※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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恋柱・甘露寺蜜璃

それから二週間経った頃。

 

「柱合会議!至急向カエッ!」

 

鴉の令和が告げる。

斗和は警備区域で鬼を二体倒し、家に戻った矢先だった。

 

(今すぐ!?)

 

家に帰ってきたばかりで、最低でも風呂には入りたい。

だが遅刻するわけにいかず、急いで顔を洗い手拭いを外し一般隊服に着替え家を出た。

 

まだ前回の会議から半年は経過していない。

考えられるのは、甘露寺蜜璃が恋柱になったということだ。

蜜璃は杏寿郎の元継子であり、蛇柱・伊黒小芭内の想い人である。

今の時点ではまだ会っていないと思われるが、今後接近するのだろう。

 

斗和は、蜜璃とは任務で全く会わなかったので初対面になる。

だが正直、隣に並びたくないのである。

 

(可愛い顔、可愛い声、素晴らしい胸…。髪型も隊服も、何もかも可愛いもんね…片や私は…)

 

斗和はどんどん卑屈になっていく。

同じ女とは思えない程に雲泥の差があるのだ。

斗和は顔に傷まである。

 

以前はそこまで気にならなかった斬り裂かれた傷。

斗和は、このところやけに気になるようになった。

おそらく、あの温泉の任務で化粧をした時からだ。

 

(傷が無ければ、化粧をして着物を着ればあの人は…)

 

 

斗和は雑念を振り払うように走った。

 

 

 

 

──────

─────

本部に着くと、斗和以外まだ誰も来ていなかった。

 

一番最初なんて初めてだなと、手持ち無沙汰になる。

辺りを見回した斗和は、隅で白い玉砂利を積み重ねられるか遊ぶことにした。

 

そこへ一つの影が近付く。

 

斗和が足音に気付き頭を上げると、実弥がいた。

 

ドクンと心臓が跳ねた気がしたが、斗和は何事もなく振る舞う。

 

「不死川さん、お疲れ様です。その節はお世話になりました」

 

「あァ…。前回の会議の後、先立って冨岡といなくなったが何かあったのかァ?」

 

実弥は前回の会議後のことが気になっていた。

斗和は物語が始まったのか確認するべく、義勇に尋ねた。

他の者に聞かれたくなかったので、義勇の屋敷まで行った。

普段会議後は、雑談をしたり耀哉の厚意で茶を飲んでから帰る。

それを耀哉が退出後、二人はすぐにその場から消えたのだ。

残された柱は何事かと思っていた。

宇髄天元が、"あの二人は怪しい"と言ったことで、実弥は気になって仕方がない。

 

だがそんな些細なことで、わざわざ斗和に確認するなどできるはずもない。

聞くに聞けずにいたが、臨時で柱合会議が開かれたことでやっと聞くことができたのだ。

 

実弥は、じっと斗和を見据える。

斗和は、あああれか…と口を開く。

 

「あれは…冨岡さんに用事があったので、屋敷にお邪魔したんです。そのあとせっかくだから、手合わせをして貰いました」

 

義勇には雪山での任務があったかを聞き、ついでに手合わせをしたので嘘ではない。

ただそれだけだ。

 

「…あの…?」

 

斗和は大いに戸惑う。

なぜか実弥は、傷ついた顔に変化したからだ。

 

(どうして…?)

 

「…冨岡と煉獄にはてめェの方から申し出るんだなァ…」

 

「え…?」

 

「よー!お前ら早いな!」

 

その時天元が現れ、実弥はいつもの場所に行ってしまった。

  

斗和は訳が分からず動揺する。

実弥の言った意味が分からないのだ。

義勇と杏寿郎に申し出るとは、手合わせのことだとは分かる。

 

問題はその後だ。

 

実弥はなぜあのような、怒ったような寂しそうな表情になるのか。

斗和は、実弥のあのような顔は初めて見た。

 

どうしていいか分からず呆けていると、義勇から早く並べと言われ、斗和は我に返る。

 

