寸法を測り終わった前田まさおが帰った後、斗和は布団一式を購入するため町に出た。
借りた長屋が町から少し離れたところにあるので、歩くとそれなりに距離がある。
斗和は田舎育ちのため、店や家が密集した場所は苦手だった。
他人の目が気になり、窮屈さを感じて仕方がない。
あてもなく町をぶらついたこともなく、東根山にいた時も必要な買い出しだけをしてすぐに帰っていた。
根っからの田舎娘なのは、今後も変わらないだろうと思われる。
先に米や日用品をいくらか買い、布団屋で一式買い背負って帰宅する。
両手と背中に荷物をたくさん抱える斗和の姿は、まるで夜逃げのような格好だ。
すれ違う人の好奇の目に晒されているのは恥ずかしいが、何往復もするよりはいいと思った。
◇
やっとのことで長屋に着くと、扉の前に人がいた。
「あの、何か御用ですか?」
後ろから声をかけると、その人物は振り返り編み笠を取り頭を下げた。
「お初にお目にかかる。刀鍛冶師の
ひょっとこの面をした男は、えらく低い声で挨拶をしてきた。
「は、はい!私が蓬萊です。もしかして刀の…?」
「左様。お館様よりの命で訪ねた。何でも特殊な刀が欲しいとか?」
「そうなんです!あ、どうぞ入って下さい」
斗和は中に促し、茶を出そうと湯を沸かしながら
(刀鍛冶の里からどのくらいでここに着いたのかな?本当に皆ひょっとこのお面をつけているんだな…視野は狭くないのかな?
ちゃぶ台に煎れたばかりの茶を置き、
「早速だがどのような物を所望している?具体的に教えて欲しい」
「あ、はい。えっと……この
斗和は炊事場の壁に立て掛けていた鍬と鋤を抱え、
面をしているせいでその表情は見えないが、おそらくかなり難しい顔をしているのだろう。
(やっぱり無理難題を押し付けちゃったかな…)
沈黙にいたたまれなくなり、斗和はふとちゃぶ台を見た。
すると、
(あれっ!?いつの間に飲み干したの!?)
湯飲みを凝視していると、実際にこれらを使っている姿を見せろと言われた。
長屋の中では狭いので、二人は裏にまわる。
そして斗和は、農具としての使い方と技を出す時とそれぞれ見せた。
「一つ聞くが、そなたは一般的な形状の日輪刀では戦えぬのか?」
「いえ、戦えます。ですがどうも手に馴染まなくて威力も足りません。なので今回お願いしたんです」
「そうか…。特殊形状の刀造りは二度目だが、造るからにはそなたが納得できる物をと思う。しばらくかかるやもしれぬが必ず造り上げよう」
「ありがとうございます!無理を頼み申し訳ございません。どうぞよろしくお願いします!」
斗和は、会釈をして去っていく
最後まで面を取ってはくれなかったが、必ず刀を造ると言った。
その言葉を信じて待つことにした。
鬼狩りのために必要不可欠な日輪刀。
これがなければ始まらないのだ。
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その日の夜、斗和は耀哉に文を書いた。
隊服、日輪刀とそれぞれ頼み込み自分仕様のものを作ってもらう手配は済んだ。
やることはあと一つ、任務のことだ。
斗和は単独任務しかやりたくなかった。
一番の理由は、誰にも気兼ねなく戦いたいからである。
一人は楽だ。
誰かと一緒に戦うのは、思うように動けないのではないか。
ましてや庇いながら助けながらというのは、斗和には想像もつかない。
そして土の呼吸の技は範囲も広く、力加減が全然できていなかった。
型もまだまだ完成されておらず、中途半端で巻き添えを喰らわせる可能性もある。
これは斗和が、最終選別で誰にも会わなかったせいもあった。
誰かがいる状況下で鬼と対峙したことがないので、共闘する姿が浮かばない。
とにかく斗和は、否定的な考えばかりが占めているのだ。
他の理由としては、物語が開始するまでなるべく主要人物と関わりたくないからというのもある。
何事もやってみなければ分からないし、やれば順応するのが人間だ。
それは斗和も分かっていた。
全て単独任務のみにはできないだろうから、いくらかは共同任務があるだろう。
その時はその時だ。
だが極力無しにしてもらいたい、だから懇願する。
まだ初任務もこなしていないのに、我儘極まりない文を出す新人鬼殺隊士は前代未聞だろう。
柱でさえ任務を選ぶようなことはしていない。
(お館様、本当に申し訳ございません…!)
斗和は、何度も内心で詫びながら筆を動かした。