※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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19歳④【柱邸へ】
柱を訪ねて①


秋も大分深まった頃、斗和は真新しい荷車を引いて自宅へ向かっていた。

 

そろそろ野菜の収穫時期なので、荷車を購入してきたのだ。

以前買った荷車は、鍛錬中に技が当たり破壊してしまった。

 

今年収穫するのはさつまいも、じゃがいも、人参、牛蒡、葱、大根の六種類だ。

畑を管理していた夏世も去り、大した手入れはできなかった。

それでもまず形にはなった。

 

昨年はちょうど柱合会議があり持って行けたが、今のところ柱と顔を合わせる予定がない。

昨年同様に量も多いので、斗和はどうしようか悩む。

 

耀哉には隠に頼んで届けて貰うことにする。

他の柱にも、同じ様に隠に頼めるかだ。

だが忙しいのは知っているので、頼むのは気が引けた。

 

となれば、荷車を引いて柱の屋敷を一軒ずつ周り置いてくるしかない。

しかし斗和が家を知っているのは、杏寿郎と実弥としのぶの蝶屋敷だけだ。

 

「令和。宇髄さん、悲鳴嶼さん、冨岡さん、伊黒さんの屋敷分がるべが?」

 

「……」

 

駄目元で鴉の令和に尋ねるも、やはり何も答えない。

しかし令和は、煉獄家を知っていた。

斗和が、何年も前に煉獄家を探し歩いていた時だ。

見つからず途方に暮れていたら教えたのだが、なぜ知っていたのか。

 

鴉の令和は謎めいている。

 

斗和に支給される前は何をしていたのか。

槇寿郎付きの鴉だった可能性もある。

 

斗和はじーっと見つめていると、ふいっと顔を逸らされた。

いつものことである。

 

やはり、知っている者に聞いてから行こうと思った。

 

 

 

 

 

────────

───────

それから数日後。

斗和は任務後に隠達から聞き回り、柱全員の屋敷が判明した。

 

早速収穫した作物を荷車に乗せ、家を出る。

どうやら行冥の屋敷は相当山の奥にあるようだ。

到底荷車では行けないので、途中からは歩くしかないと言われた。

大変なので一番最後にしようと決める。

佳成が亡くなったことも報告しなければならなかった。

佳成は斗和の継子になる前は、行冥の継子だった。

礼儀として、きちんと報告しなければならない。

 

一日で全て回れはしないが、まずは一番遠い蛇柱邸へ行くことにした。

 

 

 

───────

──────

小芭内は斗和を見て驚いたが、荷車を見れば更に驚き言葉を失った。

 

「こんな所まで荷車を引きわざわざ来るなど、物好きにも程が……」

 

相変わらずネチネチと言ってきた。

それでも、小芭内は申し訳ないとは思っている。

最後は「ありがたく頂戴しよう」と礼を言われたのだった。

 

斗和は思った。

これが甘露寺蜜璃ならば、全然対応が違うのだろうと。

 

 

 

 

◇

次は音柱邸だ。

斗和は天元と同期であるが、特に親しくないので屋敷に行くのは初めてだった。

 

門を叩き声を掛けると、美しく胸の大きな三人の女性が出迎えた。

天元の嫁達だ。

 

(えっと確か雛鶴さん、まきをさん、すみさんだったかな?いやそれは蝶屋敷の娘の名前で…す、すえさん?)

 

斗和は挨拶しながら名前を思い出そうとする。

だが最後の一人がしっくりこないのだ。

まあいいかと思っていると、その中の一人が大声を出した。

 

「あー!芋柱様!」

 

(…いも、ばしら?芋柱!?)

 

斗和が聞き間違いかと呆けていると、前髪が金色をした嫁が発言した嫁を叩いた。

 

「こら須磨!」

 

「あいたっ!」

 

(ん?すま…?すまさん?)

