※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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蛇柱・伊黒小芭内

風柱邸から帰宅した斗和は、庭で一人鍛錬に明け暮れる。

 

強くなる為ならどんな犠牲も厭わない、そう誓った。

顔を裂かれようが体中傷だらけになろうが、刀を振るえて強ければどうでもよかった。

 

斗和は、腕力も体力も男並にあると自負していた。

だがそれも本物の男には敵わない。

甘露寺蜜璃のように特殊体質でもない。

岩の呼吸は絶対に会得できない。

 

何もかも中途半端に思えてきた。

 

斗和は苛立ちが濃くなり、瞬発力の鍛錬をしていた佳成に木刀を渡し打ち込ませる。

斗和の只ならぬ気迫を感じたのか、佳成はいつも以上に本気でかかってきた。

速さはまだまだ劣るが、打撃の威力や弾かれた圧など増している。

剣捌きも淀みがなくなっている。

ここ最近で、また一層強くなったのだ。

 

 

─土の呼吸 弐ノ型 土石流

 

─土の呼吸 弐ノ型 土石流

 

 

同時に撃つ技がぶつかる。

この技は、文字通り土石流のように一気に押し出す力が大きい。

ぶつかり合うともの凄い力が発生する。

互角に思えるが、斗和は腕力で勝る佳成に押し返されてしまう。

斗和はすぐに背後を取り、背中に回し蹴りを食らわせた。

 

「たった二歩で真後ろを取るなんて…その瞬発力、本当に羨ましいですよ」

 

倒れこそしないものの、前のめりになった佳成は、振り向きながら苦笑いしている。

 

「師範の蹴り、威力が増しましたね」

 

斗和は分からなかったが、受けた者がそう感じるならそうなのだろうと思った。

それよりもと、斗和はある変化に気付く。

 

「ねえ、もしかして階級上がったんじゃない?」

 

「え、そうかな…?」

 

佳成が握り拳を作れば、浮かび上がる【乙】の文字。

斗和は、"おつ"でなく何だったかと考える。

 

「あー、乙(きのと)!いつの間に…師範すごいですね!」

 

(きのとか、そうか)

 

斗和は、未だに階級の呼び方を全て分かっていなかった。

 

乙ならば上から二番目である。

最近の佳成の動きを見ていれば、甲になるのも間もなくだと思われた。

それはつまり、強い鬼と対峙するのが益々増えるということだ。

いずれ十二鬼月と遭遇することも出てくるかもしれない。

 

斗和は今まで大小の怪我をし、血鬼術にも掛かってきた身として、感じたことはいくつかある。

あらゆる鬼の中でも、やはり十二鬼月となればその強さが別格である。

実際何度か対峙したからこそ分かる。

死を覚悟してしまうのだ。

避けられない死はたくさんある。

 

今でも死と隣り合わせの任務だ。

この先を考えると、斗和はやるせない気持ちになった。

 

その後は稽古を切り上げ、斗和は再び自分の鍛錬に向かった。

 

 

 

 

──────

─────

二日間に渡った任務が終わり、斗和は腕を伸ばし体を解す。

ふと上を見ると、上空に鴉の令和の姿がない。

どこに行ったのか。

 

帰路に着いていると、前方から村田が歩いてきた。

その足取りはよたよたしており、全身から疲労感を漂わせている。

俯いているせいか、斗和の姿には気付いていない。

 

「村田さーん!久しぶり!…ちょっと、大丈夫?」

 

斗和は駆け寄り話し掛かるも、村田はため息を吐いてまたもや俯く。

 

「…蓬萊さん、久しぶり…ねえ聞いて!聞いてくれる!?」

 

いきなりぐわっと肩を掴まれ、揺さぶられる。

切羽詰まったような村田の姿に、斗和は何事かと思った。

 

「分かった聞く、聞くから落ち着いて!」

 

村田の背を擦り、斗和は道端の石に腰掛けさせた。

 

「村田さんてば、こんなにやつれちゃって…」

 

僅かに頬がこけた村田は、みるみる猫背になり小さくなっていく。

 

「だって酷いんだよ…」

 

話しを聞くと、昨夜の共同任務で指揮を取った男がかなり厳しい人だったと。

村田がもたついていたら、鬼を倒した後で相当怒られたそうである。

 

