※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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あの人は気付く?

目的地の温泉街までは列車で移動する。

既に着物に辟易していた斗和は、今までいかに楽な格好でいたかを思い知らされていた。

 

背筋を伸ばし、歩幅は小さく女らしく。

それらは斗和にとって、苦痛の材料でしかない。

 

(あー嫌!大股で歩きたい、むしろ走りたい!)

 

そして胸周りが苦しく、呼吸困難のように感じた。

佳成にそれを訴えると、大袈裟だすぐに慣れると一蹴された。

 

 

駅がある町に着くと、斗和は前方に見知った背中を見つける。

【殺】の字を背負った白銀髪のその男は、脇目も振らず歩いている。

 

前回斗和は、口元の米粒を取った時におかしくなり逃げ帰った。

以来会っていない。

 

斗和が勝手におかしくなったので、相手に非はない。

だがどうにもその男と会う時は、去り際が穏やかでなく嫌だった。

手合わせでは毎回負け、言われたことには逆らえない。

 

斗和はそこで閃く。

せっかくこの格好なのだ。

気付かれはしないと踏んだ。

 

(よーし!からかってやろう)

 

男は斗和にはそのような態度だが、一般女性にはどんな態度をとるのか。

斗和は非常に気になった。

 

それを佳成に伝え、先に切符を買って貰うことにし別れた。

 

 

 

 

◇

斗和は背後から足早に近付き、声を掛ける。

 

「あの、すみません。道をお尋ねしたいのですが…」

 

傷のある顔の左半分を襟巻きで覆い、斗和は努めて女性らしい声色と振る舞いを心掛けた。

振り返った実弥に小さく頭を下げた。

 

「突然失礼します。道をお尋ねしたいのですが、駅はどちらでしょう?」

 

車両は見えないが、殆ど目と鼻の先にある駅を聞く。

すると顔つきを和らげた不死川実弥は、駅を指差し答える。

 

「駅ならあそこの角を曲がればすぐだァ」

 

「あらまあ!そんなに近くでしたのね、嫌だわ私ったら…」

 

斗和は、フフッと口元に手を当て上品に笑う。

実弥は黙って斗和を見ている。

果たして実弥は、目の前の女を斗和だと気付いたのかどうか。

 

「呼び止めてしまいすみません。どうもありがとうございます。では…」

 

恭しく頭を下げれば「あァ気を付けて」と小さく言い、実弥はまた歩いて行った。

斗和はくるりと向きを変えると、しずしずと歩き出す。

 

 

 

笑みがこぼれる。

 

(やった…!気付かなかった!)

 

顔を半分隠していたのは不自然だった。

だが態度からするに、実弥は斗和だと疑いもしていない様子だった。

 

(あの毒気を抜かれた顔!あァ気を付けて…だって!)

 

演技もなかなか様になっていたようだし、これなら任務に問題はない。

面白いものが見られ大満足の斗和は、佳成の待つ駅へ向かった。

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