※この作品はR-18です。

野良着の隊士・改編   作:いとめ

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※前ページの実弥視点


雨の任務─実弥─

俺らしくないとは思っていた。

 

まさか…と。

そんなことで心がざわつくなど、今までの俺ならば到底有り得ないことだった。

 

柱合会議で会った煉獄から、蓬萊と手合わせをしていると告げられた。

自己紹介をした時に申し込まれたらしい。

手合わせは充実したものだったのだろう。

煉獄は至極楽しそうに話す。

 

二人共さつまいもが好物で、蓬萊が芋羊羹を作ってきただとか。

焼いた握り飯と糠漬けを持ってきただとか。

 

煉獄の口から飛び出る言葉に、酷く苛立ちを覚えた。

それは聞きたくないとさえ思う程だ。

 

俺との手合わせは、いつもこっちから強引に告げてやっている。

あいつは自分が嫌いなおはぎを土産に持って来る。

焼いた握り飯も、俺が作れと言い作らせた。

 

俺は蓬萊から手合わせをしようなど、ただの一度も言われたことはない。

おはぎも握り飯も…何だこの差は。

煉獄にはすすんで自分から頼むのか。

好物の甘味なら作るのか。

あの握り飯を土産にするのか…!

 

どうしようもなく苛々したが、時が経てばそんなものはどうでもよくなると思っていた。

 

しかしその後にあった柱合会議で、隣同士並んでいた冨岡と蓬萊が会議後即座にいなくなった。

なぜ同時に?と訝しめば、宇髄が「あいつらは怪しい」と笑うので、気になってしょうがなかった。

 

考えてみれば、蓬萊は初参加の会議で、冨岡を見て顔を赤らめていた。

煉獄が柱になった会議の時も、あいつは奴を見て顔を赤くしていた。

冨岡の野郎は蓬萊が顔を赤らめると俺が怒ると、そう言ったが、的を射ており尚更腹立たしい。

 

こんなことは、以前なら気にも留めないどうでもいいことだった。

蓬萊が顔を赤らめようが、誰と手合わせしようが関係なかった。

 

だが気になって仕方がない。

 

くすぶったままの日々が続いた。

 

その後の柱合会議で、一人早く来ていた蓬萊に聞いた。

なぜ冨岡といなくなったのか。

俺は蓬萊に何と答えて欲しかったのだろう。

 

"急な共同任務が入って打ち合わせをした"

 

そう答えたのなら安堵したはずだ。

だが、そうではなかった。

 

斗和は、用事と手合わせだと答える。

また自分から手合わせを頼むのか。

俺には一度たりともないのに。

腹の中で何かが蠢くような、言い様のない感情が支配する。

今まで生きていて感じたことのない気持ちだった。

 

これが嫉妬だと認めたくなかった。

 

そんなものは鬼を狩ることに不要だ。

虫の居所が悪かっただけだと、無理矢理に言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

 

その後の梅雨時期のことだ。

任務が終わったとたん、即また呼ばれ、東にある山に向かっていた。

 

山に入るあたりで雨が降り出す。

大雨ではないが、ただでさえ暗い山道。

視界も悪くなり、足元も泥濘(ぬかる)んで移動も遅くなる。

小さく舌打ちし目的地を目指していると、突然真横に誰かが現れた。

気配も無く真横に並ばれるなど不覚。

鬼かと思い、刀に手を掛けた瞬間発せられた声に驚く。

 

「不死川さん!お疲れ様です。もしかしてこの先に呼ばれました?」

 

「蓬萊!?まさかお前ェもかァ?」

 

そこにいたのは、まさかの蓬萊斗和だった。

 

「はい。となると厄介な鬼のようですね。私、先に行きますね」

 

早口でそう告げると、目を見張る速さで先に行ってしまう。

呆気にとられたのは言うまでもない。

この足元の悪さで、あんなにも速く山道を走る奴は見たことがない。

蓬萊は以前、本部から走った時は遅かったはずだ。

なぜ道も視界も遥かに悪い山道を、あんなに速く走れる?

不思議な奴だ。

 

目的地に着けば鬼がいて、真後ろから頸を斬り落とした。

鬼は分身し二体出たようだが、なんてことはない。

こんなのに柱を二人呼んだのは、伝令に手違いがあったとしか考えられない。

 

蓬萊から言われ、血鬼術で地面に埋まっていた隊士四人を手分けして救出する。

 

すると一人の隊士のところで、蓬萊が何やら騒いでいる。

引き上げられないのかと思ったが、力のあるこいつに限ってそれはないだろう。

 

何だ?と近付けば、どうやら知り合いのようだ。

足を折ったか挫いたか立てずにいるそいつを、蝶屋敷まで背負うと肩に手を回しているではないか。

体は密着しているし、顔も近い。

いいから大丈夫と拒否するそいつに対し、遠慮するなだとか泥塗れは皆同じだから気にするなと言っている。

 

そいつが気にしてんのは泥じゃねェだろォ…

 

隠が来るのに、男を背負って山を下りようとする女。

知り合いだからか?

それともいつもこうなのか?

またもや言い知れぬ感情が込み上げ、それ以上見ていたくなくてさっさと山を下りた。

 

下らねェ、らしくねェ。

 

盛大な舌打ちが出た。

こんなどうでもいいことに心をかき乱されるなど、頭が沸いているのではないか。

 

鬼を殲滅する以外のことは不要だ。

 

 

しっかりしろ!

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