 

斗和が、おや?と首を傾げる。

今確かに"すま"と言ったのを聞いた。

 

「少し黙ってな!すみません、土柱の蓬萊様ですよね?私達は音柱の妻で雛鶴、須磨、まきをと申します」

 

「天元様よりお話しを窺っております。同期だそうですね。昨年はたくさんの野菜をありがとうございました。今年も頂けるなんて嬉しいです。味が濃くてとてもおいしかったです」

 

一人ずつ口を開いてくる三人の嫁だが、聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。

斗和は至極穏やかに笑う。

 

「それはよかったです。改めまして、蓬萊斗和と申します。宇髄様にはお世話になっております。…あの、ところで芋柱と言うのは…?」

「天元様がそう呼んでいたんです!野良着姿で手拭いをした隊士がいて、地味だから芋娘って呼んでるって。柱になったから芋柱だなって」

 

「須磨ー!失礼だよっ!本当にすいません!」

 

まきをが須磨を叩き、「まきをさんが叩いたー!」と喚く須磨。

斗和はここで、"すえ"でなく須磨だと確信する。

 

(すま、須磨さんか。いやそれよりも!やっぱり…!)

 

斗和は予想していた。

芋娘と呼ぶからには、柱になれば芋柱と呼ぶに決まっていると。

半分冗談のつもりだったが、本当にそう呼んでいた。

斗和はむかっ腹が立ったが、ここで怒っても仕方がない。

嫁たちに非はないのだ。

 

(派手柱め!今度会ったら絶対に派手柱って呼んでやる!)

 

斗和はそう決意すると、雛鶴が真剣な眼差しを向けてくる。

 

「十二鬼月を三体も倒していると聞き、尊敬しています。天元様の為に、私達も蓬萊様のように強い女になりたいと思っております」

 

「あ、そんな、私のような者が…お、恐れ入ります」

 

斗和はこそばゆくなり、もじもじと顔を赤くする。

大分怒りが和らぎ、それでは失礼致しますと頭を下げ音柱邸を後にした。

 

 

 

 

斗和は、荷車を引きながら小さくため息が出る。

三人とも大層美しかった。

天元はいつも綺麗な嫁に囲まれているのだ。

それに比べると、斗和は確かに地味で芋娘である。

 

(それにしても、芋柱だったら芋の呼吸になるよね。芋の呼吸…蒸かし芋、焼き芋、大学芋、天ぷら…)

 

芋の呼吸を想像するも、調理法しか浮かばない斗和であった。

 

次は水柱邸だ。

柱稽古では、実弥が義勇の屋敷に来て手合わせをしていた。

斗和はふと疑問に思う。

 

あの二人は、なぜあんなにも折り合いが悪いのか。

 

義勇が言葉足らず過ぎて、という理由が一番かもしれない。

だが、実弥が短気だからというのもある。

杏寿郎にも殴り掛かっていたのを、斗和はこの目で見たからだ。

 

それでもいつか、実弥が義勇に「今から鮭大根食いに行かねェかァ?」と言う日が訪れる。

相当仕方なくだが、義勇は「行かない。鮭大根ならさっき食べてきた」と断るのだ。

 

斗和はその時には柱を退いている予定なので、実際目にすることはない。

 

 

 

 

 

◇

水柱邸に着き、大声で義勇を呼ぶ。

 

「冨岡さーん!蓬萊です!いらっしゃいますかー?」

 

しばらく待つも、返事がない。

不在の可能性もあるので、置いて行くことにした。

斗和は持参した麻袋に、野菜を詰め始める。

 

そして大根九割、他一割という大根だらけの麻袋が完成した。

置いて行こうと思った矢先、門を開け義勇が出てきた。

 

(寝ていたのかな?鍛錬中だったのかな?)

 

「お久しぶりです。また野菜が穫れたのでお持ちしました」

 

そう言い荷車を指差すと、義勇は僅かにその深い藍の瞳を輝かせた。

 

「大根を貰いたい」

 

「はい。そう言われると思ってもう詰めました。これでどうですか?」

 

斗和が麻袋の中身を見せれば、頷き礼を言われる。

これから蝶屋敷に行くんですよと告げると、「そうか」とだけ言われた。

 

斗和は反応が薄いなと思った。

義勇はしのぶのことが気にならないのだろうか。

斗和は勝手ながら、二人はお似合いだと思っている。

知る限り二度、同じ任務に就いている。

だが考えてみれば、あれらは今後の出来事だ。

 

今の時点では同僚以外の気持ちはないのだろう。

斗和はそう思い一人納得する。

 

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