
稀血だから自分の血を使って戦うこともあるんだろうけど、腕も胸元も傷だらけにして平気な顔をしてるなんて……
「不死川さんの血は、鬼が酩酊状態になる稀血なんですよね?」
「よく知ってんなァ。共同任務したことねェだろォ?」
確かにこの目で見たことはないが、勿論私は知っている。
それに以前、隠に転向した島本さんから聞いた。
柱になる前からも、隊の中で不死川さんは相当有名だと思う。
「何年か前に噂で聞いたんですよ。強いんだから、稀血を利用しなくても倒せるんじゃないですか?」
「うるせェ。それより来たんだから手合わせしろォ」
そう言うと、大人しくしていたのが嘘だったかのように、どこかへ行ってしまった。
また手合わせしなきゃならないのか。
帰って一人で鍛錬するつもりだったのに。
ため息を吐き縁側から立ち上がった。
戻って来た不死川さんから木刀を渡され、構えたとたん激しい打ち込みが襲う。
相手は無惨、憎き無惨!!
私は前回の手合わせから、彼を無惨だと思い込んでいる。
そのことは口が裂けても本人には言えない。
とにかく最初は、怖くて怯んでしまい腰が引けて何もできなかった。
さすがに二度目は情けない姿を見せるわけにいかず、無惨だと思い込んだらなんとか乗りきったのだ。
相変わらず容赦のない打撃である。
何せ隙が全く無い。
佳成はこれを受けたわけだが、いやあよくやった。
打撃も速い鋭い強い怖い、更に顔も口調も恐怖しかないこの人に対してよく頑張ったと思う。
こちらも打ち返してはいるが、やはり圧されている。
不死川さんには、技を出さないと反撃できそうにない。
一旦攻撃を弾き後方へ。
─土の呼吸 陸ノ型
この技は、土の粒子を纏った斬撃が撫でるように幾筋も舞う。
相手の視界は繰り出す技の土煙により遮られ、その斬撃は広範囲に及ぶ。
自らの特注日輪刀ならば本来の威力を発揮する。
だが木刀では、斬撃の威力も土煙の範囲も圧倒的に落ちてしまう。
うっすら見えていた不死川さんの影が濃くなり、まずいと思った瞬間それは襲いかかる。
─風の呼吸 肆ノ型
地上から空中に向けて、舞い上がる砂塵のような斬撃を連続で繰り出してきた。
風の呼吸だ。
粒子舞撫煙(りゅうしぶぶえん)と似ている技だが、その風圧も斬撃の威力も範囲も全て上回る。
─土の呼吸 㭭ノ型
土の壁で防御し、すぐさま後方から攻撃しようとした。
だが跳び上がり上半身を大きく捻った瞬間、背中に激痛が走る。
攻撃はできないが受け身は取るはずだった。
しかし、ぐっと喉がつかえたようになり、そのまま不死川さんの背後に盛大に転がった。
すぐさま立ち上がるも、不死川さんはやる気を無くしたのか構えていない。
「すいません!」
「脇か背中、痛めてんだろォ?」
気付かれた…
ああまただ、情けない。
「情けねェ顔してんじゃねェ。茶ァ持ってくるから縁側で待ってろォ」
彼はそう言い、玄関に消えた。