いつの間にか皆集まっていた。

斗和は先程の実弥の態度が気になるも、会議に集中した。

 

すると右端から、奇抜な髪色の女が前に出て挨拶し始める。

 

(あ!やっぱり甘露寺さんだ)

 

蜜璃が柱になったということは、後は最後の一人、時透無一郎を待つだけである。

 

その後はいつも通り任務や警備の報告をし、解散となった。

 

各々が蜜璃に挨拶をする中、輪の中に入れない男がいた。

 

蛇柱・伊黒小芭内である。

小芭内は蜜璃に一目惚れし、以来靴下を贈ったり文通したりと仲良くなる。

当然ながら今はまだ進展がない。

初見でその可憐さに照れて、挨拶できないのだろうと斗和は思っている。

 

だが実は二人はこの場が初対面ではない。

斗和は、今日は一番最初に来たと思っているが、実はそれより先に蜜璃と小芭内は到着している。

蜜璃は耀哉と話しが、小芭内はあまねからある調査を頼まれており、それぞれ屋敷内にいた。

そこで二人はバッタリ会っており、挨拶も交わしているのだ。

 

それを知らない斗和は、親の気持ちで二人を微笑ましく見守る。

 

斗和は蜜璃に憧れを抱いていた。

同じ女で背丈も同じだが、何もかもが違うと思っている。

蜜璃の隊服は縫製係の前田の力作だが、客観的に見るとやはり迫力があった。

 

(あの服、やっぱり私が着たらおかしいよね…。甘露寺さんと胡蝶さんは似合うと思うけど…)

 

すると、蜜璃から小芭内に話し掛けた。

 

「蓬萊、なぜまた隠れている?」

 

そこへ、たまたま斗和の前にいた義勇が振り返る。

 

「いや今回は隠れていませんよ。冨岡さんがちょうど私の前にいるから、そう見えるかもしれませんけど。それにしても甘露寺さんも胡蝶さんも、とても可愛いですよね。私、憧れてしまいます。冨岡さんもそう思うでしょう?」

 

「…俺は女になりたいとは思わない」

 

(は?)

 

義勇の返答に、斗和は思わず怪訝な顔を向ける。

 

そのような意味で聞いたのではないのに、義勇の素頓狂な返答にため息が出た。

そもそも、義勇に聞いたのが間違いだったなと思った。

 

すると、蜜璃が近付いて来た。

 

「あのう、冨岡さんに蓬萊さんですよね…?初めまして、甘露寺蜜璃と言います!炎の呼吸から派生した恋の呼吸を使っているんです。これからよろしくお願いしますね!」

 

豊満な胸が視界に入り、斗和は緊張と驚きで目が輝く。

甘くていい香りがし、これは何の…?と考える。

 

「水柱の冨岡義勇だ」

 

斗和がぼーっとしているうちに簡潔な挨拶をした義勇は、さっさといなくなってしまった。

 

(…ん?)

 

斗和は突如ただならぬ視線を感じる。

その方向を見れば、小芭内が睨んでいたのだ。

こうしてはいられないと、慌てて挨拶をし始める。

 

「初めまして、恋柱様。蓬萊斗和と申します。岩の呼吸から派生した土の呼吸を使っています。どうぞよろしくお願いします」

 

「まあっ!土の呼吸なんて初めて聞いたわぁ…あっ、私の恋の呼吸も初めてですよね?柱に二人も女性がいて、本当に心強いわっ!同じ柱なのだから名前で呼んで下さいね」

 

それから斗和は蜜璃の質問攻めに遭う。

年齢、好きな甘味、好きな料理、趣味など終始蜜璃に圧倒されていた。

しかし、そろそろ切り上げないと小芭内が恐ろしい。

他の皆も帰ってしまったので、斗和も帰ろうとする。

 

「あの甘露寺さん?伊黒さんが何かお話があるのか待っていますよ。では私はこれで失礼しますね」

 

矢継ぎ早に言うと、斗和は小芭内の恨みの籠もった視線を感じつつその場を後にした。

 

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