「俺さ、任務前から腹が痛くて。任務中ちょっと蹲っちゃったんだ。そしたら弛んでる!とか自覚が足りない!とかネチネチとずーっと説教だよ!?他の皆は帰ったのにさあ…」

 

村田は怒りを全面に出し「くそー!」と叫んでいたが、帰って寝ると言い去って行った。

 

斗和は考える。

今の話しの男は、ネチネチという単語から推測するに、伊黒小芭内ではないかと思ったのだ。

 

小芭内がいつ柱になったのか、いつ鬼殺隊に入ったかは不明だ。

八丈島で煉獄槇寿郎に助けられ、その後どう過ごしたかは分からない。

 

煉獄家に身を寄せていた描写は無かったが、実際はどうだったのか。

槇寿郎ならば知っているだろうが、斗和が知らないはずのことを聞くわけにもいかない。

それよりも斗和は、槇寿郎を立ち直らせなければならない。

 

そろそろまた手合わせする頃合いだと思い、帰ったら文を書くことにした。

 

 

 

 

─────── 

──────

左右違う色の瞳、首元に白蛇を巻いた男は、斗和を見据える。

 

「伊黒生保内(おぼない)様ですよね?」 

 

斗和は極力柔らかい雰囲気を出し、更に微笑みを讃える。

ピクッと白蛇を巻いた男の眉が動いた。

 

「…今何と?」

 

斗和は、声が小さかったかなと思い幾分大きくした。

 

「伊黒生保内(おぼない)様ですよね?」

 

白蛇の男は、一度目は自分の聞き間違いだと思った。

だから聞き返したのだが、どうやら聞き間違いではないと判明した。

目の前の女は、名前を間違って覚えている。

 

「…俺は伊黒お、ば、ないだ!」

 

"お、ば、な、い"を強調した小芭内は、斗和を睨む。

初対面で堂々名前を間違えられ、腹が立った。

やはり女は苦手だと思った。

 

「!?…それは大変失礼致しました!すみません!あのへべばしら様は…あ」

 

斗和は、今度は噛んだ。

こうなると最早呆れるしかない。

僅かに肩を震わせる小芭内は、耐え兼ねて口を開いた。

 

「…人の名前は間違うし噛むし、重ね重ね失礼ではないか?そもそもあなたはいくつなのだ?」 

 

「十九歳です…」

 

小芭内は、スッと左右違う色の目を細める。

 

「俺と同じか、まあいい。上ならばどうしようかと思ったが、同じならば遠慮はいらないな。蓬萊と言ったか、そもそも初対面で名前を間違って呼ぶなど…」

 

(あー何でこんなことに…)

 

斗和は、ネチネチ攻撃に晒されながら思う。

あの後家に着くと、鴉の令和が慌ただしく飛んできて柱合会議に行けと告げてきた。

 

まだ前回から半年経っていないので、まさかと思えば伊黒小芭内がいた。

小芭内は昨夜、村田と赴いた任務で鬼を五十以上倒したのだ。

よって柱となり、緊急柱合会議が開かれた。

 

斗和は挨拶をしたのだが、名前を間違って呼んでしまったのだ。

先程会議の始めに、耀哉が名前を呼んだのは聞いた。

だが斗和は、聞き間違いだと気に留めていなかった。

訂正されるまで間違っているとは思わないので、堂々と名前を呼んだ。

 

今の今まで、斗和は小芭内を生保内(おぼない)だと思っていた。

更に蛇柱様と言おうとし、噛んでへべばしら様と呼んでしまい今に至る。

 

(伊黒さんて私より背が低い気がする。前髪ざんばらで邪魔じゃないのかな?左右違う目の色は間近で見ると綺麗だな…)

 

斗和がボーッと小芭内を見ていると、それに気付いた彼は指差してきた。

 

「おい聞いているのか?いや全く聞いていないな。その証拠に…」

 

(あーまだ続くの?)

 

いつまでネチネチ続くのか、斗和は遠い目をした。

 

「まあそのくらいにしたらどうだ!小芭内も蓬萊殿も、これからは同じ柱として切磋琢磨すればいい!」

 

「煉獄さん!」

 

「………」

 

颯爽と現れた杏寿郎に、小芭内は若干毒気を抜かれたようだ。

語気を緩め、「これからは間違うなよ」と言って帰って行った。

 

斗和は、杏寿郎が救世主に見えたのだった。

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