鬼殺隊が死と隣り合わせだということは、最終選別の時点ではっきりと分かっていた。
今までも幾度となく隊士の死は目撃してきた。
呆気なく倒れる仲間。
目の前で貪り喰われた先輩。
打ち捨てられた後輩の遺骸。
笑って話した翌日、物言わぬ姿になることは珍しいことじゃない。
分かっていた。
大丈夫という言葉は無いことを。
特別なんてものは無いことを。
分かっていた。
「館坂佳成ィ死亡!上弦ノ壱ト遭遇!館坂佳成ィ死亡!」
分かって……いた。
分かっていたのに、現実を受け止める術を持たなかった。
分かっていたはずなのに過信していた。
その日の任務は、血鬼術を同時にいくつも使う鬼との戦闘だった。
襲われていた親子を救いはしたが、自分が喰らってしまい三半規管が麻痺してしまった。
立つこともままならず、眩暈がし、手足が痺れ動けなかった。
珍しく蝶屋敷に運ばれ、夕暮れ手前まで陽を浴びやっと術が解けた。
だがどうにも胸のあたりが気持ち悪く、その夜は見廻りもできず床についた。
そしてその翌朝のことだった。
佳成が死んだ。
上弦ノ壱に殺された。
その場に崩れ落ち、ただ茫然と目の前の空間を見ていた。
鴉の令和が寄り添っていたことすら気付かず、どれくらいたっただろう。
隠が二人来て、佳成の折れた日輪刀を差し出す。
碇に似た大きな刀は折れ、その鍔や柄は血に染まっていた。
亡骸が戻らない理由。
何もかもが現実なのだと叩きつけられ、堰を切り涙が溢れる。
折れた刀を胸に抱き泣いた。
いつの間にか隠もいなくなり、令和に嘴(くちばし)で突かれ任務に赴いた。
単独任務だったが、どうやって倒したかも覚えていない。
気付いたらまたもや令和に突かれ、帰路に着いたのだった。
ふらふらと覚束ない足取りで家に入れば、隠が一人待っていた。
文を差し出し、佳成の遺書だと告げる。
自分とそして恋人の夏世へと二通。
文を持ってきた隠に、夏世のいる藤の家に届けて欲しいと頼み自室に籠もった。
遺書を読む気にはなれなくて、夏世は今頃どうしているか気がかりだった。
あれだけ幸せだったのに、この先も幸せになるはずの二人。
すべてが終わったら一緒になると、そう宣言していたのに。
どうして、何で。
師範と呼ぶ声、凛々しい顔、悔しい顔、嬉しそうな笑顔。
浮かび上がっては消える佳成に、ただ泣くことしかできなかった。
ひたすらに泣き明かし、涙も枯れ果て水を飲もうと台所へ行けば文が一通置いてあった。
震える手で取り、開けたそれは夏世からだった。
今までの礼と、暇を貰うとその二行だけ書かれてあった。
枯れたと思っていた涙はまた溢れ出し、止めどなく流れる。
分かっていた。
隊にいる限り死ぬのは明日かもしれないと。
分かっていた。
どんなに強くなろうと、更に強い鬼がいることを。
分かっていた。
違う、何も分かっていなかった。
初めて自分を慕って来てくれた継子と、初めての同性の友人。
私は大切な二人を同時に失った。
◇
泣き疲れいつの間にか寝入ってしまうと、しばらくみなかった夢をみた。
独特の灯り、皆が手に持つ小冊子、煉獄杏寿郎、ざわつく人混みに誰かを見つける。
頭痛がして場面が切り替わり、机の上の白い紙、それを指す誰かの指。
射抜く冷酷な目。
「う…ざり…る。わか…て………んだよ…」
胸が締め付けられる。
やめてと願っても夢の中。
苦しい
苦しい
誰か助けて……