昼餉前に起きた斗和は、台所へ向かう。
ちょうど買い物から帰宅した夏世から水を貰う。
夏世はなんだか気怠げな感じがする。
それでいてそこはかとない色香を漂わせているので、斗和はもしやと思った。
「佳成は体力が有り余ってるようだなっす(佳成は体力が有り余ってるようだねえ)」
「それは言わねぇでけろ!(言わないでちょうだい!)」
恥ずかしそうに顔を赤らめる夏世は、本当に幸せそうだ。
継子だった佳成は巣立ち、斗和の家から出た。
近くに住んでいるので、夏世はこうして頻繁に会いに行っている。
鬼は太陽を避けて活動するので、鬼殺隊の仕事は基本的に日が沈んでから夜の間だ。
一般的な暮らしとは昼夜逆転している。
斗和は、二人が会うのは昼からだと思っていた。
鬼を斬り任務が終了した達成感が、そういうことに繋がるのかもしれない。
「佳成と暮らせばええのになー(佳成と暮らせばいいのにー)」
斗和はつい口に出してしまったが、夏世は、所帯を持っていないのにできるわけがないと少し寂しそうに笑う。
百年後は同棲がごく当たり前の世である。
この時代ではそれは御法度で、ついでに恋愛結婚もあまり無いと聞いた。
難儀な時代だと斗和は思った。
昼餉ができたら呼びに行くと言われ、斗和は庭へ行く。
一人で鍛錬する日々に戻り早一ヶ月だ。
この二年、斗和はずっと稽古と鍛錬とをこなしてきた。
そのせいか忙しさに慣れ、鍛錬だけになると物足りなさを感じていた。
そうなると思いつくのは手合わせである。
斗和はこれまで実弥と杏寿郎と手合わせをしてきたが、今後は柱全員に頼もうと考えていた。
すっかり忘れていたが、斗和は前に行冥に手合わせを頼んだ。
何の音沙汰もないので、おそらく忙しいんだろうと思った。
それでも一度はあの強さを目の当たりにしたかった。
思い切って文を出してみようかと思った。
それとも柱稽古のように、天元から順に頼んで行こうか。
斗和はそこで、"芋娘"と呼んでくる天元の顔がちらついた。
(なんか今度は芋柱って呼ばれそう…やめよう)
しのぶは蝶屋敷もあるので多忙だ。
義勇は何を考えてるか分かり難く、手合わせし辛い。
小芭内はネチネチ小言ばかりだ。
そうなると、実弥と杏寿郎しかいなかった。
(…不死川さんと煉獄さんか…)
斗和は、うーんと悩む。
実弥とは、この前おかしくなり逃げ帰ってしまった。
杏寿郎に対しては、前回勝手に槇寿郎に会ったことで罪悪感がある。
千寿郎にも申し訳ない。
結果、二人には会い難いというのが現状だった。
それでも杏寿郎には、積極的に関わっていかないとならなかった。
いずれ来るあの時の為だ。
(よし、また文を書こう)
斗和は自室に戻り筆を取った。
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昼餉を食べ鍛錬していると、煉獄家に文を頼んだ鴉の令和が戻って来た。
「ありがとう!煉獄さんはいた?」
「……」
斗和が問うも、令和は何も言わない。
支給されてから、任務の伝令以外は殆ど喋らない鴉である。
今回も当然のように喋らなかった。
足に括りつけてあった文を解くと、それは杏寿郎からの返信ではなく、千寿郎からだった。
杏寿郎は数日前から任務で戻ってきておらず、戻り次第伝えると書いてあった。
本来は杏寿郎が不在の時の方が、槇寿郎に接触できる。
しかし千寿郎がいる今日は、訪ねて行くのは不自然である。
(煉獄さんにも会いたいから、次の機会にしよう)
斗和は文を懐に仕舞い、鍛錬を再開した。