※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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雪舞う物語の始まり

斗和は風柱邸を後にし、行冥の屋敷まで向かう。

 

山奥なので麓まで荷車を引き、野菜を麻袋に詰め背負った。

麻袋はかなり重いが、先ほど食事をしたからか思ったよりきつくはなかった。

 

 

 

 

◇

しばらく行くと、斗和の前に柱稽古で出てきた滝が見えて来た。

その周りには、大きな岩がごろごろとたくさんある。

 

隊士達が滝に打たれ、伊之助が死にかけていた場所だ。

そしてここで善逸が獪岳の鬼化を知った。

同時に育手の自害もだ。

その時の善逸の気持ちは計り知れない。

獪岳は、上弦ノ壱・黒死牟に命乞いをし鬼になった。

 

(黒死牟…佳成…)

 

斗和は、継子・佳成に思いを馳せる。

佳成は絶対に命乞いなどしないはずだと、最後まで戦って死んだのだと。

 

上弦ノ壱は絶対に許せなかった。

最終決戦で対峙する時が必ず来る。

斗和は、自分にどれだけのことができるのかと考えた。

まだ本格的に始まっていない物語に、どれだけ関われるのか不安もよぎる。

 

だが目的は必ず果たすと誓った。

 

 

 

 

 

岩柱邸に着くと、斗和はなぜか後ろから声を掛けられた。

行冥は鍛錬をしていたようだが、どこにいたのか。

 

持参した野菜を渡せば、行冥は涙を流し感謝の言葉を述べた。

 

「女の身でこれを背負い、よくここまで来た」

 

「これも鍛錬の一つですよ」

 

斗和は思わず顔がほころぶ。

鬼殺隊最強の行冥から褒められるのは嬉しかった。

 

中に促され茶を貰うと、本題に入る。

斗和にとって、やはり佳成の死を告げるのは相当につらい。

言葉にすればする程、紛れもない現実なのだと何度も思い知らされる。

先ほど実弥に告げてたくさん泣いたので、幾分か落ち着いて話せたのは幸いだった。

 

 

行冥は、とても残念なことだと涙した。

斗和は、佳成の為にも更に精進して強くなろうと誓う。

 

「ところで、私に稽古をつけては下さらないんですか?」

 

「…蓬萊は女である故、戸惑いがある。今まで私に稽古を申し出る女はいなかった」

 

行冥はゆっくりと諭すように喋る。

 

「それに、不死川とよく手合わせをしていると聞いている。武器から考えても、私でなくやはり不死川が適任だろう」

 

(そうか…悲鳴嶼さんは私相手ではやり難いのか)

 

行冥と斗和は体格差がかなりあり、加減などが難しいと思われる。

気を遣わせて申し訳ないと思い、斗和は諦めることにした。

 

「そうですか、残念ですが仕方ないですね。もし何かいい鍛錬方法があれば教えて下さい。私はもっと力を着けたいのです!」

 

斗和がそう言うと、行冥はいい心掛けだと頷いた。

 

それにしてもと、斗和は引っ掛かる。

なぜ行冥は実弥との手合わせを知っているのか。

斗和は誰にも言ったことがなく、実弥が言うとも思えない。

 

(隠や他の隊士に見られたのかな?)

 

まあいいかと、斗和は深く考えず行冥に頭を下げ山を降りた。

 

 

行く時とは違い、手ぶらなので非常に楽だった。

当然のように走り抜け、あっという間に荷車まで着いた。

着いたとたん、喉の奥がつかえてしまった。

一瞬のことですぐに元通りにはなったが、斗和は以前も何度か同じようになり、少し気になった。

 

 

 

 

それから鬼の出没が頻繁になり、警備区域の見廻りも強化され柱は更に忙しくなった。

まるで物語の始まりの予兆のようで、斗和は心がざわついていた。

 

 

 

──────

─────

月日は流れ冬も終わる頃、半年に一度の柱合会議が開かれた。

 

斗和は例によって義勇の隣、一番端で膝を立て耀哉を待つ。

ちらりと盗み見た義勇の横顔は、相変わらず無表情である。

表情から読み取ろうとは思っていない斗和だが、時系列的にあの任務には就いた後だろうと推測した。

 

義勇は竈門炭治郎に会っている。

斗和はそれを確かめねばならない。

 

「冨岡さん、会議後にお話しがあります」

 

「…大根なら貰い受けるが…」

 

義勇は正面を向いたまま、目線を斗和に向ける。

 

「生憎、大根の話しではないですよ。誰にも聞かれたくないので、終わったら冨岡さんの屋敷に行っていいですか?」

 

「承知した」

 

 

 

 

◇

そして会議後、二人はいち早く本部を後にし水柱邸へ向かう。

 

途中雪がちらついてきた。

田舎ではかなり積もるが、東京は大して積もりもせず寒さも序の口で過ごしやすい。

 

 

 

 

水柱邸に着くと、玄関前で義勇が振り向いた。

 

「冬になってから、雪山での任務はありましたか?」

 

「…幾度かあったが、なぜ聞く?」

 

「実は夢をみたんです。冨岡さんが雪山にいて、誰かと話しをしていました。相手は男女二人…恋人、いや兄妹かな?よく分かりません。驚いたのは、冨岡さんがすごく怒っていたんです。普段からは想像がつかなくて、気になって聞いてしまいました」

 

斗和がそう言うと、義勇の表情が僅かに曇った。

これはもう確実だと、斗和は思った。

 

「変なことを聞いてすみません。だからどうこうってわけではないんです。そうだ!せっかく来たので、私と手合わせして貰えませんか?」

 

その後、怪訝な表情を向けながらも、義勇は手合わせに応じた。

 

義勇は表情に変化がない男なので、淡々と打ち込んでくる。

相当に速く、そして静かな手合わせになっていた。

 

斗和は少し前から利き腕同様にする為に、左腕の力を強化している。

鍛錬も左腕中心で振っていた。

技を放たれればさすがに無理だが、打ち込みだけなら耐えられる自信があった。

 

斗和はそう思っていたが、さすが柱である。

 

「蓬萊…なぜ利き腕でない方で振る?」

 

義勇は利き腕ではないことをすぐ見破った。

 

「…しもやけなんです。強く握るのがちょっと…」

 

斗和が苦しい言い訳をすると、義勇は不審がる。

 

「赤くなっていないように見える」

 

「…………」

 

ついに斗和が何も言えなくなると、義勇は益々不審がり、怪訝な表情で斗和を見ている。

 

斗和は突然「もういいです!」と声を張り上げ、逃げるように水柱邸を後にした。

 

 

帰る道中、別に隠す必要はなかったなと思うのであった。

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